シャンパンをもっと気軽に楽しく
「紹介された物件の小ささを見て、初めは串カツやどて煮の立ち呑み屋を考えました。しかし、それは”商売“としては正解かもしれないけど、“自分がお客だったら行きたい店”にはならなかった。それで原点に立ち返って、小さいけど自分自身が大好きなシャンパンをとことん安く飲める店を作ろう、と考え直したのが『ワイン食堂カドマル』です」
たしかにシャンパンは他の酒に比べて仕入れ値が高い。カドマルでもシャンパンだけの原価率をみると60%を軽く超える。ボトル1本につき1,000~1,500円、グラス1杯では100円程度の利益しか出ない。
しかもシャンパンは、栓を抜いてすぐに売り切らなければならず、ロスも多い。リスクの高さを考えれば誰もが踏み込める領域ではないのだ。それでもオープンに踏み切ったのは、秋山さんなりの成功の筋道が見えていたからだ。
「高級なイメージばかりが先行しているシャンパンを、もっと身近な存在にできないかと思ったのです。もっと価格を抑えて美味しいシャンパンを提供できれば、皆にも支持されるはずだと考えました。ただ、そのためには一定以上の杯数を提供する必要があったので、いっそそれごと店のコンセプトにしようと思いました」
そこで秋山さんは、「日本一シャンパンが安い店」を看板に掲げた。分かりやすい例としては、カドマルのシャンパンは一般小売価格を下回る価格で提供されている。メジャーなブーブクリコは小売価格6,500円に対して6,000円。グラスシャンパンも、約110mlで1杯800円という破格の設定だ。
「お客様の立場になって考えると、1回の食事代が2,000~3,000円程度であることが重要だと思います。その金額の中でどれだけおいしいものを食べたり飲んだりできて、優雅な気持ちになれるか。そこに挑戦したのです」
今でもシャンパンの価格を抑える交渉は毎月のように行っているそうだ。ただし一度に仕入れる量は、本数単位ではなくケースでまとめ買い。この方が配達も一度に済むので酒販店にもメリットがあるという。カドマルに関わる企業は共存共栄の関係で、共に繁盛してほしいというのが秋山さんの考えだ。
極小物件ならではのフードメニュー
今ではシャンパンの集客効果もあり、わずか8席の店舗に1日平均40人のお客が訪れるという。その場合、食事の提供はどうなっているのだろうか。