すかいらーくが挑むAI推進と、顧客体験価値向上のための実証実験

セミナー・イベントレポート2026.08.14

すかいらーくが挑むAI推進と、顧客体験価値向上のための実証実験

2026.08.14

すかいらーくが挑むAI推進と、顧客体験価値向上のための実証実験

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外食大手のすかいらーくホールディングスはAI導入による業務改革を進めている。人手不足や原材料、物流コストの上昇に対し、同社はテーブル注文端末や配膳ロボット、生成AIの導入などでデジタル化を推進してきた。この効率化で生じた余力を、人にしか生み出せない接客価値へと戻す取り組みが始まっている。

目次

外食産業の課題とAI推進の背景

ガストやバーミヤンなど20超のブランド・約3100店舗を国内外で運営する株式会社すかいらーくホールディングスは、年間客数約3.5億人、クルー約10万人を抱える。同社は外食産業に共通の人手不足、原材料・物流コスト上昇といった課題に直面する中、AI推進企業への進化を進めている。テーマは、AIを現場に安全・継続的に定着させることだ。規模が大きいほど定着が難しくなるため、AIを組織に組み込む取り組みを行っている。

「過去の実績と比較できない」から始まったデータ民主化

同社のAI活用は、段階的なデジタライゼーションに基づいている。5~6年前までは本部から店舗へ月次実績を連絡する際、全店分の実績リストを一括でPDF配信していた。ガストであれば約1300店である。そのリストから各営業部長が管轄するエリアを抽出して店舗に送り、店舗側では目視で自店の行を探してマーカーを引いて控室に貼る作業があった。

この運用では過去データと今月の比較ができないという課題があった。例えば、食材ロスの削減に取り組んだとしても、前月や前々月より改善できたかが追えなかった。この解消に向け、同社は2021年にグループウェアをクラウド化して、必要な人が必要なデータにアクセスできるデータの民主化を進行。2024年以降は生成AIによる顧客の声の分析や返信文案の作成が可能になり、業務改善が加速した。

個人PCでのAI試行から共通基盤へ

すかいらーくの本部業務では、システム間のデータを連携するBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入していても、データをExcel加工してPowerPointにグラフを貼り付ける手作業が主流だった。大量のデータ処理をスピーディに実施できないため、一部社員が個人PCでAI IDE(プログラムの作成・編集・デバッグなどを行う環境に、AIが組み込まれた開発ツール)を試行した結果、従来1週間を要したデータ分析業務が1日で完了する効果を得た。

また、従業員が安全に使うためAIコーディングエージェントの利用に関しては利用者の申請と承認、ログの保存、ファイル削除などのOS操作や完全自律の禁止、学習利用のオプトアウトや機密情報の除外、人によるレビューとログ監視などのルールを定めた。

しかし、使いこなせる特定従業員への業務集中と、個人とAIで作業が完結することで知見の分断が進む課題も生じた。このため、同社は分析特化の共通基盤アプリの構築を進めている。基盤上で作成したデータや知見を組織全体で共有・再利用できる設計にすることで、個人への業務依存解消と組織での知見蓄積を目指す。

店舗での実証実験~引き算のDXから足し算のDXへ

すかいらーくは外食大手の中でも早期にテーブルオーダー、配膳ロボット、テーブル決済、セルフレジ、掃除ロボットなどのサービスを現場へ導入してきた。これらは待ち時間短縮、店舗運営の省力化、オペレーション安定化に貢献している。

一方で、効率化を追求する引き算のDXにより、顧客とクルーが言葉を交わす機会が減少したのではという懸念が出た。そこで同社は、接客価値を生み出す足し算のDXに舵を切った。

実証実験の1つがガスト秋葉原駅前店で試験導入した会話型AIロボット「Co店長」である。卓上のタブレット端末で顧客がAIと日常会話を交わし、AIのCo店長がメニューを提案する。会話ログは蓄積・分析され店舗改善に役立つ。

もう1つが、入退店時の挨拶「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」の略から命名された、「いらあり」である。映像で入退店を検知して場面を切り出し、クルーの音声をマルチモーダルAIで分析して挨拶の有無や状態を測定する。これは良い挨拶を可視化することでクルーを評価する制度として活用されている。

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