それに、よく考えてみたら私がそれまでに飲み歩いていたお店って、通りを歩いてふらっと入るわけではなくて、人に教えてもらったり連れて行ってもらったりしていました。ならば1階である必要はないと。それで2階の物件で名前もそのままの「201号室」にしようと決めてオープンしました。
あえて表に「看板」を出さない理由
【Q】最初のお店(201号室)はどんなコンセプトでしたか?
飲食の経験がないので、とにかく「自分が行きたい店」をつくればいいだろうと。いまでは考えられませんが、わざとメニューに価格を載せなかったり、時価にしてみたり、時には屋台をそのまま店舗の中に入れてみたりと、色々な事をやっていました。驚きやサプライズは、あればあるほどいいと思っていました。
ただ、お金をいただいている以上、料理の美味しさは絶対条件なので、段々とメインの料理からお店のコンセプトを考えるように変化していきましたね。
【Q】今でもどのお店も、表に看板を出していませんよね。
そうですね。口コミでご来店される方が多いので看板の必要性を感じないのと、リピートしてくださる方にとっては、表に看板がない方が自分だけが知っている隠れ家みたいワクワクするじゃないですか。そうすると今度は他の人を連れてきたくなるみたいです。それに私は『お客様がお店をアピールしてくれる最高のディスプレイ』であると思っています。お客様同士も好きな雰囲気が近い方が集まっているほうが居心地もいいですからね。そういう意味でも「看板なし」は良い効果を生んでいます。
最新の流行は追わなくていい、探し続ける「半歩先の食」とは
【Q】店舗展開については、どのようにお考えですか?
これまでジンギスカンや中国少数民族のお店、発酵をテーマとしたお店など様々な業態を展開してきましたが、今のキーワードは「半歩先の食探し」です。
これは意外と難しいテーマで、最新の流行を追いかけてしまうと、突き抜けたり尖ったりすることができません。反対に1歩、2歩先取りしまうと趣味の世界みたいになってしまいダメなんです。そう考えると半歩先ぐらいがちょうどいい。
例えば、ジンギスカンはブームになる半年ぐらい前から始めました。そういう新しいモノは、最初の3、4ヶ月は赤字が続きます、でもちゃんとその食材が流行り出した頃には、うちのお店が最先端になるので、そこで取り返しています。