和牛で世界一おいしい熟成肉を作る
今や予約の取りにくい店として話題を呼んでいる「听」だが、その立ち位置は一朝一夕に確立されたわけではない。
「2009年に黒毛和牛のステーキハウスを開いたんですが、鳴かず飛ばずの状態で細々とやっていました。そんな状態が5年ほど続いてもがいていたところ、熟成肉についてよく耳にするようになったんです。そして、熟成肉という自分にとっては未知の食べ物を初めて口にしたときに、『お肉ってこんなに美味しいのか』と衝撃を受けました」
その後、本場アメリカの専門店を訪ね、熟成によって柔らかさも旨みも格段に増した肉を食べ歩く中で、「アメリカの肉でこんなに美味しいのなら、和牛でやればもっと美味しいんじゃないか」という思いが頭をよぎるようになる。
「和牛といえば霜降りのイメージが強いですが、脂が重くてそれほどたくさん食べられないですし、最近では健康への影響を気にする方もいらっしゃいます。とはいえ、日本人はすでに口が霜降りに慣れてしまっているので、外国産の硬い赤身を普通に食べても美味しいとは感じないでしょう。それなら、和牛を熟成して今まで食べたことのないようなお肉にすれば流行るのではないかと」
高級霜降り和牛と安価な外国産牛の間をいく、これまでにない美味しさの熟成肉。それを、できるだけ低価格で提供することで、一人でも多くの人に熟成肉の魅力を知ってもらいたい。「听」は、そんな徳山社長の熱い思いを具現化していく店となる。