本場のスタイルにこだわり、グループ客を取り込む
実は「ポンド」というお店の名前にも、平松社長の戦略が表れている。「听」では、お肉を大人数でシェアして食べるスタイルを推奨しており、注文時は1ポンド(450g)や1/2ポンドといった好みのポンド数で注文してもらう。
「アメリカで衝撃を受けたのは、熟成肉の味だけではありません。日本ではステーキも焼肉も1人前何グラムという考え方がほとんどですが、アメリカでは大きな塊のお肉がドーンと出てきて、皆で切り分けてシェアするんです。しかも、実際に食べてみると、塊で焼いた方が格段に美味しかった」
また、一頭買いで枝肉ごと熟成させているため、多彩な部位を揃えていることも、他店にはない魅力といえるだろう。
「常時14種類ほどある部位の中から、『前回はこの3種類だったから、今回はこっちの3種類』というふうに、部位ごとに異なる味を楽しんでいただけているようです」
部位によって差はあるが、ポンド数が大きいほど割安の価格設定にしているため、シェアする人数が多いほど安くつき、しかも食べられる種類が増えて楽しみの幅も広がるという仕掛けだ。実際、「听」では8人などの大人数での来店が多く、肉の消費量は男性なら平均で一人1ポンド以上、女性でも300~350gを食べている計算になるという。
「大人数でご来店いただく方が、お店にとって効率がいいということもありますが、それよりも一番美味しい食べ方で楽しんでいただけていることが純粋に嬉しいですね」
目指すは全国展開。和牛の熟成肉を日本の文化に
また、熟成肉が焼きあがるまでの待ち時間を考慮して、サイドメニューの構成にも工夫が凝らされている。熟成肉のステーキは強火で表面を焼いて旨みを閉じ込めてからじっくりと火を入れるので、調理に30~40分程度の時間を要するのだ。