よさこい節の大合唱という接客

「土佐の高知のはりまや橋で～♪」

お客が食事をしている最中に、突然ホールの店員の一人が高知県の民謡『よさこい節』を歌い出すことがある。するとどこからともなく手拍子が加わり、徐々に別の店員、常連客、高知県出身のお客へと歌声が連鎖していく。行き着くところは、「飲めや歌えや」の大合唱だ。

「スタッフには、20名程度が入る個室でも一人で歌ってもらうようにしています。歌を取り入れた当初は照れもあってなかなか定着しない時期もありましたが、今ではどちらかというと皆が歌いたがっていますよ」

しかし、いったい誰がいつ、歌い出すのだろうか。

「『○時○分にA君が歌う』と決めてしまうと押し付けになります。お客様はその時間帯に料理を食べたいと思っているのかもしれないし、仲間と楽しくおしゃべりしたいのかもしれない。だから、マニュアルはありません。歌い出すタイミングは店長が指示することもあれば、店員個人が自分で判断することもあります。これは現場感覚ですが、ある時、ホールが〝フッ〟と落ち着く瞬間があるんですね。そこで〝ポン〟と歌い出せるとホール全体が盛り上がるんです。歌もお客様に楽しんでいただくための〝接客〟のひとつなんですよ。」

わらやき屋の真骨頂ともいえる〝お客を楽しませよう〟とする店づくり。それは、藁焼きを核として、食材、調理、店舗設計、接客と、隅々まで行き渡っていた。今後も、多くの人に愛され、「また行こう」と選ばれる店であり続けるのだろう。