食品の賞味期限・食物アレルギー表示
原材料や、食物アレルギーなどの表示を義務付ける食品表示基準の対象となる箇所は、食品の容器包装だ。食品を購入の際には、パッケージの食品表示を参考にする人もいるだろう。しかし近年では、コロナ禍でネット通販サイトで購入する消費者が増加したこともあり、消費者庁は、ネット通販で販売する際にも食品表示基準で定められている表示事項を可能な限り掲載することをガイドラインで示している。
食品表示の主な対象は、食品を取り扱うネット通販サイトの事業者で、ネットモール等出品者、ネットスーパー運営者、メーカー直販サイト運営者、宅配事業者、お取り寄せ品販売事業者などである。
ネット通販の際の食品表示基準では食品に含まれる成分のほか、賞味・消費期限、原材料の原産地なども記載することが推奨されている。項目と表記の仕方は下記の通りである。
表1:ネット通販における期限情報の掲載方法例
項目 | 表記方法 |
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期限情報 容器包装上に記載している表示事項を可能な限り、ネット通販サイト上に記載すること。 ただし、消費者が購入する時点と事業者が発送する時期には、時間差があることから、賞味期限や消費期限に代えて、可能な限りの期限残を掲載することが望ましい。 | ①具体的な年月日表示(消費・賞味期限) 「賞味期限:●年●月●日」 「消費期限:●年●月●日」 ②期限残表示 「賞味期限:解凍せずに冷凍保存で●年●月●日まで」 「出荷日から●日」 「出荷の時点から起算して●日前後」 「発送日より約●日」 ③期間表示 「製造日から●日」 ④サイト全体方針掲載 例:「本サイトでは、当社が定めた日数以上の期限残の商品に限り、出荷しています」 |
食物アレルギー情報 アレルギー情報を記載して、消費者の健康被害を防ぐこと。 | 目立つ文字で記載/独立したアレルゲン事項欄を作成 アレルギー食品をイラスト表示または文字自体をロゴ化するなどして、食品に何が含まれているのか一目で分かる工夫を |
原材料関連情報 季節などにより使用する材料が異なる場合は、複数併記すること。 | 生鮮食品の原産地情報 食品表示基準に準じて情報掲載 加工食品の原料原産地名も分かる範囲で記載 |
保存方法 | 「冷凍」「冷蔵」「常温」をマーク・イラストで掲載 具体的な保存方法も可能な限り掲載 |
栄養成分表示 | 食品表示基準に準じて、消費者に分かりやすく掲載 |
その他 | 問い合わせ対応の強化を図り、食品に含まれる原材料などを消費者に正確に伝える |
参考:消費者庁食品表示企画課『インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブック』(2022年6月)
消費者が求める食品表示情報を一目で分かるように可視化する
インターネット通販のサイトに記載が推奨されている情報の中でも、特に優先順位度が高い「原材料の表記」「食物アレルギー情報」「栄養成分の表示」について、どのような表示が適切か取り上げる。
食品の原材料に関する表記
原材料情報の中には、その食品に含まれる全ての原材料のほかに、添加物、アレルゲン、遺伝子組換え情報などを各項目別に表記することで消費者が情報を把握しやすくなる。
また、アレルゲンを含む原材料の名称を太字にしたり、フォントを変更したりして目立たせることも消費者の安全を守る上で有効な手段である。
<例:各事項欄を分けて記載する方法>
原材料名 (特定原材料7品目と特定原材料に準ずる21品目) | 小麦粉、大豆、食塩、砂糖、乳糖、食用油脂、チキンパウダー、香辛料、酵母エキス、でん粉、いちごパウダー(一部に乳成分・小麦・大豆・鶏肉・豚肉を含む) |
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アレルゲン (特定原材料7品目と特定原材料に準ずる21品目) | 乳成分・小麦・大豆・鶏肉・豚肉 |
原料原産地名 | 国内製造(小麦粉) |
保存方法 | 10℃以下で保存してください。 |
寸法 | 約20.5cm×約10cm×約2.0cm |
消費期限 | 出荷の時点から起算して●日前後 |
製造者名 | ●●株式会社 東京都新宿区~ |
食品の食物アレルギー情報
食物アレルギー情報は、食品表示基準に基づき特定原材料7品目を商品の容器包装に掲載することが原則とされている。消費者の安全に直結する情報であるため、ネット通販サイトではアレルギー表示だけを抜き出して掲載する方法もある。
<例:図を使った表記の例>
〇 小麦 | そば | 卵 | 〇 乳製品 | 〇 落花生 | えび | かに |
<例:フリー素材を使った表記の例>
無料でダウンロードできるイラストのサイトを活用して、ピクトグラムとして一目でアレルギー食品が含まれているかどうか表示することもできる。
食品の栄養成分に関する表示
食品表示基準では、容器包装に栄養成分や熱量の表示を義務付けていることから、ネット通販サイトにも同様の情報を掲載することが望ましい。『1食分(●g)当たり、1袋当たり』などと商品に合わせて栄養成分の量を記載すると消費者は具体的なイメージがしやすくなるだろう。
<例:栄養成分表示(1袋当たり)>
熱量 | ●kcal |
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たんぱく質 | ●g |
脂質 | ●g |
炭水化物 | ●g |
食塩相当量 | ●g |
カルシウム | ●mg |
食品の賞味期限・消費期限もできるだけ記載しよう
食品表示情報の中でも特にネット通販サイトに記載するのが困難なのは、賞味・消費期限情報である。発注から配送までに時間差があることから、ネット通販サイト上に具体的な消費・賞味期限を記載することが難しいのだ。
しかし、同庁のインターネット経由で食品を購入したことがある3,000人を対象にした食品表示に関するアンケート調査によると、消費者が最も必要性を感じている事項は、期限情報の記載である。
消費者からの問い合わせでは「サイト上には『賞味期限:365日』と書いてあるが、届いてみたら期限残が6か月しかなかった」「配達された商品の賞味期限の残りが予想よりも短かった」などという意見が寄せられており、購入した食品が想定よりも短い期限だったということに不満を持っていることが伺える。
手元に来た商品の残り期限を知りたいという消費者の希望に応えることも重要だ。そこで、可能な限り「表1-②期限残表示」のような形式で情報提供を行うことが望ましい。
食品の情報を適切に表示してネット通販でリピーターを獲得
食の安全性を高めるためのガイドラインが公表されたが、従来通りの表記でも違法ではない。しかし、食品表示を掲載することは、消費者の食の安全を確保するだけでなく、消費者からの評価や信頼度の向上につながるともいえる。
商品やその店の評判をチェックして食品を購入する人も多い。商品がSNSなどで拡散されれば、売り上げに直結したり、新規顧客やリピーターを獲得にもつなげたりすることができる。
できるだけ食品表示基準に準じて、正しく分かりやすい情報を提供し、消費者が食品を安全に購入できるよう配慮しよう。
ネット通販サイトでは、食品表示情報全てを掲載することが難しい場合もある。問合せ先を掲載し、消費者からの問合せに適切に回答できるような体制も整備していくのもポイントだ。
参考:消費者庁「インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブック案等に関する意見募集の結果の公示について」
※最新の情報は食品表示法等(法令及び一元化情報)(消費者庁)をご覧ください。