3カ国以上の場合は「大括り表示」
一定の条件を満たせば、3カ国以上の産地表示を「輸入」とひと括りにすることもできる。条件は以下の通りだ。
3カ国以上の産地を使用していれば全てのケースで「輸入」と括ることができるわけではなく、使用する産地の重量割合が変動したり、そもそも産地が切り替わるといった場合に認められるものなので注意が必要だ。
表示例は以下の通り。3カ国以上の外国産と国産を使用する場合には、輸入と国産で重量割合の高いものから順に豚肉(輸入、国産)などと表示する。なお、3カ国以上の外国の産地を使用し、大括り表示が認められる条件下で「輸入」とする大括り表示を選択するか、原産国名を「又は」で繋いで表示する「又は表示」のどちらにするのかといった判断は事業者が自由に決められる。
よくある質問
【Q】「大括り表示は、輸入以外の表示はできないのですか?」
【A】「『輸入』という表示の他に、『外国産』や『外国』などといった表示も可能です。また輸入よりも小さな区分である『EU産』や『南米産』などの表示も、大括り表示として認められています。
もちろん輸入に変えて表示するものですので、『EU産』や『南米産』と表示するのであれば、『輸入』で括れる条件と同様、EU内や南米内でそれぞれ3ヵ国以上使用し、産地の切り替え等があり、国別重量順表示が難しいといった場合に限ります」
「又は表示」と「大括り表示」を併用できるケースも
輸入品と国産品を使用する場合には、輸入品と国産品の間で重量割合の高いものから順に表示する必要がある。
しかし以下のグラフで示すように、輸入品と国産品の間でも使用割合の変動がある場合には、使用が見込まれる重量割合が高い順に「又は」で繋いで表示する方法も認められている。
「表示例では原材料に使用した豚肉が、令和2年の実績で輸入品の方が国産品よりも多かったという意味になります。『又は表示』ですので、現在使用されている豚肉の産地は表示の順番の通り、外国産、国産の順番。国産、外国産の順番、国産のみ、外国産のみの4パターンの産地が現在使用されている豚肉として考えられます」
「又は表示」と「大括り表示」をする場合、使用実績はいつのものを使うのか?
「又は表示」と「大括り表示」は、過去の使用実績や今後の使用計画に基づき表示できるものだ。過去の使用実績とは図の通り「製造年からさかのぼって3年以内の中で1年以上の実績」に限られる。実績の取り方は、1年以上であれば事業者が自由に期間を区切ることができる。
「又は表示」については、過去の使用実績等の順番であるということを消費者が認識できるよう、原料原産地表示に近接した箇所にその注意書きをする必要がある。赤い文字でいくつか書き方の例を示しておく。
「事業者の方は包材の切り替えタイミングを気にされていると思いますが、たとえば過去の実績が何年も『A又はB』で、これからも『A又はB』であるという見込みの場合には、注意書きの工夫によっては包材を毎年変更することなく、長期間使用することも可能になると考えています」
使用実績の計上方法
産地別使用実績の計上単位は、「工場ごとの製品ごと」が基本だ。これ以外に包材の共有化を図って複数の工場で製造している場合は、共通で包材を使用している製品単位、また製品単位で見て原料の仕入れや処理工程が同じである場合や原料タンクが同じ場合など、複数の製品の原料の管理を共通化している場合、原料の管理を共通化している製品単位で計上することが可能になる。
「このため、たとえば今ある既存の商品のフレーバー違いなどであっても、これまでの商品や類似商品などと原材料の管理を共通化している場合は、類似商品の原材料の過去の使用実績で、新商品の原料原産地表示を行うことが可能です」
「又は表示」と「大括り表示」をする場合、「使用計画」はいつのものを使うのか?
全くの新製品や原材料の調達先の変更が確実な場合などは、過去の使用実績が利用できない。このようなケースでは、今後の産地別使用計画に基づく表示をすることになる。
使用計画は、当該計画に基づく製造の開始から1年以内の予定に限られる。使用計画に基づいて表示した新商品であっても、使用実績ができ次第、計画による表示から実績に基づく表示に移行することが望ましい。
「ただし、実績を集計する時間や、包材を用意する準備期間も必要であるということから、2年目の商品の表示を1年目の実績に基づく表示にすぐ移行するのが難しいこともあるでしょう。
2年目も『又は表示』のトレンドが変わらない場合、たとえば表示が『A又はB』であって、2年目も『A又はB』である場合には使用計画を再度立てていただき、赤い文字の表示例の1番下にあるような注意書きの工夫をすることによって、包材を1年で切り替えることなく使用できます。
しかし実績の取りまとめが終わって準備ができ次第、計画ではなく実績に基づく表示に変更していただきたいと思います」
保管すべき根拠資料は?
「又は表示」と「大括り表示」をする場合、保管しておくべき資料は次のようなものだ。
「1」にある通り、表示する時点を含む1年間の期間がわかる資料、一定期間における原産地ごとの重量順位の変動や産地の切り替えがあることを示す資料、使用実績をどのような単位で計上したのかを示す資料、注意書きが指し示す期間中の表示対象の原材料の原産地ごとの使用割合の順を示す資料。これらを保管しておく必要がある。
具体的な仕様の例を次の「2」に記載する。
ここで例示されている送り状や納品書などを保管しておく必要があるが、これらをただ保管しておけばそれでいいということではない。金杉氏によれば「4に記載されている通り、過去の使用実績等と表示をする時点を含む1年間、これが明確であって根拠資料として合理的な内容のものを、製造流通の実情に応じて保管しておく必要があります。
また国や都道府県などの監視の際には、実際の原材料の使用状況について表示内容と違いがないかを確認することとなりますので、製品製造時の使用実績がわかる資料も保管する必要があります」
経過措置期間は「2022年3月末」まで
新たな原料原産地表示制度への切り替えのためには、経過措置期間が設けられている。令和4年(2022年)の3月末だ。この期間までに製造した一般用加工食品や、販売される業務用生鮮食品および業務用加工食品については、改正前の規定によった表示も行うことができる。
まとめ:新たな加工食品の原料原産地表示制度のポイント
ここまで解説してきた、新しい「食品表示基準」のポイントをおさらいしよう。
・原料原産地表示を行う必要がある加工食品は、国内で製造した全ての加工食品
・原料原産地表示を行う必要がある原材料は、製品に1番多く使用されている原材料(重量割合上位1位の原材料)
・対象原材料が生鮮食品の場合は、その産地を「~~産」と表示する
・対象原材料が加工食品の場合は、製造地を「~~製造」と表示する
・原産地表示は原則として、国別に重量の割合の高いものから順に全ての原産国を表示する
・産地の切り替えなどのたびに包材の変更が生じ、国別重量順表示が困難であると見込まれる場合は、一定の条件を満たせば「又は」で国名を繋ぐ「又は表示」「輸入」とくる大括り表示、又はと輸入を併用した「大括り表示+又は表示」も認められる
・「又は表示」や「大括り表示」を行う場合は、過去の産地別使用実績などを取りまとめ、根拠資料を保管する必要がある
新たな加工食品の原料原産地表示制度に関する情報は、消費者庁のWebページからダウンロードすることができる。
ページ内にある『新たな原料原産地表示制度に関するQ&A』や各種パンフレットなども参考にしながら、計画的な対応を進めてほしい。
「産地情報の管理」がますます重要に
今回の法改正で、多くの製品を取り扱う事業者にとっては「産地情報の管理」がますます重要になるだろう。具体的には次の2つのステップが必要になる。まずは「情報の元となる原料の規格書について、しっかり収集と管理をすること」。そして「集めた情報をもとにしっかりと製品の情報を管理すること」である。
STEP1 原材料の原料原産地情報の収集管理が重要
STEP2 収集した情報を元に製品単位で情報を管理する
中でも製品に占める重量割合の高い原材料が表示の対象となっていることから、「製品単位での情報管理」が非常に重要になってくる。そのためには規格書の管理が大切だ。
しかし「原材料の情報は収集しているものの、フォルダにたくさんのExcelファイルが入っていて探すのに時間がかかる」とか、「お客様ごとに書式がバラバラで提出のたびに対応するのが大変」などの悩みを抱えている事業者は多いだろう。
これらの悩みを解決する『BtoBプラットフォーム規格書』というサービスもあるので、活用するのもひとつの手法だ。産地情報の管理はますます煩雑になっている。システム化で効率的に管理し、業務負荷の軽減と生産性の向上を同時に叶えたい。
出典元:
・消費者庁
・新たな原料原産地表示制度に関するQ&A
※最新の情報は新たな加工食品の原料原産地表示制度に関する情報(消費者庁)をご覧ください。
独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)
所在地:〒330-9731 埼玉県さいたま市中央区新都心2-1さいたま新都心合同庁舎検査棟
主な業務:専門技術的知見を活かした、肥料、農薬、飼料、ペットフード等に関する安全性の検査。食品の表示等に関する検査等の効率的・効果的な推進、食品や農業資材に関する情報の提供。
公式サイト:http://www.famic.go.jp/