食品の自主回収が義務化された背景
2018年6月の食品衛生法の改正により、企業が自主回収した場合の各自治体への届け出が義務化された。3年の経過措置期間を経て、2021年6月から完全施行されている。もともと食品のリコール(自主回収)には、食品表示法や食品衛生法などの関連法令に基づき行政から回収命令が下される場合と、製造事業者が自主的に行う自主回収の2種類があった。法改正前は自治体によって自主回収の報告義務が異なり、報告制度を定めている自治体は全体の約8割にとどまっていた。報告義務がないことで、消費者の健康に悪影響を及ぼしかねない食品事故についての全容が把握できないと問題視されていた。
これを受けて、事業者によるリコール情報を行政が把握し、正確な監視指導や消費者への情報提供、そして食品による健康被害の発生を防止するため、事業者がリコールを行う場合の行政への届け出が義務づけられた。現在は自主回収報告がなされた食品等の情報を厚生労働省のHP『公開回収事案検索』にて確認できる。
回収理由の半分以上は不正表示
2021年6月に食品表示法が改正された前後で、食品リコールの原因に変化はあっただろうか。公表された食品事故情報をもとに、回収対象となった食品類の回収理由を以下のグラフにまとめた。
2021年6月~12月に発表された食品事故は583件だった。回収理由の割合を見てみると、全体の6割以上が不正表示(アレルギー不正表示・賞味期限不正表示など)であることが分かる。「不正表示」は回収理由として最も多く、食品リコールの届け出が義務化されてない2017年から全体の過半数を占める傾向が続いている。
食品分類ごとの回収理由
食品分類ごとに自主回収件数をみると、最も多かったのは調理食品で、全体の38%ほどとなっている。次に多かったのが菓子類の22%で、この2つで全体の6割を占めた。分類ごとの食品リコール原因を、次のグラフから示していこう。