久米島コンシェルジュ
食物アレルギーの人が久米島旅行を検討する際は、最初に「久米島コンシェルジュ」にコンタクトをとります。コンシェルジュは、旅行の事前相談をはじめ、対応内容の提案、旅行費用の見積もり、さらにはホテル・医療機関・野外活動事業者への情報提供及び情報連携をワンストップで行います。アレルギー対応に関する希望や質問、各事業者からの返答はコンシェルジュを通して行います。
通常、食物アレルギーを持つ方が旅行をする場合、ホテル・観光施設・利用予定の飲食店や、その飲食店が原材料として使用している加工食品のメーカーなどそれぞれに個人で問い合わせをする必要があります。また、問い合わせた担当者に食物アレルギーの知識がない場合、たらい回しにされ、とても労力がかかるという話をよく聞きます。しかし、久米島はコンシェルジュによるワンストップサービスのため、利用者の負担は軽くなります。
島内の事業者にとっても、分かりやすい情報がコンシェルジュから入ってくることで負担が軽減されます。各種フォームが整備されているため、口頭でのやりとりとは異なり、旅行者ごとに情報の種類や量が大きく変わることもありません。そのため、情報の質を保ったまま、各事業者に伝えることが可能です。
利用者は、直接調理人などと話をするのではなく、まずは食物アレルギーに詳しいコンシェルジュに話を聞いてもらい、その後、コンシェルジュが対応策等をアレンジして、各事業者に伝えるという流れになっています。旅行前にコンシェルジュがきめ細やかに対応することで、利用者の旅の不安は最小限に抑えられます。食品メーカーや外食産業でこのような専門職を置くことは難しいかもしれませんが、「情報を集約して、たらい回しにしない」「フォームを用意し、情報の質を保つ」といった部分は真似できるのではないでしょうか。
食物アレルギー対応食
食物アレルギー対応食と聞くと、厳しくルールが決められていて、思うように調理ができないのでは、と想像してしまいますが、実際のメニューを見せていただくと、その品揃えの豊富さと発想の自由さに驚かされます。守るべき基本的な原則は厳守し、それ以外は自由にすることで、各ホテルの個性が発揮された素敵なメニューが出来上がっています。アレルギー対応食は、3ホテルの全てで、朝食・昼食・夕食を取り揃えています。
10品目を除去
3ホテルの全てのアレルギー対応食(定食形式)は、卵・乳・小麦・そば・落花生・大豆・ゴマ・ナッツ類・エビ・カニの10品目を、2次原材料含めて一括除去しています。
メニュー開発
「使ってはいけない食材」「してはいけないこと」だけしっかりと決め、あとは各ホテルのシェフに任せて自由に作ってもらいます。ルールでがんじがらめにしてしまうと、メニューから楽しさが失われ、お客さまも満足できないものになってしまいます。この段階でレシピをしっかり作っておくと、現場ではレシピ通りに作れば間違いがないため、メニュー作りには時間をかけて丁寧に行っています。 実際のメニューには、地元食材を用いた伝統料理や、食物アレルギー対応食では難しいとされている麺類も採用されています(例、米麺)。家庭の主婦が真似できない、味のレベル・彩りの美しさ、そして感動が味わえる料理です。
原材料表示
原材料表示の作成には、かなりの時間をかけているそうです。まずは、シェフが提案したメニューの全原材料をチェックし、抜け漏れがないか、上記の10品目が除去されているかをチェックします。その際、二次原材料については、食品メーカーまで問合わせをしているそうです。一回目のチェックが終わったら一度シェフに戻し、再度念入りにチェックをします。原材料が全て表示できるよう、数回のチェックを行います。
アレルゲン情報は、「とにかく全部開示する」というポリシーで、最終的な判断はお客さま自身が行えるように、詳細に開示しています。食物アレルギーを持つ人にとって怖いのは「全部言ってくれないこと」なのだそうです。分からない部分があると、「もしかしたら、二次原材料にアレルゲンが含まれているのではないか、コンタミの可能性は?」と疑心暗鬼になってしまいます。「沖縄久米島 食物アレルギー対応旅行」では、インターネットのサイトを利用し、すべての原材料を公開しています。サイトを見ると調味料や加工食品の製造元や原材料まで書かれていて、細部まで行き届いた対応がされていることが分かります。
個別対応は行わない
アレルギー対応食は二次原材料までアレルゲンを徹底的に調べ、準備・開発されています。そのため、個別対応は原則行わず、定型化された対応を行っています。これは、決してミスをしないための大原則だそうです。現場でメニューの変更や原材料の変更などの個別対応を行うには専門的知識が必要で、中途半端な知識で行うと、かえって発症リスクを高めるとの判断から、安定性と安全性を重視した一律の対応を行っています。その代わり、事前にコンシェルジュがお客様と念入りな打ち合わせを行うことで、お客様と十分なコミュニケーションをとっています。
調理時対応
アレルギー対応食は早朝に調理を行い、通常のメニューと同時間帯に調理をしない工夫をしています。また、アレルゲン混入を防ぐため、新しい調理着と調理用手袋を着用し、調理器具と食器、スポンジ・たわしなどの洗浄用品は専用のものを用意します。対応食の食材と専用調理器具は、専用の収納場所に保管します。また、調理器具には目印をつけて誰でも一目で専用と分かるようにしています。特に、粉末のため混入しやすい小麦粉の取り扱いには気を使っているそうです。専用の厨房を用意していなくても、工夫次第でこれだけの対応ができるという参考になりますね。
ホール対応
食物アレルギーの事故は、意外と誤配が原因であることが多いのだそうです。そのため、配膳時の誤配防止のため食事時間を指定し、テーブルは事前指定します。また、テーブルや椅子はアレルゲンの残留がないよう、中性洗剤で拭きます。原材料表は来島前に提供していますが、食事当日にも改めて提示します。食事ごと・患者家族ごとのチェックリストによる安全確認を行い、毎回の対応を記録として保管します。ホールスタッフは入れ替わりもあるので、ルールはあまり複雑にしないようにしています。また、できるだけベテランスタッフがアレルギー対応につくように配置します。
その他、食物アレルギーに関する勉強会の開催や、マニュアル確認、コンシェルジュによる調理器具の保管状態チェックなど、食物アレルギー対応食の安全性を高める取り組みもされています。
「無理をしないことが大事」
「これだけ行き届いた食物アレルギー対応を行うには、何が大切ですか?」と質問をしたところ、「無理をしないことが大事」と仰っていたのが印象的でした。一度限りのイベントであれば、多少の無理はできても、継続的な事業として続けていくためには、安請け合いをせず、できないことはできないとはっきり言うことが大切なのだそうです。
現場に携わる皆さんは、危険と隣り合わせという緊張感を持っているそうです。調理担当者はプレッシャーもあり、早朝シフトも組むため、負担感は大きいそうです。それでも続けられるのは、「お客さまの喜んでいる顔」があるから。お客様の笑顔を見ると、苦労も吹き飛ぶとのことでした。食物アレルギーがあると外食自体することも難しいため、ホテルで提供される料理を目にして感激で泣いてしまうご家族もいらっしゃるそうです。久米島の旅を利用した方からは、たくさんのお礼の手紙が届いているということでした。
料理は、人を感動させることができます。楽しい食事は、家族の思い出に残るものです。久米島の食物アレルギー対応の旅は、食の素晴らしさを気づかせてくれます。
【リンク集】
■沖縄・久米島での食物アレルギー対応旅行のご案内
http://www.kumejima-qol.com/top.html
■沖縄・久米島での食物アレルギー対応旅行 ご利用者の声
http://www.kumejima-qol.com/koe.html
■株式会社日本旅行との提携旅行商品「わんぱくツアー」
http://www.a-wanpaku.com/
■沖縄タイムス[ヒューマン]アレルギー対応 旅の味提供 饒平名留美さん
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-04-18_5827/
取材協力:
久米島町食物アレルギー対応委員会 平良 博一氏
株式会社エボリュ-ション 栩野 浩氏