日本の水産物輸出先は、中国・香港が4割
日本の主要な水産物輸出先は、2022年の実績では中国が871億200万円(構成比22.5%)、香港が754億5000万円(19.5%)で、中国と香港で全体の4割を超えた。
■日本の水産物の輸出先と金額(2022年、単位:千円)
中国・香港への主な水産物の品目
日本が中国と香港に輸出している主な水産物は次の通りである。
■中国・香港への水産物輸出額(2022年、単位:千円)
品目 | 中国への輸出額 (全体との割合) | 香港への輸出額 (全体との割合) |
---|---|---|
ホタテ貝(生・蔵・凍・塩・乾・くん) | 46,723,623 (51%) | 4,801,106 (5%) |
真珠(天然・養殖) | 7,912,441 (43%) | 8,521,142 (46%) |
なまこ(調製) | 4,013,487 (28%) | 2,323,775 (16%) |
まぐろ類(生・蔵・凍) | 2,009,620 (66%) | 315 (0%) |
ぶり(活・生・蔵・凍) | 1,845,310 (28%) | 44,932 (1%) |
貝柱(調製) | 1,481,652 (4%) | 2,059,798 (6%) |
すけそうだら(生・蔵・凍) | 712,858 (49%) | 22,704 (2%) |
さけ・ます(生・蔵・凍) | 673,217 (79%) | 7,398 (1%) |
あわび(調製) | 391,621 (2%) | 3,675 (0%) |
ひらめ・かれい(生・蔵・凍) | 381,040 (10%) | 2,525,221 (65%) |
たら(生・蔵・凍・すり身、すけとう除く) | 373,918 (33%) | 136,351 (12%) |
えび(冷凍) | 296,324 (1%) | 17,268,425 (73%) |
さば(生・蔵・凍) | 200,178 (46%) | 46,148 (11%) |
かに(冷凍) | 136,938 (48%) | 4,173 (1%) |
いか(活・生・蔵・凍) | 129,981 (1%) | 3,065 (0%) |
かたくちいわし(調製) | 122,161 (7%) | 204,511 (12%) |
たこ(活・生・蔵・凍・塩・乾) | 107,357 (11%) | 29,349 (3%) |
ふかひれ(生・蔵・凍・塩・乾) | 101,349 (11%) | 146,444 (16%) |
さんま(冷凍) | 94,329 (5%) | 235,351 (11%) |
乾こんぶ | 84,181 (1%) | 14,655 (0%) |
いわし(生・蔵・凍) | 18,330 (2%) | 980,595 (95%) |
魚油(肝油除く) | 15,379 (0%) | 30,470 (1%) |
いわし(缶詰) | 11,777 (3%) | 68,045 (20%) |
さば(缶詰) | 11,382 (6%) | 4,643 (2%) |
かつお類(生・蔵・凍) | 4,593 (0%) | 60,767 (5%) |
まぐろ類(缶詰) | 0 (0%) | 174,407 (19%) |
寒天 | 0 (0%) | 22,446 (7%) |
かつお類(缶詰) | 0 (0%) | 8,807 (5%) |
かき(缶詰) | 0 (0%) | 733 (2%) |
さめ(生・蔵・凍) | 0 (0%) | 0 (0%) |
魚粉 | 0 (0%) | 0 (0%) |
[参照]財務省「貿易統計 農林水産物品目別実績(輸出)(2022)」を元に作成
中国への輸出量で最も多いホタテのうち80%が北海道産だ。今回の中国の輸入停止を受け、北海道や札幌市、水産物の加工会社、流通団体などは連絡会議を開いた。その中で近藤将基局長は「(輸出が)前年から30%減少するなど、7月上旬から開始されていた中国による輸入水産物の検査強化などの影響が表れている」と話した。
中国で消費されるホタテは中国国内生産でほとんどまかなわれ、主に一般消費者によって消費されている。一方、海外からの輸入ホタテの4分の1は、中国国内で干し貝柱、ホタテスティック、冷凍ホタテ貝柱などに加工されたあと、海外に輸出される。つまり、日本側から見るとホタテの輸出国として中国が1位を占めているが、中国側から見ると日本からの輸入を停止しても影響は限定的といえそうだ。
また、ホタテと同じく中国への輸出が多いのはナマコである。中国では「海の黒いダイヤ」とも呼ばれており免疫力の向上や健康、美容効果がある高級食品として富裕層から人気を得ている。日本で生産されるナマコのほとんどは、中国に輸出していることから、ナマコの生産者は行き先を失っている状態だ。
[参照]水産庁「世界の水産物消費」
[参照]函館税関「ほたての輸出」(PDF)
政府は中国市場だけに依存しない貿易を目指す緊急支援事業を創設
日本政府は8月31日、中国による水産物の輸入停止への対応、及び水産業を守る支援策等についての会見を開き、禁輸措置で国内業者に影響があった場合は東電が賠償に応じることを表明した。さらに今回の輸入停止を受けて、今後は中国市場だけに依存しない貿易を目指すとし、緊急支援事業を創設するとした。支援可能な主な内容は、ホタテなどの殻むき機の導入支援、人員確保の対策、新規海外市場への販売、流通支援などとした。
こうした状況を受け、日本国内では混乱が広がっているが、中国が特定の国に対して輸入規制するのは、これが初めてではない。今年8月には、台湾産マンゴーの輸入を突然停止。2021年には台湾産パイナップルから害虫が検出されたとして、輸入を全面的に停止した。この突然の輸入停止の背景には、台湾の頼清徳副総統が南米を訪問した際、アメリカを経由したことへの対抗措置の可能性があることも指摘されている。
中国での水産物の輸出規制を受けて、日本国内では新たな動きも見られる。外食チェーンのワタミでは、居酒屋116店舗で国産ホタテを使用したメニューを提供する「日本の漁業応援キャンペーン」を実施する。キャンペーン開始の発表を受け、各メディアで大きく取り上げられたこともあり、今後、こうした国内消費を促す動きが、各所で行われることが期待される。
[参照]首相官邸「中国による水産物の輸入停止への対応及び水産業を守る支援策等についての会見 | 総理の演説・記者会見など」(2023年8月31日)
中国の輸入規制がいつ解消されるか分からない現状を踏まえつつ、国内需要の拡大や政府の緊急支援事業についての新たな動きにも注視していきたい。