日本の食料輸入量と食品ロスの関係
令和3年度における日本の食糧輸入量は101,656億円で、令和2年度の88,965億円と比較して114%に増加している。過去5年間のなかでも輸入量は最も多く、日本人が口にする日々の食料の多くを海外からの輸入に頼っているのが現状だ。
一方で、令和2年度の日本国内の食品ロスは522万トンにのぼった。前年度と比較すると8%減少してはいるが、この量は、国民1人あたりに換算すると1年間に41キログラムに相当する。海外からの輸入に頼っていているにもかかわらず、大量の食品ロスが生じているのだ。
最新の日本のフードロス状況
出典:農林水産省「食品ロスとは」
新型コロナウイルスの影響によって外食機会が減少したことにより、事業系食品ロスは前年比11%減少した。また、家庭で過ごす時間が増加し、使いきれない食品の廃棄が減少したとみられる影響で、家庭系食品ロスも前年比5%減少している。
とはいえ、国民1人あたり1日約113グラム、お茶碗1杯分に近い量を廃棄していることになる。
食品等事業者ができる食品ロス削減の工夫
国際社会の一員としてSDGsの推進が求められるなか、食品ロスにかかわるSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」を達成するためには、企業と消費者(家庭)がそれぞれ食品ロス削減への取り組みを行っていく必要がある。ここでは、食品等事業者が取り組める解決策の事例を見ていこう。
①生産者
規格外商品を販売する
生産者や食品メーカーの中には、規格外品や余剰品を廃棄せずにインターネットや直売所などで販売するところもある。規格外品とは、市場に流通させられる正規の規格に満たない形やサイズの農産物のことだ。
余剰品を販売する
2020年初頭に発生した新型コロナウイルスの影響でさまざまなイベントが中止になり、行き場を失くした大量の余剰品が発生した。余剰品のなかには、まだ食べられるにもかかわらず処分の対象になってしまうものもある。この余剰品を廃棄せず、実店舗やECサイトなどを通じて消費者に販売することによって、食品廃棄物を削減することができる。
②製造
フードバンクを活用する
食品の製造工程で、規格外品として廃棄される予定の商品を福祉施設などの公共性の高い施設へ無償提供する「フードバンク」に積極的に提供するのもひとつの手だ。
容器包装を工夫する
従来よりも食品の鮮度を長く保持できるよう、食品メーカーと資材メーカーが協力することも有効だ。保存用パッケージの開発・工夫をすることで、賞味期限を延長し、期限切れによる食品ロスを減らすことができるだろう。
③卸・小売
売り切り・使い切り
小売店などでは過剰仕入を防いで売り切りを徹底することや、小容量販売・バラ売りによる使いきりの工夫が挙げられる。
また、卸売業と小売業の商習慣にある、いわゆる「3分の1ルール」により、賞味期限を迎える前に小売店に卸せず返品・廃棄された未使用食品を再流通できるというメリットも見逃せない。
④外食
外食でのドギーバッグの活用、小容量メニューを導入する
外食事業者の中では、店内で食べきれなかった料理をドギーバッグに詰めて消費者が持ち帰る試みが徐々に広がってきている。欧米では一般的な行動だが、日本国内においても少しずつ認知度が高まってきている。
また小盛メニューを導入して、食べ残しを削減する工夫もできるだろう。
食品ロス削減のためのマッチングサービスを利用する
売れ残りが発生した飲食店舗と、食品を必要としている一般消費者をスマホアプリなどでマッチングさせて、安く食品を売買したりする施策を展開する事業者も増えている。こういったサービスをうまく活用して店舗で発生する廃棄量を減らすのもひとつの手だ。
消費者や事業者が協力し食品ロス削減運動を
食品ロスの削減にはさまざまなアプローチがあるが、生産者や製造現場、卸・小売事業、外食産業など、各分野の食品事業者が食品ロス削減に対する意識を高くもって取り組みを進めることが求められる。また、事業者も消費者も、それぞれの立場でできる工夫を考え共同で行っていく事で、食品ロス削減運動を推進することが達成への近道だ。