飲食店ではより安全性の高い食空間を提供すると同時に生産性を向上することを目的として、さまざまなDXが進められている。なかでも注文や会計を非接触でできる接客サービスは、コロナ禍において特に積極的に取り組まれている。
今回は、外食における非接触の取り組み事例についてまとめた。非接触に重点を置いたDXには様々な視点からのアプローチが考えられるため、自店舗の運営に合ったものを取り入れてみてほしい。
外食における非接触のDX事例
外食における非接触のDXには、店員と接触することなく注文を完了できる技術やスマホアプリを介したテイクアウト商品の販売、コロナ禍の人数制限に対応した座席予約システムなどがある。ここでは、具体的な事例を4つご紹介しよう。
業態 | 企業名 | 取り組み |
---|---|---|
焼肉 | やっぱりステーキ | タブレット端末の導入により注文を非接触方式に |
居酒屋・酒場・バー | 焼鳥IPPON | 注文・会計・決済までをスマートフォン端末で簡潔 |
イタリアン、フレンチ、焼肉など | 俺の株式会社 | お客様のスマートフォンから注文が可能なO:der Tableを導入 |
中華 | 株式会社ソラノイロ | BASEを活用したECサイトとテイクアウト Appを活用し、簡易的なモバイルオーダーを実現 |
タッチパネル注文
タッチパネル注文とは、タブレット端末などを活用してタッチパネルから商品を注文できる技術のことだ。1人1台、もしくは1つのテーブルに1台などのタブレット端末を提供し、お客様は端末に表示されているメニューのなかから注文する商品を選んでデータを送信する。送信されたデータを厨房で受信することによって、店員が直接注文を聞かずに調理を開始できるという仕組みだ。
ステーキ専門店の「やっぱりステーキ」の一部店舗では、個人客向けに1人1台のタブレット端末を提供して注文を行う非接触方式を採用している。
また、焼き鳥専門店の「焼鳥IPPON」では、商品の注文から会計・決済までスマートフォン端末で完結できる仕組みを採用しており、入店から退店まで店員との接触を最小限に抑えている。来店客が少ない時間帯に商品が割引になる「ダイナミックプライシング」を採用することで、店内の混雑を分散させる取り組みもDXのひとつといえるだろう。
O:der Table(オーダーテーブル)
O:der Table(オーダーテーブル)はお客様のスマートフォンでQRコードを読み込んで商品を注文できるデジタルオーダーシステムだ。飲食店の各テーブルにQRコードを記載しておくことで、店員を呼ぶことなくお客様のタイミングで注文が可能になる。
また、「お客様のスマートフォン端末を利用できる」という点もメリットといえるだろう。タブレット端末を利用したタッチパネル注文の場合、飲食店側が端末を用意しなければならないが、O:der Tableでは専用のQRコードを配置しておけば来店したお客様のスマートフォン端末から注文が可能だ。飲食店側のコストを削減しつつ利便性を向上させるDXの取り組みとして、双方にとって大きな利益が期待できる。
店舗DX推進の取り組みとして2020年末から全社的にO:der Tableを導入している「俺の株式会社」では、同システムの導入によって「安心・安全」を担保しつつ効率の高い店舗運営を実現できるようになったと回答している。コロナ禍で感染リスクを考慮した店舗運営が求められているなかで、O:der Tableのようなシステムを用いたDXが消費者の不安を軽減しているといえるだろう。
テイクアウト App
テイクアウトAppは、2020年6月にECサイト作成サービスの「BASE」がリリースしたテイクアウト販売用の新機能だ。飲食店がBASEで作成したECサイトを通じてテイクアウト商品を販売するための機能であり、テイクアウトAppで販売した商品は実店舗で受け渡しを行うことが想定されている。お客様は店舗があらかじめ指定した受取日時で商品を注文し、クレジットカードで事前決済を済ませた後、実店舗へ足を運んで商品を受け取る仕組みだ。
これまでBASEはECサイト上で自社商品を販売する仕組みだけを提供していたが、テイクアウトAppのリリースによって簡易的なモバイルオーダーにも対応可能になった。これによって、従来は実店舗に直接足を運べるお客様のみを販売対象としていた飲食店が、インターネット上で新たな顧客の獲得が期待できる。
例えばラーメン店を運営する株式会社ソラノイロは、「女性でも気軽に1人で入店できるラーメン屋」を目指してテイクアウトAppの活用を推進している。BASEを通じた自社商品の通信販売のほかにも、テイクアウト商品をBASE上で購入して実店舗で受け取る仕組みを整えている。
近年はこのような飲食店のEC化事例が増えており、オイシックス・ラ・大地のように飲食店のEC化を積極的に支援する企業も登場している。
クラウド型予約管理システム
クラウド型予約完了システムの「GATE Reserve」は、電話やWeb、SNSなどさまざまなルートから入る予約を一元管理可能だ。複数の飲食店紹介サイトと連携して予約データや在庫の取り込みを行うだけでなく、各飲食店紹介サイトの編集機能も搭載されており、店舗運営の負担を軽減できる。
また、コロナ禍では当たり前のものになりつつあるテーブル単位の人数制限や、席同士の間隔調整などもGATE Reserve上で行えるなど、「コロナ禍のニューノーマル」を意識したDXを実現している事例といえるだろう。インターネット上で予約管理を行うことでお客様との接触を最小限に抑えるだけでなく、飲食店側の業務効率向上にも寄与している。
まとめ
コロナ禍で非接触の推進がどの飲食店にとっても必要不可欠となり、店舗運営の効率化を見据えてDXを進める企業が増えている。
今回紹介したように、タブレットやスマートフォンなどのモバイル端末を活用したシステムや、インターネットを経由したテイクアウト商品の販売など、企業が取り組めるDX事例にはさまざまなものがある。自社に取り入れられそうな事例を参考にしながら、飲食店とお客様の双方にとってメリットのある運営を目指していくことが大切だ。