マイルドでクセがない味は和食にも
東南アジアの国々では、ココヤシの木は「生命の木」と呼ばれている。決して豊かとはいえない生活環境の中、ココナッツオイルやココナッツミルクは毎日の食事はもちろん薬品や化粧品として古くから活用されてきた。中でも成熟したココヤシの胚乳から抽出されるオイルは、芳醇な香りと甘い風味が特徴で、中鎖脂肪酸、ラウリン酸、ケトン体といった成分が美容と健康に優れた効果を発揮するという。
そんなココナッツオイルに高橋さんが注目するきっかけとなったのは、2014年3月に幕張メッセで開催されたアジア最大級の食品展示会『フーデックスジャパン2014』だった。
「ココナッツオイルを扱う企業のブースで、初めてオーガニックのエキストラバージンココナッツオイルを口にしました。それまでは、正直そこまで好きではなかったし特に注目もしていませんでしたが、とてもマイルドでクセのない味に感動したんです」
当時はまだ、クックパッドやレシピブログなどでも、お菓子以外の料理にココナッツオイルを使うレシピは少なかったという。そこで、高橋さんは料理研究家としてレシピ開発に取り組むことにした。
「ココナッツオイルはアルツハイマーや認知症に効くとか脳の健康に良いことは知られていたので、高齢者の方の需要は高かったんです。しかし、使い方がわからないという声も聞いていました。そこで、高齢者は和食が好きだし自分も日本料理の経験があるので、和食にも取り入れてみることにしたんです」
ココナッツオイルは万能? 料理に合わせた注意点
「和食にココナッツオイル?」と首をかしげてしまうかもしれないが、事実、『魔法のココナッツレシピ』では、エスニック、フレンチ、イタリアン、中華、スイーツなどとともに和食のレシピも多彩にラインナップされている。果たして、ココナッツオイルに相性の善し悪しはないのだろうか。
「エスニックはもちろんフレンチやイタリアンなどの洋食でも、バターの代わりとして気軽に使っていただけると思います。ただ、和食はそれらに比べると若干注意が必要です。入れ過ぎると、和食の特徴である素材の味にココナッツオイルの香りが勝ってしまうので、少量から試してみるのがいいと思います」
和食での特に効果的な使い方は、和食に多く使われる醤油や味噌、塩麹などの発酵食品と合わせること。また、ミョウガ、シソ、ネギ、ショウガ、ニンニク等の香味野菜ともとても相性が良いという。
「例えば味噌をお酒でのばしてココナッツオイルを少し加え、魚になじませて焼くと、コク深く香り豊かな魚の味噌焼きに仕上がります。また、香味野菜を使った炒めものや和えものなどに加えると、香りと風味のバランスがとても良くなりますよ」
ちなみに、和食に関わらずすべてのジャンルで共通して言えるのは、「作ったことも食べたこともない料理では使うのはオススメできない」ということだ。