業界ニュース2018.12.19

若者に人気のクラフトビール 外食はどう活かせるか

2018.12.19

ここ数年、クラフトビールと呼ばれる、小規模の醸造所で作られるビールに注目が集まっている。ビールの消費量が減っている今、飲食店としてはクラフトビールの人気をうまく売り上げにつなげたいところだ。クラフトビールの魅力はなにか?飲食店はどうやって銘柄を選ぶべきか?クラフトビールの事情に詳しい、日本ビアジャーナリスト協会の藤原ヒロユキ会長に話を聞いた。

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ここ数年、クラフトビールと呼ばれる、小規模の醸造所で作られるビールに注目が集まっている。ビールの消費量が減っている今、飲食店としてはクラフトビールの人気をうまく売り上げにつなげたいところだ。クラフトビールの魅力はなにか?飲食店はどうやって銘柄を選ぶべきか?クラフトビールの事情に詳しい、日本ビアジャーナリスト協会の藤原ヒロユキ会長に話を聞いた。

目次

ビール離れ世代に受けた個性ある味と香り

そもそも、クラフトビールとはどういったものを指すのだろうか?実は、日本にはまだ明確な定義がない。

「アメリカの醸造者組合はクラフトビールを小規模であること、伝統的な製法であること、大手酒造メーカーから独立していることと定義付けています。しかし生産量の単位も違い、伝統の考え方も違うため、そのまま日本にあてはめることはできません」

日本では味や香りが個性的な小規模醸造のビールをクラフトビールと呼ぶ流れがあるという。

藤原さんによると、クラフトビールのファン層は主に20代後半~30代。リサーチ会社アイシェアの調査で、「ビール離れ」とされている世代だ。「この年代の人は、一昔前のように量を飲んで酔っ払うことを目的としてビールを飲んでいません」と藤原さんは分析する。大量に飲まないからこそ、インターネットなどのツールを駆使して銘柄を厳選し、どの店で飲めるかを調べるといった消費スタイルがあるようだ。

若者を惹かせたクラフトビールの魅力は、それぞれの銘柄が持つ強い味と香りにある。

「これまで国産の大手メーカーのビールしか飲んだことのない人にとって、ビールの魅力は喉越しの爽快感ですね。味が苦手という人もいて、夏にちょっと飲むだけで十分という感覚を持っていました。味や香りがはっきりしたクラフトビールを飲んで、その魅力におどろかれたのだと思います」

樽での入荷は管理に注意

「いろんな種類のクラフトビールを飲み比べたい」「クラフトビールをドラフトで飲みたい」という消費者のニーズをとらえ、ビールタップを並べて品揃えの充実さを強みとしたビアバー「クラフトビアマーケット」(東京都港区虎ノ門など5店舗)などの専門店が雑誌などで取り上げられている。しかし、その流れに乗って安易に何種類ものビールを樽で揃えようとするのは禁物。ビールは劣化が早く、樽は厳格な管理が求められるためだ。

「樽の冷やし方やガス圧、注ぎ方などの管理ができなければ、本来おいしいビールを劣化させ、まずくなったビールをお客様に提供することになります。かえって悪評が立ってしまうでしょう。20~30年この店でやろうという覚悟がない限り、勢いだけでクラフトビールを樽で多数揃えるのは避けたほうがいいかもしれません」

では、一般的な居酒屋が設備投資をせずにメニューにそろえたいという場合、どういった方法があるのだろうか。

「樽で仕入れるのは2-3種類にとどめて、残りはボトルで入荷することをおすすめします。もちろんこの場合も冷蔵庫で、光をあてないよう管理が欠かせません」

料理とのペアリングを追求

ビールは、原料や製法、香り、アルコール度数などで何十種類ものスタイルに分類される。飲食店はその中でもどんなスタイル、銘柄を選べばよいのだろうか。

藤原さんによるといま人気のスタイルは、「アメリカンペールエール」「IPA」だ。アメリカンペールエールはホップが多く、苦味があるという特徴で、日本では「よなよなエール」が代表作だ。IPAはペールエールより苦味やアルコール度が高い。「志賀高原IPA」などが挙げられる。そのほかの銘柄については、酒類卸業者に相談してほしい。

最後に、藤原さんは外食企業がすべきクラフトビールの利用法として、料理とクラフトビールの味と香りのペアリングを提案した。

「クラフトビールはそれぞれにはっきりとした味や香りがあるため、ワインのようにビールと料理との足し算や掛け算を楽しめます。その組み合わせを見つけるのも、面白いです。これを機にぜひビールを勉強して、自分のお店の料理とのベストな組み合わせを見つけて、お客さんに提案していって欲しいですね」

すでに数種類のクラフトビールと料理を組み合わせたコースを提供するホテルや、ペアリングイベントを開催するバーも出てきている。自社の看板メニューの味をより引き立てるビールを見つけられたら、新たなファン獲得にも繋がりそうだ。

取材協力:日本ビアジャーナリスト協会

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