全国では約45%、東京では約84%の飲食店が規制の対象に
2018年6月に東京都の受動喫煙防止条例が、7月に国の改正健康増進法が成立した。東京オリンピック・パラリンピックに対応するため、都条例は国の法律よりも規制内容が厳しくなっている。両者の違いはどこにあるのだろうか。飲食店に関する部分のみを表にまとめた。
健康増進法改正と東京都受動喫煙防止条例の違い
健康増進法改正(国) | 東京都受動喫煙防止条例 | |
---|---|---|
規制内容 | 原則屋内禁煙 (喫煙室のみ喫煙可) | 同左 |
喫煙室での規制 | ・飲食提供不可 ※加熱式たばこ専用室、喫煙目的のバーやスナック、既存特定飲食提供施設では飲食提供可 ・設備の技術的基準に適合 (屋外排気、煙の流出防止など) ・20歳未満の入室不可(従業員含む) ・喫煙室に、喫煙室の種別と20歳未満の立入禁止を示す標識の掲示 ・店頭などの施設に、喫煙室があることを示す標識の掲示 | 同左 |
規制の対象外となる条件 ※全てを満たす必要あり | ・客席面積100m2以下 ・資本金5000万円以下 ・既存店(2020年3月31日までに開業) <全体の55%程度が該当> | ・客席面積100m2以下 ・資本金5000万円以下 ・既存店(2020年3月31日までに開業) ・個人や家族経営などで従業員がいない <全体の16%程度が該当> |
罰則(過料) | 施設管理者:50万円以下 喫煙者:30万円以下 | 施設管理者:5万円以下 喫煙者:5万円以下 |
前提となる改正健康増進法のポイントは、
① 客席面積が100㎡を超える
② 資本金が5,000万円を超える
③ 2020年4月1日以降の新規店
このうちどれか1つに該当する場合には、原則禁煙の規制対象となる。該当するのは全国の飲食店のうち約45%。つまり、客席面積が100㎡以下かつ資本金5,000万円以下の既存店は、地方自治体による個別の規制がない限り、これまで同様、喫煙が可能だ。また、喫煙を主目的とするバーやスナックなども飲食と共に喫煙できる。
東京都は規制条件に従業員の有無を盛り込む
東京都の条例では、国の規制条件に加えて従業員の有無が加わっている。客席面積の大小に関わらず、従業員を雇っている場合には原則禁煙だ。これは弱い立場にいる飲食店の従業員を受動喫煙から守るためのもので、東京都のホームページによれば、都内の飲食店のうち約84%が規制の対象となる。
なお、客席面積が100㎡以下で規制の対象外だった店舗がリニューアルによって、客席面積を増床させた場合は、既存店であっても規制対象となる。
喫煙室の種類で飲食可否が分かれる
原則として屋内は禁煙であるが、喫煙室を設置することで、お客に喫煙させることは可能だ。これは国でも東京都でも変わりはない。ただし、紙巻きたばこや加熱式たばこ、バー・スナックなどの業態によって、喫煙室を設置する場所や飲食提供ができるかどうかも変わってくる。喫煙室ごとの条件を示そう。
飲食店が設置できる喫煙室の種類と条件
喫煙室の種類 | 設置可能な場所 | 喫煙室での飲食提供 | 対象の飲食店 |
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喫煙専用室 | 施設の一部 | 不可 | 一般的な事業者 |
加熱式たばこ専用喫煙室 | 施設の一部 | 可 | 一般的な事業者(経過措置) |
喫煙目的室 | 施設の全部、または一部 | 可(主食の提供は不可)※ | たばこの対面販売(出張販売を含む)をして、喫煙を主たる目的とするバー、スナックなどの特定事業目的施設に限定 |
喫煙可能室 | 施設の全部、または一部 | 可 | 2020年4月1日時点で営業し、資本金5,000万円以下かつ客席面積100m2以下の既存特定飲食提供施設に限定(経過措置) |
※社会通念上主食と認められる食事で、米飯類、パン類(菓子パン類を除く)、麺類など
喫煙室は20歳未満の立入禁止・標識の掲示を義務付け
さらに、受動喫煙防止の観点から未成年の喫煙室への立ち入りは制限される。つまり、小規模店舗でも禁煙や分煙対策をしていない喫煙可能店舗には、未成年は入れなくなる。これは客だけでなく従業員にも適用されるため、未成年の従業員は喫煙・分煙スペースへの料理の配膳だけでなく、清掃などの業務をさせることはできない。高校生、大学生など未成年のアルバイトを雇っている場合は、業務の範囲を切り分ける必要があるだろう。
また、店内で喫煙できる場合は、店頭や喫煙室に指定の標識(ステッカー)の提示が義務づけられる。規制対象とならない飲食店でも標識の掲示は必要だ。標識の一例は厚生労働省の受動喫煙対策ウェブサイトからダウンロードできる。