築地に直接出向かず、納め屋などに仕入れを委託していた場合も、問題なくこれまでどおりの注文ができる見込みだ。
「大型量販店などの流通を支えるには築地は手狭で一部限界もありますが、一般的な飲食店さんなら、必要なものはなんでも揃います。これからは目的別に豊洲と築地で棲み分けされていくのではないでしょうか。今後も従来通り、品質のよい商品を皆様にお届けできるよう、施策を行っていきます」
移転延期の要因や、不安点の多くは、開場に向けて調整中
市場が豊洲に移転しても、築地は場外市場を中心に活気と賑わいが続いていきそうだ。では、移転先の豊洲の様子はどうだろう。
まずは豊洲市場の概要を見てみよう。豊洲市場の敷地面積は、約40.7ヘクタールと、築地市場の約1.7倍。水産卸売場棟と水産仲卸売場棟は5階、青果棟は3階建ての構造となるのが特徴だ。
築地市場は、屋根と柱を中心とした開放型の構造になっており、外部・内部の明確な区別がつきにくかった。豊洲市場は、壁で覆うことで外部と内部を明確に区切った閉鎖型にし、品質・衛生管理ができるHACCPを考慮した構造となっている。外気温や雨風の影響はもちろん、鳥や小動物などの侵入を防ぐ。
また、駐車スペースや専用の搬出入口(ドックシェルター)から搬出入を行うことで、外気温やほこり、排気ガスの流入を抑え、温度や衛生管理の徹底が図れる。
冒頭で触れたように、移転延期は「安全性が確認できない」などの理由だった。土壌汚染対策の盛り土がなされていなかったことが発覚し、地下水からは飲み水の環境基準値の最大130倍のベンゼンなどが検出されるといった安全性の問題が大きく報道された。
その他にも、建物の設備面でも、店舗面積の狭さや、ターレの走行が困難なのではないかといった指摘もあった。また、豊洲市場へのアクセス面でも不安の声もあがっていたようだ。豊洲市場の開場が決定した現在、これらの問題点はどうなったのだろうか。
まずは安全面について、東京都が公表している資料を見てみよう。現在は問題発覚後に改めて設置した専門家会議での提言に基づいて、豊洲市場の安全・安心の確保に向けた追加対策工事が実施されている。床面にコンクリートを敷設し、建物下に排水用ポンプと換気設備を設置するという。この工事は専門家会議の確認を踏まえて、7月末までに完了予定とのことだ。なお、これまで、地上では環境基準値を超えるベンゼンやヒ素は検出されていない。
設備面については、一部の区画で築地市場より狭くなる間口はあるが、それは現行の食品衛生関係法令に基づき、店舗間に間仕切りが設置されるためだという。実際は、1店舗あたりの面積は、築地市場の平均7.2平方メートルから、8.25平方メートルと広くなる。ターレの走行も問題なく行えるようになっており、大型のカーブミラーを設置するなど、より安全に運行できるように準備が進められている。
アクセス面では、築地市場と豊洲市場を結ぶ環状2号は、2018年内に暫定の迂回道路を開通する予定だ。公共交通機関の東京臨海新交通臨海線「ゆりかもめ」は、朝の早い市場に合わせて、始発時間を前倒しする方向で調整中だ。また、新橋駅および東陽町と豊洲市場間のバス路線も、新市場にあわせて運行する見込みとなっている。
半年後には、築地市場の2倍近い広さの豊洲市場が開場する。東京のみならず全国の食をささえる市場の移転という大事業は、ぜひ成功してもらいたい。そして新市場開場後の築地も、より細やかに仕入れのニーズに応えて賑わい続けてほしい。