「各企業、よくいままで値上げをせずに頑張って来られたなというのが率直な感想です。飲食店では、原材料・人件費などの高騰で数年前から値上げをせざるを得ない状況が続いていました。そのような状況のなか、各社は仕入れやメニュー、オペレーションを見直し、人件費の削減も実行するなど、あらゆる施策を行っています。それでも、いよいよ立ち行かないということで値上げをしているわけです」(原氏)
各企業の経営努力も及ばぬほどの値上げ圧力。いま外食企業を巡る状況はどのようになっているのだろうか。
値上げ要因の分析で見えてくる、今後の状況
各社が公表している値上げの原因は、大きく下記の3つに分類することができる。
(1)原材料費の高騰
(2)人件費の高騰
(3)改正酒税法の影響
まず、(1)の原材料費の高騰について、タナベ経営の井上氏は、こう話す。
「現在、様々な原材料が高騰しています。例えば、お米を見てみると、2015年に比べ、2017年は約120%価格が上昇しています。このインパクトは外食企業としては、かなり大きいですね」
2018年は、さらに米の価格が上がりそうな要因があるという。
「これまでは米の作り過ぎによる価格の下落を抑えるため、米作農家に作付面積の削減を要求する減反政策がありました。制限する代わりに国から補助金が出ていたのですが、2018年にその減反政策が廃止されます。それに伴い、米価の下落を恐れ、補助金が出る大豆や家畜等のエサとなる飼料用米の生産に移行する農家が数年前から増えています。転作する農家が今後も増えることが予想され、さらに米が作られなくなってしまうというわけです」(原氏)
その他の食材についても次のように分析する。
「魚は近隣諸国との競争などもあって、天然魚の資源が少なくなり価格が上がっています。牛の場合は、子牛の生産農家の減少などを背景に価格が高騰していますね。これに加えて円安の影響で、牛のエサである輸入飼料の値段が上がっており、牛の価格をさらに押し上げています」(原氏)
円安の影響は大きく、そのほとんどを輸入に頼る食用油や小麦粉の価格も上がっているのが現状だ。
次に(2)の人件費の高騰については、少子化による影響がいよいよ本格化してきているという。
「いま東京23区内では、時給1,200円を出してもアルバイトが集まりません。これまで、アルバイトの主力だった大学生が少子化でとにかく少ない。さらに、2018年には18歳以下の人口が減少期に入るため、人材確保のための競争は今後ますます激化するでしょう」(井上氏)
物流コストもドライバー不足などの人材不足に起因して高騰している。飲食店にとって、人件費の上昇は直接的な値上げ圧力になるだけでなく、間接的な圧力にもなっているのだ。