すでにビジネスでの活用は始まっている
では実際に、どのようなビジネスシーンでAIは活用されていくのだろうか。
「例えば、株式などのオンライントレーディングをするAIが出てきています。AIは人間のように運に期待したり大きなリスクを侵さないため、大きな利益が出ない代わりに少額の利益を安定して出せるそうです」
他にも、画像処理技術を応用した工場ラインの不良品検査や、異常検知システムなども導入されている。音声認識技術を使った会話型としては、ロボット型のペッパーや、モニターに映ったキャラクターが接客する店員AIなどがある。他にも、物流・翻訳・介護・防犯、果ては人事など、さまざまな分野でビジネスに広がっていくと栗原氏は語る。
AI=なんでもできるは間違い
映画や小説に出てくるAIは、人間を超える知能を持ち、人間を脅かす存在として描かれることが多いが、現在のAIはそれとは異なると栗原氏は言う。
「たとえば最近話題の、自動掃除ロボットがありますね。部屋の中を回って掃除するのが役割です。エンジニアが設計、プログラムして用途も決まっているので、『用途限定型』と呼ばれています。これにカメラをつけたり手を付けたりして、部屋の片付けもできるようになったとしましょう。単機能よりは多くのことができますが、それでもまだ指定されたことしかできません。
それに対し、映画や小説に登場するAIは『汎用型』になります。目的のために、自ら行動・選択する仕掛けが入っています」
現状における人工知能は『用途限定型』で、まだ単純な情報処理の延長線であり、自動的に何かをしてくれるというより、“高機能電卓”のようなものだという。
「現在のAIは、人間で言えば体のパーツ一つひとつ、つまり目や耳、手足のようなものです。そのパーツを組み込んだ製品やサービスが、身の回りに増えてきています。現在のAIのビジネス展開は、工場での異常検知など、パーツごとの導入が中心です。今後AIが発達していくことで、パーツを組み合わせて、有機的に動かすといったことが具体的に見えてきます。少し未来になれば、『汎用型』のAIも出てくるのではないでしょうか。
経営判断のような多くの要因を考慮した意思決定にも、導入されるようになるでしょう。しかし、あくまで人が意思決定するためのいろいろな可能性を提示してくれるツールであり、最終的な意思決定は人が行う図式は変わりません。まさに人と共生する、よきパートナーという関係になるのだと思います」
次回は物流編として、食品卸や食品メーカーが伝えるAIサービスや、導入するにあたって準備しておきたい対策などを紹介する。