百貨店業界:売上げの減少から更なる再編の可能性も
2007年~2008年にかけて、合併・統合が相次いだ百貨店業界。三越伊勢丹ホールディングス(以下、三越伊勢丹HD)、J.フロントリテイリング、高島屋、そごう・西武、H2Oリテイリングの大手5社へと統合が進み、各社がM&Aや業態の変革などを推進した。
そうした中、2016年10月、セブン&アイHDが、傘下のそごう・西武のそごう神戸店を含む関西3店舗を、H20に譲渡すると発表した。H2Oリテイリングは関西地区の食品スーパーのイズミヤを傘下に収め、関西スーパーマーケットとは資本提携を結ぶなど、関西地区に特化した経営戦略を進めており、首都圏への集中を目指すそごう・西武と思惑が合致した。
そごう・西武は関西3店舗以外にも不採算店の整理を進めており、2016年~2017年にかけて5店舗を閉店する。一方、三越伊勢丹HDも、2017年3月での東京、千葉の2店舗の閉店を発表している。
百貨店各社は生き残りをかけて閉店以外の施策も打ち出しており、その戦略は2極化しているという。
「一つは“脱百貨店”です。J.フロントリテイリングは、ユニクロなどの低価格帯の衣料品チェーンや、ポケモンセンター、東急ハンズなど、集客が期待できるテナントの誘致を進めています。今まで百貨店に来なかった18~34歳の若い層を集め、将来的なお客様を増やしていくという戦略です。また、百貨店の商習慣である、商品仕入時ではなく商品が売れた際に仕入処理をする『消化仕入方式』から、安定した収入となる『テナント収入方式』へと転換を進めています。
もう一つの流れは“百貨店らしさの追求”です。良い商品を自らの目で見て仕入れ販売する、という本来の百貨店の役割・魅力を取り戻す取り組みです。三越伊勢丹HDと高島屋は、自社商品の開発などを進め、独自性のある商品群で他店との差別化を進めています」
近年、主に中国人観光客による「爆買い」で支えられてきたが、2016年、高級品を中心としたインバウンド需要は急失速。業界全体の売上げ低下が続く中で、大手5社間での再編が起こる可能性も考えられる。
「H2Oリテイリングはもともと高島屋と業務資本提携を結んでいました。そこにそごう・西武が割り込んできた形になり、H2Oリテイリングの今後の動向が注目されています」
2016年は小売業界にとって、大きなニュースが続いた。2017年以降も引き続き、さらなる買収や合併などが起きる可能性が高く、各業界の動向から目を離せない。
今回は、小売業界の再編についてまとめた。次回は、2015年に記事を公開し、多くの食ビジネスの関係者に読んでいただいた「食品メーカー・卸の再編」の2016年版をお届けする。