価格据え置きの西友の売上げが過去最高に
そうはいってもデフレ傾向は続いており、消費者の財布の紐は固い。値上げに慎重な小売店もある。
小売大手の西友は、2015年3月5日から食品や日用品の価格を、6ヶ月間据え置く「プライスロック」キャンペーンを全店で実施している。対象となるのは、生鮮食品 13 品目、惣菜商品 9 品目、飲料、米や食用油などの加工食品 117 品目、日用品 61 品目の計 200 品目。そのうち約 4 割の価格を一段引き下げる。
食料品の値上げが相次ぐ中、低価格路線を押し進める西友は消費者の志向をつかみ、6年連続で収益増。2014 年の既存店前年売上比が4.3%増と過去最高に達しているという。
消費者の節約志向が続く限り、コスト増を商品に価格転嫁することはハードルが高いことに変わりはない。しかし、先にも述べたように、日本の食生活は輸入に依存しており、石油などの資源や農産物の国際価格の動向の影響を受けやすくなっている。食料を安定的に供給するためには、国産の自給率を上げることが重要になってくる。
そこで、企業努力を超えた有効な取り組みとして参考にしたいのが、近年、需要が伸びている国産小麦だ。
鍵を握る「国産」原料。6月から値上がりする小麦は…
2015年3月に日清製粉、日本製粉、昭和産業の大手製粉メーカーが、6月から小麦粉の値上げを相次いで発表。25キロ当り45円~125円値上げされる。円安による原料価格の値上がりで、北米や豪州から輸入する政府の小麦の売り渡し価格が2015年4月1日から平均3%引き上げられたことが原因だ。
これに伴い、国産小麦も25キロ当り65円値上げされる。国産小麦は収穫される前の年(作付前)に生産者と製粉メーカーとの間で取引数量や価格について取り決められる。しかし、近年、小麦の国際価格が乱高下しているため、2011年からは輸入小麦の価格の変動幅を乗じた「事後調整」が行われるようになった。そのため、輸入小麦の価格が上がれば、国産小麦の価格も上がることになる。
下図に、ここ数年の小麦の価格の変動を示してみた。
上図のように、2007年から2008年にかけて小麦の国際価格が高騰。農林水産政策研究所 総括上席研究官の吉田行郷氏によると、この時「製品の原料となる小麦を外国産から割安感のある国内産に切り替えることで、製品価格を抑える動きがあり、『国内産小麦使用』表示のある製品の出回りが増加した」という。
その後、2009年から国際価格が急落して国産小麦に割高感が出たが、「大手メーカーでは国内産小麦の使用と表示を継続した」。
つまり、国産小麦に割高感が出ても国産小麦の需要は衰えず、むしろ国産小麦が市場に定着してきたことを示している。