業界ニュース2015.04.21

6月に値上げを控える小麦。国産需要拡大に活路~春の値上げラッシュ、主要食品まとめと今後の見通し(後編)

2015.04.21

白田 茜

白田 茜

消費者の国産志向が、新品種開発の下支えに

国産小麦がもてはやされるようになった背景について、農林水産政策研究所総括上席研究官の吉田行郷氏はこう語る。

「近年、優秀な品種が相次いで導入されたこと。特に北海道で、中力粉に向く新品種が導入されただけでなく、強力粉に向く新品種の導入・増産が進み、大手2次加工メーカーが原料に求める質の高い小麦が、量的にも十分使いこなせるボリュームで確保されたことが挙げられる。併せて、小麦に限らず消費者の国産志向が強まったのも大きい」

小麦はたんぱく質の含有量によって、強力粉、中力粉、薄力粉に分けられる。これまで国産小麦は、中力粉(うどん用)に適した品種が多く、パンや中華麺に使用する強力粉に適した品種の栽培には不向きとされてきた。しかし、近年はパンや中華麺向けに適した品種が開発され、日本の高温多湿の気候でも栽培しやすくなってきているという。

つまり、消費者の国産に対する需要が高まり、全国で新品種が開発され、パンや中華麺用など用途にあった小麦が手に入るようになってきたのだ。

大手製パンメーカーも国産100%の新商品。判断は消費者の手に

国産小麦を100%使用した
敷島製パンの『超熟 国産小麦』

実際、「国産小麦」を謳った商品が店頭に並んでいるのをよく見かける。「国産小麦100%」をアピールする商品もある。

敷島製パン株式会社(Pasco)は、2015年4月に国産小麦100%を使用した山型食パン「超熟 国産小麦」を発売。北海道産の小麦「ゆめちから」が50%使用されているという。もっちりとした食感が評判になっている。「『超熟 国産小麦』はこれまでの『超熟』より数十円高いが、それでもそれだけの価値はある」と都内の会社員は語る。

日本では国産小麦が使用されやすい環境が整ってきた。実際、生産者と製粉メーカー、製パン業者が連携して商品開発を行う事例も現れ始めた。

最終的に商品を選ぶのは消費者だ。消費者が買い支えれば、国産の商品が普及し、結果的に国内の生産量に影響し自給率のアップに繋がる。国産小麦の普及にはそんな好循環のヒントが詰まっているのではないだろうか。

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