飲食業のおもてなし戦略、働き方と価値の創造、2024年問題対策~FOODCROSS conference 2023トークセッションレポート

特集記事2023.12.25

飲食業のおもてなし戦略、働き方と価値の創造、2024年問題対策~FOODCROSS conference 2023トークセッションレポート

2023.12.25

飲食業のおもてなし戦略、働き方と価値の創造、2024年問題対策~FOODCROSS conference 2023トークセッションレポート

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フード業界の関係者が共に手を取り合い、未来に向けて業界を発展させるためのイベント『FOODCROSS conference 2023』が10月に開催され、業界のリーダーたちが人手不足や長時間労働など業界の課題についてトークセッションを行った。その概要を紹介する。

目次

トークセッション1:『人と人をつなぐ分身ロボット』が創出する新たな働き方の可能性

分身ロボットとは、遠隔操作で「分身」として働くロボットのこと。障がいや病気などの事情で働くことを諦めている就労困難者は1500万人以上ともいわれる。介護や育児で職を離れている人も含めれば、さらに膨大な数になるだろう。彼らの雇用につながると注目されるのが、オリィ研究所の分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」だ。

分身ロボットで「誰もが就労を諦めない社会」を実現したい

(左)株式会社モスシャイン 精神保健福祉士 野村一馬氏 (中)株式会社モスシャイン 代表取締役社長 特定非営利活動法人 障がい者ダイバーシティ研究会 副理事長 精神保健福祉士、公認心理師 秋山真貴子氏 (右)株式会社オリィ研究所 OriHime事業部 マネージャー 高垣内 文也 氏
(左)株式会社モスシャイン精神保健福祉士 野村一馬氏
(中)株式会社モスシャイン 代表取締役社長特定非営利活動法人 障がい者ダイバーシティ研究会 副理事長精神保健福祉士、公認心理師 秋山真貴子氏
(右)株式会社オリィ研究所 OriHime事業部 マネージャー 高垣内 文也 氏

株式会社オリィ研究所 高垣内氏 当研究所ではOriHimeの開発と同時に、身体が不自由な方々が働く「分身ロボットカフェ」も運営しています。重度肢体不自由のある人の就職率は5%未満。テクノロジーによって彼らの社会参加を実現し、将来的には飲食業の人手不足にも貢献できればと考えています。誰もが就労を諦めない未来へ向けて、飲食業の皆さんと一緒に社会をアップデートしていきたいですね。

株式会社モスシャイン 秋山氏 モスバーガーではコロナ禍を機に、都内店舗でOriHimeを導入しました。事務職や店舗で働く障がい者雇用の6名が、パイロットとしてセルフレジのサポートなどをしています。ソーシャルディスタンスの確保はもちろん、テクノロジーを活用しながら、人ならではのあたたかみのある接客を提供できるのが分身ロボットの魅力です。今後も活躍の場を広めていきたいです。
 

トークセッション2:待ったなし2024年問題!卸企業がすべき対応

働き方改革法案によって、ドライバーの労働時間に上限が課されることで生じる2024年問題。卸業者のコスト対策について、企業や個人の配送ニーズに応える国内最大級の配送プラットフォーム「ピックゴー」を提供するCBcloud株式会社の伊藤氏が講演を行った。

デジタルツールで脱属人化、生産性向上で人手不足に備える

CBcloud株式会社(左)営業本部 マネージャー 伊藤裕哉氏(右)CBcloud株式会社 舛田祐規氏
CBcloud株式会社
(左)営業本部 マネージャー 伊藤裕哉氏
(右)CBcloud株式会社 舛田祐規氏

CBcloud株式会社 伊藤氏 卸業者が人手不足のなかでドライバーを確保するには、ドライバーに選ばれ続けることが必要。そのためには積載効率の向上や荷待ち時間の解消、労働時間の削減など生産性向上が不可欠です。

当社が提供するサービス「ピックゴー」では24時間365日、全国どこでもネットで簡単に配送依頼ができます。最短56秒で案件に適した配送パートナーを選べます。同サービスを活用して、緊急配送時の配車の業務負荷を減らし、長距離輸送費の削減を実現したケースも。ドライバー不足は今後も続きます。だからこそデジタルシフトによる効率化でドライバーから選ばれる卸業者になるべきなのです。

トークセッション3:デジタル時代のおもてなし戦略

超・人手不足時代のおもてなし戦略とデジタル化について、モバイルオーダーシステムなどを提供する株式会社トレタ中村氏と、クラウドカメラによる録画サービスを開発するセーフィー株式会社山本氏が語った。

注力すべき「おもてなし」を精査し、残りはデジタル化を

(左)セーフィー株式会社 営業本部 第1ビジネスユニット アカウントセールス第1グループ 副部長 山本茂氏(右)株式会社トレタ 代表取締役CEO 中村仁氏
(左)セーフィー株式会社 営業本部 第1ビジネスユニット アカウントセールス第1グループ 副部長 山本茂氏
(右)株式会社トレタ 代表取締役CEO 中村仁氏

株式会社トレタ 中村氏 2030年には少子高齢化によって644万人もの人手が不足する2030年問題が起きます。不足分のうち400万人がサービス業です。外食産業の従事者が360万人なので、外食人材が丸ごと消えるインパクトです。

おもてなしを存続させるためにこそデジタル化による生産性向上が不可欠です。まずは業務の棚卸しをして、各業務を顧客体験価値から評価する。その上で、価値を生まない仕事は省力化し、価値を生む仕事をさらに磨くことが、お客様のためになるおもてなしにつながるでしょう。

セーフィー株式会社 山本氏 外食企業は誰をターゲットに、何を価値として提供するかを改めて見直し、必要ないところはデジタルの力で削ぎ落としていくべきです。そして、本来人が行うべき仕事に集中する。注力するべきところが明確になったときにも、デジタルの力は使えます。
 

トークセッション4:シン・チェーンストア理論~店舗オペレーションにおけるデジタルシフトと人の価値~

回転寿司チェーン「金沢まいもん寿司」などを運営する株式会社エムアンドケイの木下氏と、「北前そば 高田屋」などを運営する株式会社プロスペリティ1の平野氏が、店舗展開とQSCの均一化について語った。人手不足でも変わらずファンを絶やさない秘訣とは。

多店舗展開にはIT基盤の構築が不可欠

(左)株式会社プロスペリティ1直営・FC事業部/購買部 部長 平野耕史氏(右)株式会社エムアンドケイ取締役COO木下隆介氏
(左)株式会社プロスペリティ1 直営・FC事業部/購買部 部長 平野耕史氏
(右)株式会社エムアンドケイ 取締役COO木下隆介氏

株式会社エムアンドケイ 木下氏 当社は寿司チェーンを全国展開していますが、入社後は必ず本店の金沢で美味しさの本質を学んでいただきます。寿司職人の世界は師匠ごとに教え方が違う場合もあるので、一定の自由度はありつつゴールをしっかり共有しています。

店舗ではデジタル化が進んでタッチパネルが主流ですが、職人がデータからお客様の好みを把握できる仕組みを導入するなど、より満足度を高める工夫も進めています。

株式会社プロスペリティ1 平野氏 教える側、教えられる側のミスマッチを防ぐため、何を達成するとどれだけ報酬が得られるかを可視化したロードマップを作成しました。管理職用もあり、目標を意識しやすい仕組みを整えています。店舗では、女性や高齢者でも働きやすいキッチン設計、モバイルオーダーや配膳ロボットの活用で、スタッフは本来やるべき接客に注力させています。今後は調理基準書のデジタル化を進めていきたいですね。
 

インフォマートDXアワード:「デジタル活用を実現しているのは当社だ!」

FOODCROSSで初となるDXアワードを開催した。第1回目は、BtoBプラットフォームなど様々なデジタルツールを利用しているインフォマートユーザーの担当者が登壇し、各社の方針や実績を発表した。

飲食事業者がDXへの取り組みをPR

株式会社叙々苑

株式会社叙々苑 『BtoBプラットフォーム受発注(※1)』でほぼすべての受発注をデジタル化し、社内の伝票郵送や基幹システムへの手入力をゼロにしました。数字の確定が早くなり、経営判断のスピードも向上。本部からの的確なサポートで「店舗に数字目標を追わせない経営」が実現しました。

 

株式会社サンライズサービス

株式会社サンライズサービス 『BtoBプラットフォーム受発注』を利用して23年目。慢性的な人手不足から、社内のさまざまなシステムの一元化を目指してきました。導入にあたっては店舗のストレス削減のため、システムへのとっつきやすさを重視。誰でも分かる仕組みを工夫しています。

 

株式会社フードワークス

株式会社フードワークス 当社は売上や勤怠、『BtoBプラットフォーム受発注』の仕入れデータなどを基幹システムに集約して分析しています。そうすることで損益管理やFLコストの算出が容易になり、同一業態のメンバーが他店の情報を見ることができ、成功事例を学び合えるようになりました。

 

株式会社DREAM ON

株式会社DREAM ON 当社ではデジタルシフトの取り組みとして、スマホで経営理念の浸透をチェックできる「理念浸透ナビ」や、面接の基準を標準化する「面接・契約書ナビ」、店舗教育を標準化する「映像教育DX」などを開発しました。子会社の「さぽマル」を通じて他社にも提供しています。

※『BtoBプラットフォーム 受発注』とは、日々の発注・受注業務をWeb上で行うことで請求データを一元管理できるサービスです。

デジタル化でフード業界に貢献し、共に前進する

盛況のうちに幕を閉じたFOODCROSS conference 2023。トークセッションでは、デジタル化で人手不足や原材料高騰、法令対応などの課題を解決できる可能性が見えてきた。DXでフード業界は前進できる。自社にあったテクノロジーの活用で生産性を上げ、人の価値を最大化させる戦略が求められている。

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