生態系・環境配慮された認証施設での商品の普及~マルハニチロ

マルハニチロは、水産物の調達から加工、販売に至るまでの一貫したサプライチェーンを構築している。流通業者だけでなく生産者と消費者をつなぐ役割を担っており、持続可能なサプライチェーンの構築をマテリアリティ(重要課題)と位置づけている。
同社は、食品安全や環境配慮などを認証する「BAP認証」商品の利用を広げている。これは、将来の資源枯渇リスクを回避し、安定的な供給を確保するための戦略でもある。
同社の事業はBtoB領域が主体であるため、調達先との取引において持続可能性の基準を提示し、情報共有を進めることで、水産業界全体の変革をけん引する立場を目指している。
水産物認証制度の役割と広がり
国際的な水産認証の一つである「BAP(Best Aquaculture Practices)」は、養殖水産物のふ化場、養殖場、飼料工場、加工工場を対象とした認証制度だ。食品安全、環境への責任、社会への責任、動物の健康と福祉の4つを柱としている。世界では約3,700件の施設が取得しており、エビ、サーモン、ムール貝など約40魚種、年間250万トンの生産量がBAP認証を受けている。これは、世界養殖生産量の2.5%(藻類を除く)に相当し、日本の海面養殖生産量の約3倍にあたる。
一方で、日本国内の取得件数は依然として少なく、愛媛県の養殖マダイや兵庫県の真牡蠣加工施設など3件にとどまっている。海外では、チリ産銀鮭の8割以上がBAP認証を取得済みで、他国との格差が鮮明だ。
BtoB領域での普及課題と可能性

BAP認証の取り組みは、小売だけでなく外食や業務用市場にも広がっている。外食チェーンや回転寿司店では調達先の透明性が求められ、認証の有無が取引条件となる例もある。
認証商品の導入にあたっては、外食・小売ともにロゴ使用料が無料であることが特徴だ。認証番号付きの商品を仕入れることで、店舗のメニューや売り場表示にマークを利用できるため、追加コストがかからず導入しやすい。
マルハニチロは、2026年3月に社名を「Umios(ウミオス)」に変更する。同年秋にニュウマン高輪内に魚介類を中心としたレストランを開業する計画で、そこでBAP認証を取得した水産物のメニューを提供する予定だ。今後は、小売用商品の拡大や、外食チェーンにおける業務用商品の導入事例が増えることで、認知度向上と普及の加速が期待されている。
消費者意識の変化
2024年に実施された調査では、16歳から65歳の魚食頻度が高い層を対象に、BAP認証の認知度が測られた。「知っている」と回答したのは4.8%で、「見たことはあるが意味は知らない」と合わせても15%程度にとどまった。しかし、認証の内容を説明すると、半数近くの回答者が「追加費用を払ってでも購入したい」と答えた。特に重視された項目は食品安全で、次いで環境への責任、トレーサビリティ、社会への責任や動物の健康と福祉が続いた。
BAP認証自体の仕組みは整っているものの、消費者への周知や企業間での情報共有が十分とはいえない。今後は、業界団体や企業が協力し、認証の価値をわかりやすく伝える取り組みが必要だ。
国産ラズベリーの育成支援と商品開発~三菱食品

三菱食品は、地域創生の取り組みとして、保存性や流通範囲を広げるための地域産品を使った商品づくりや、農業体験や耕作放棄地の活用を通じた生産者と生活者をつなぐ活動、規格外品を原材料にした商品化の取り組みなどを推進している。今後は小売業との連携を通じて継続性を担保しながら、地域における雇用や交流人口の拡大につなげていく。
秋田産ラズベリーを活用した商品開発

三菱食品 かむかむラズベリーソーダ
(期間限定販売)
事例として紹介されたのが、秋田県との連携だ。県庁や研究会他と協働し、国産ラズベリーを活用した菓子を開発した。日本で流通するラズベリーの約99%は輸入品であり、国産は希少である。同社は秋田産原材料を用い、自社ブランド「かむかむ」シリーズの新フレーバーとして商品化した。
県内でピューレに加工し、ラズベリーソーダ味のチューイングキャンデーを完成させた。発売時には地元の小学校で「キイチゴ集会」を開き、児童や住民と交流した。
他地域への広がりと今後の展望
秋田県に加え、石川県が育成したオリジナル品種のぶどう「ルビーロマン」を使用した新商品も発売予定だ。すでに果汁を使用したチューハイも展開しており、地域の特産果実を全国に広める取り組みは着実に拡大している。同商品で売り上げの一部を復興支援に充てるなど、社会貢献型の商品開発も進んでいる。












