急成長に伴う店舗管理の複雑化
株式会社OWNは2016年の設立後、8年で100店舗を達成。居酒屋業態を中心に、シーシャカフェやすき焼き、割烹など年間20~30店のペースで出店し、現在は130店舗、売上高114億円へと成長している。

代表取締役 川下 雅人 氏
その過程で店舗の売上や予約数、人件費、メニューごとの売上、販売数、原価といった経営データの集計において、エクセル作業が多発した。システムの数値をCSVデータやメールなどに記載して部門間でやりとりし、エクセルに貼り付け、編集、計算するという方法だったという。
株式会社OWN 代表取締役 川下 雅人 氏(以下、OWN・川下社長)「出店が急増する中、各部門でばらばらの管理システムを導入していきました。その結果、点在するエクセルデータの集計に膨大な手間がかかり、課題の発見や正確な経営判断が遅れていったのです。データ集計の効率化と瞬時の見える化は必要不可欠だと感じていました」
各システムのデータを自動収集・自動計算
川下氏は手作業での管理から脱却するため、異なるシステム同士を連携させる経営管理システム『FLARO』を導入。POSの売上やインフォマートの仕入れデータ、勤怠システムのシフトデータなどを自動集計する体制を整えた。
OWN・川下社長「経営データを可視化するには、そもそもデータを1か所に集計する必要があります。そのためにまず着手したのが、システムのグランドデザイン設計です。今どのようなシステムがあり、どのようなデータが蓄積されているかを洗い出して、地図のようにまとめることです。ここが最も重要でした」

データを一元管理したことで、店舗ごとのPL(損益計算書)をいつでも瞬時に把握できるようになったという。
OWN・川下社長「飲食業界は手作業に慣れていて、システム導入に強い抵抗があります。当社もシステム導入時は社内から批判が出ました。だからこそ、私は担当者任せにせず自ら繰り返し説明して、現場に浸透させていきました。それには、従業員はデータ集計ではなく、人にしかできないことに注力してほしいと思っているからです」
スピーディーな判断で、月間1千万円の利益改善
OWNはデータをもとに現場の課題を瞬時に分析。原価コントロールによって利益改善につなげたという。
OWN・川下社長「『FLARO』を使って、店舗のPL表をスマートフォンで確認しています。こうすることで、臨店時にその店舗の状況がその場でわかり、スピーディーに課題を見つけて、改善策の判断ができるのです」
データ一元化の効果として、コースメニューの原価コントロールによる利益改善を挙げた。OWNグループ全130店舗で提供されるメニューのレシピ、食材、原価を統一管理することで、原価コントロールが実現したという。
OWN・川下社長「夏季はコースの需要が落ち込みます。そこで、コースのメニュー原価を瞬時に確認して内容を細かく見直しました。そうして、集客数を維持しつつ原価率を27.3%から26.3%に改善。さらに、飲み放題の時間延長を実施したことで、客単価が4,500円から4,600円にアップしました。月商12億円の当社が原価率を1ポイント改善すれば、1,200万円の利益が出ます」

原価管理のさらなる高度化と改善の余地
今後、OWNグループは原価管理を一層徹底していくという。
OWN・川下社長「これまでの当社の原価管理は、店舗ごとに売上合計と仕入れ価格合計を計算するだけでした。現在はデータを即時確認できるようになり、各店舗でメニューごとの理論原価と実際原価の差異を把握するようになっています。今後はさらに掘り下げて、肉や野菜、ビールなど食材別に原価管理をしていきたいです」
例えば、焼きうどんの調理工程で肉を基準より多く使用していたり、玉ねぎが規定量に満たなかったりといったことも、データの数値化で分かるようになるという。
OWN・川下社長「外食産業は現在、原材料費・人件費・水道光熱費の高騰に直面しています。たとえ昨対比100%の売上を確保しても、減益となってしまいます。そんな時代に利益を出し続けるには、経営数字を知りたいときに可視化し、スピーディーな課題発見と判断をして行動することが求められます」
また、こうしたデータの可視化はコスト対策だけでなく、チェーン店が取るべき姿勢にも寄与するという。
OWN・川下社長「本来、お客様にいつご来店いただいても、店舗は同じ品質のメニューを提供すべきです。ご来店いただくたびに味や分量が違ってはいけません。データは、いつでも同じ品質が提供されていること、すなわち飲食チェーン店の基本的なサービスレベルを保つためにあるのです。
そして、経営者は、現場に対してただ売上を上げろ、原価を下げろというのではなく、データを根拠にしてコミュニケーションをとることが重要です。我々外食産業はDXを一層進めて、何よりも人にしかできないことに注力すべきでしょう」












