山椒の産地形成プロジェクト~ハウス食品グループ本社

山椒は、生産者の高齢化や気候変動により収量が不安定になるなど、近年の国産収穫量は10年前と比べて半減している。ハウス食品グループ本社は、宮崎県高千穂郷や熊本県奥阿蘇を拠点に産地形成プロジェクトを推進。苗木の確保から栽培管理、流通、研究機関との連携まで一貫した体制を整え、国産スパイスを次世代へ受け継ぐための持続可能な仕組みづくりを進めている。
国産スパイスを守る取り組み
山椒は各地域で栽培されているが、多くが兼業で扱われている。ハウス食品グループ本社は、苗木提供や品質向上に向けた栽培管理、原材料調達からマーケティングまで幅広く関与している。
地域資源の活用と協働の広がり

プロジェクトの柱となるのは、地域に根ざした企業や生産者との連携だ。1954年創業の杉本商店は、地元生産者から椎茸を仕入れ、国内外に販売してきた。乾椎茸と山椒は収穫期が重ならないため、山椒栽培との両立が可能となる。さらに、椎茸乾燥設備を山椒の乾燥に転用することで初期投資が抑制でき、新規参入への障壁が低減される。
また、南九州大学とも連携し、気候や土壌など地域特性に応じた育苗や植え付け、収穫の体系化を目指している。高校生を巻き込んだ苗木育成の取り組みも始動検討している。実際に畑を訪れた生徒が香りを生かした新しい用途を考案する場面もあり、農業分野の担い手創出や新分野展開の契機になっている。
多様な連携が描く新たな展望
山椒の取り組みが進むにつれ、生産者や企業、大学が加わり、耕作放棄地の活用や地域経済の再生といった副次的な成果が生まれつつある。日本原産のスパイスとして「山椒」をブランド化することで、日本食文化の保全と拡大を目指し、海外市場に展開できる可能性も期待される。
淡口醬油醸造用の小麦・大豆の地産化の取り組み~ヒガシマル醬油

兵庫県たつの市に本拠を置くヒガシマル醬油は、県産小麦や大豆の契約栽培を進め、全量買い取り制度で地域農業を支えている。同社は1998年に小麦をすべて国産に切り替え、地元産の導入を開始。県の研究機関と協力し、醸造に適した高タンパク小麦の品種開発や栽培技術を確立した。
新品種の開発で持続可能な供給体制を構築

2002年に生産者へ高タンパク小麦の技術指導を展開。さらに2009年から北海道産「ゆめちから」を兵庫県で本格栽培し、品質と収量の安定化を図った。農研機構と共同研究し、2023年に大豆「たつひめ」と小麦「たつきらり」の新品種を発表。いずれも病害抵抗性や収量性に優れており、持続可能な原材料供給に期待されている。
地域農業と連携した安定供給の仕組み
現在、同社が購入する兵庫県産小麦は県内生産量の約4割、大豆は約3割に達する。契約栽培による全量買い取り制度が整い、生産者は安心して栽培に取り組める体制となった。これにより、地域農業の持続にもつながっている。
さらにJAや商社、研究機関、普及センターと連携し、巡回指導や定点調査を実施。グリーンファーム揖西が全国麦作共励会で農林水産大臣賞を受賞するなど、成果も顕著だ。
食品業界における持続可能な原材料調達の取り組みは、供給の安定確保にとどまらない。地域産業との協働や次世代育成にも及んでいる。












