第5回外食SX勉強会レポート~ビジネスの境を越えて協業する(ランプ株式会社清宮氏)

セミナー・イベントレポート2022.12.15

第5回外食SX勉強会レポート~ビジネスの境を越えて協業する(ランプ株式会社清宮氏)

2022.12.15

第2部:座学~ビジネスモデルの再構築(和音人 狩野高光氏)

第2部は、おなじみ株式会社和音人の代表取締役である狩野高光氏による座学講座だ。今回は「ビジネスモデルの再構築」をテーマに、CSV経営をさらに掘り下げていく。

ビジネスモデル再構築に必須な3つの本質

株式会社和音人
代表取締役
一般社団法人レストランテック
協会 顧問
狩野 高光 氏

狩野高光氏(以下 狩野):ビジネスモデルの再構築を語る上では、重要な3つの本質があります。それが「WHAT」「HOW」「MONEY」、何を、どう売って、利益にするか。ここを把握しないと、話の本質が見えてきませんので覚えておいてください。

まず、そもそも「ビジネスモデルとは何か」ということですが、マネジメント分野を体系化したピーター・ドラッガーは『顧客にとっての価値は何か、どのようにして適切な価格で価値を提供するのか。この質問に対する答えがビジネスモデルだ』と説いています。

一方で、ビジネスモデル・キャンバスの開発者アレックス・オスターワルダーは『組織が価値を生成し強化する方法の論理的根拠』と定義づけています。人によって様々な捉え方があるわけです。ですが、共通する内容としてシンプルにいうと、「ビジネスとしてお金を継続的に稼ぐ仕組み」と言うことができます。

ここで注意しなくてはならないのが、ビジネスモデルと戦略との相違です。戦略とは『企業が競争優位性を発揮するために、自社の経営資源の的確な分析と考察を行い、トップマネジメントを行うこと』で、ビジネスモデルと戦略とでは次元が違ってくるという点をしっかり理解しておいてください。

WHAT、HOW、MONEYとは

狩野:その上でまず「WHAT―何を」について。これはプロダクト・イノベーションに類するもので、製品化の段階での考え方です。これまで日本の外食業界では、料理とかドリンクの部分についてのみイノベーションを考えてきました。新しい料理、新しい調理という話ばかりでしたが、本来はこのプロダクト・イノベーションというのは“新しいモノ作り”という捉え方であるべきなんです。

次に「HOW―どうやって」について。新しいモノ作りにおいては、私たちはサプライチェーンとともに産業構造を改革していくという立場に立っています。このプロセス・イノベーションの部分を改革していくこと。すなわち製造流通過程において革新を起こすということになります。

そして「MONEY―そこからどうすれば利益を生み出すことができるか」について。これを一連のものとして考えていく必要があります。

この3つを、さらに細分化して見ていく際に使うのがビジネスモデル・キャンパスという手法です。これはビジネスモデルを可視化しましょう、というもの。全部で9つのパーツに分けて見ていきますが、これらはすべてのパーツが繋がっていることを認識してください。

繋がっていないとそのプロジェクトのコストが出せず、必要な経営資源がどれぐらいかわかりません。そのため経営資源の選択と集中ができなくなります。

ビジネスモデル・キャンバスの「9つの要素」

狩野:ビジネスモデル・キャンバスを構成している9つの要素とは、以下の通りです。これは順番が大事で、効率的に物事が構築されやすい順番になっていることも留意しておく必要があります。

(1)顧客セグメント(CS:Customer Segments)
・自社がHappyにしたい人は誰か、という顧客像を想定し、認知すること
(2)価値提案(VP:Value Propositions)
・設定した顧客に対して価値を生み出す商品、サービス、事業などの存在価値を定めるフェーズ
・飲食を例にあげると、既存の商材をパワーアップさせて、料理やドリンクをブラッシュアップすること
(3)チャネル(CH:Channels)
・顧客とどのようにコミュニケーションし、どのように価値を届けるか
・自社の製品やサービスをどこで知ってもらい、どこで購入してもらうかを正確に把握する
・SNSなのかHPなのかECサイトなのかという、顧客と接する媒体や場所のこと
(4)顧客との関係(CR:Customer Relationships)
・顧客に対してどのように関係を構築し、どのように関係を進展させていくのか、その方法を明確にしておくこと
(5)収益の流れ(RS:Revenue Streams)
・マネタイズがポイントとなる
・自社の提供する価値に対し、どのように、どれくらいの対価を支払ってくれるのか。これまでの外食産業では、ここが弱かった傾向にある
(6)リソース(KR:Key Resources)
・主要な人・物・金・情報・時間のリソースのうち、新事業をやるときにどれだけの社内リソースを、どれだけ投入するのか
(7)主要活動(KA:Key Activities)
・自社が価値を生み出し提供するために行う必要不可欠な活動のこと
・製品やサービスを生み出す製造開発、顧客の課題解決、プラットフォーム構築など、ビジネスを推進していくための活動を表す
(8)パートナー(KP:Key Partners)
・価値を生み出し提供するために、自社だけではまかなえない主要活動やリソースを提供してくれるパートナーのこと
(9)コスト構造(CS:Cost Structure)
・ビジネスを運営するにあたり、発生する必要なコストを想定すること
・変動費と固定費に分けて考え、損益分岐点を意識し、利益が生み出される構造かどうかを考えることが必要

 

5つのリスク

狩野:次に考えるべきなのが「5つのリスク」についてです。1つ目に「ジョブのリスク」。「顧客は本当にそのジョブを抱いているのか」を考えずに、「なんとなくありそうだから」でジョブを考えるために発生しがちです。あらかじめ顧客にインタビューをするなどのリサーチをした上で顧客の現状と、その状況下での顧客のニーズをあらためて見直すべきでしょう。

2つ目の「マーケティングのリスク」は、マーケティング戦略において失敗しがちな「接触点がなかった」「自社が考えているマネタイズの方法を顧客が良しとしていなかった」などがこれに当たります。そもそも想定しているチャネルに顧客がいるのか、そしてマネタイズの方法は合っているのか、などを考えます。「一括支払いなのかサブスク課金なのか」「アップセルなのかクロスセルなのか」といった項目も重要です。

3つ目の「ソリューションのリスク」も陥りがちです。提供価値の点で、既に市場に存在しているバリュープロポジションの二番煎じになっては選ばれるはずがない。あらためて市場を見渡して独自の提供価値を構築できているかを考えましょう。

4つ目は「オペレーションのリスク」。リソースが間に合っておらず、破綻してしまう可能性がありますが、その大前提として「ちゃんと事業を継続していくためのオペレーションが構築されているか」を見直すべきです。「自社の強みが発揮されているか」を再考することも重要です。現状のオペレーションが他社に比べて優位性があるかを見直します。

最後に「ファイナンス(事業化)のリスク」です。ここはシビアに見ていく必要があります。「どのくらいの期間で損益分岐点を迎えるのか」「その後はどんなペースで黒字が拡大していくか」をきちんと精査することで「そもそもこのビジネスを事業化すべきか」という根本的な部分が見えてきます。

難しい理論の話をしているように見えますが、じつは実態に即して考えると理解しやすいはずです。実際にビジネスモデルを設計してみれば、より理解は進むはずです。


これまでになく論理的な解説が続き、出席者には戸惑いが見られた。一方で、食い入るように話を聞いていた。CSV経営の座学がより実践に近づいていることを肌で感じている証拠だろう。

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