第5回外食SX勉強会レポート~ビジネスの境を越えて協業する(ランプ株式会社清宮氏)

セミナー・イベントレポート2022.12.15

第5回外食SX勉強会レポート~ビジネスの境を越えて協業する(ランプ株式会社清宮氏)

2022.12.15

第5回外食SX勉強会レポート~ビジネスの境を越えて協業する(ランプ株式会社清宮氏)

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外食企業の若手経営者が集う会員制サークル、外食SX。第5回目は、第1部のゲスト講演者としてランプ株式会社代表取締役の清宮俊之氏が登壇し、企業に至るまでの経緯や考え方、そして今後の成長戦略には、新しい市場を作り出していくために共存が必要であることを説いた。

第2部では、外食SX代表幹事を務める株式会社和音人の代表取締役 狩野高光氏がCSV経営の実践に関して、ビジネスモデル再構築に必須な3つの本質について講義を行った。

目次

第1部:ゲスト講演~飲食の可能性は無限大~清宮利行氏

清宮俊之氏は、大学卒業後、TSUTAYAを運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)株式会社に入社。社運をかけた代官山プロジェクトを成功させると、入社15年目にして退社を決意し、まったく異なるラーメン業界に転身する。

有名店「一風堂」を運営する株式会社力の源ホールディングスでは、入社3年後には代表取締役社長に就任。2017年には東証マザーズに株式を上場させ、翌年の2018年には第1部への市場変更を果たし、まさに同社を急成長させた立役者となった。

今回の講演では、その経歴を回顧しつつ、現在取り組んでいること、そして今後の展望を語った。

社会人の前半戦で携わったビッグプロジェクト

ランプ株式会社
代表取締役
清宮 俊之 氏

清宮俊之氏(以下 清宮):私は神奈川県横浜市出身で、学生時代は勉学よりも体を動かすことを得意としており、野球、バレーボール、ボートなどに熱中しました。大学はやや変わっていて、日大の農獣医学部に進みました。ほぼ屋外で作業をしているか、白衣を着て研究しているかという特殊な環境に置かれていました。

就職先としては製薬、食品、化学のほか、獣医になる学生が多いのですが、私はなぜかそちらには見向きもせず、様々な業者にエントリーしました。その中で入社させてもらったのがCCC株式会社でした。

1997年から2011年まで、足掛け15年間を過ごさせていただきました。中でも印象的なのは、最後の3年間に責任者として代官山プロジェクトに参加させてもらったことです。

「大人のための文化的空間を都内の住宅エリアで展開する」というコンセプトで、都会の一等地に、自然に溢れた上質で知性的で遊びを取り入れた空間を作るわけですから、とにかく激務でした。大きな企業数社を相手に出店交渉を行い、開業1年後の売上は3テナントで1億4000万円ほど。責任の重さに耐える日々が続きました。

転職3年目にして代表取締役社長に

清宮:その後40歳になる前に、自分がまったく異なる業界でどこまで通用するのか実力を試したいと思い転職を決めました。転職先は、当時ラーメンブームのなかでエッジの効いた経営をしていた「一風堂」を運営する株式会社力の源ホールディングスでした。

もちろん最初は工場研修から始まってお店の方に回され、その後いろんな経緯があって、結局人事部に落ち着きます。そこで組織改革やポテンシャルを引き上げるプロセスを提案し、チームで取り組んでいるうちに、創業者の河原氏から「やってみろ」といわれ、代表取締役社長に就任することになりました。

東証一部に上場する際には、会社の旗印をもっと分かる形で掲げる必要が出てきたため、コーポレートメッセージを意識しながら「JAPANESE WONDER TO THE WORLD」というキーワードを掲げました。世界にラーメンが浸透しはじめてから久しくなりますが、それでも世界で麺をすすることができるのは日本人だけ。マナーが悪いとか、海外には馴染まないなどの声もありますが、実は麺をすすること自体が日本の文化でもある。それをそのまま発信したいという思いがあって、このメッセージを掲げました。

社会人前半戦で知った言葉の数々

清宮:社会人の前半戦にしてこの2社で仕事をさせてもらったことが、その後のベースになっています。当時かけられた言葉で、印象的なものがあります。

CCC株式会社に入って6年目になる頃、それなりに仕事ができるようになってきたなと思い始めたとき、「お前に成し遂げられることなど何もないぞ」と言われました。「まずそれをしっかり理解しろ」というのです。それは僕の原体験になっていますね。

ですが、それを正確に理解したのはもっと後だったかも知れません。要するに「お前が一人で成し遂げた仕事なんてないんだぞ」ということですね。つねに周囲の助けがあることをここで知るわけです。

その後に言われたのが「プロになれなくとも、プロに力を借りられるようになれ」ということでした。それがプロになることだと。今思えば有り難いアドバイスですよね。何をやるにもその分野のプロフェッショナルに力を借りられるのならば、こんなに心強いことはありません。

特に独立してからは、一人で何かをやるということは基本的になく、いずれもチームを組んで事に当たっています。その際にどんなチーム編成にするかを考える上で、この言葉はすごく大事にしています。

さらには「情報のフックをつくれ」ということ。そしてそこで得た情報を「編集できる人になれ」ということ。フックは、アイデアのきっかけになる情報の一端でも掴めるようになるために必要です。さらにその情報を整理整頓し、編集作業を経てから、新しい価値につなげていく。その過程の中でもっとも大事なのが、「編集」の工程だという言葉でした。どの言葉も、今の自分の支えになっています。

「私をオモシロくする会社」

清宮:その後2019年に、LAMP Inc.を設立しました。これは「暗闇を照らす存在になりたい」という思いや、「モノ、ヒト、価値に光を当てる会社」という気持ちを具現化させるために名付けた社名です。現在は、「月見つくねを鎌倉で」「挽肉と米」「スナックおかん」などのブランドを展開しています。

同時にブランドシェアリングビジネスという業務の一環として、「鳥貴族」「つじ田」「ヤマダの鰻」など、社外の立場から、他の飲食店とコラボして、ブランドを仕掛けていくということをやっています。

「一人で戦う時代は終わった」をモットーに、他社メーカーやブランド、生産者とアライアンスを組んで、飲食店を中心にブランドや商品をシェアリングする、言うなればBtoB事業を展開して、新しい食のカタチを模索・提案しています。

企業が成長するには2種類しかないと言われています。“シェアを奪う”か“新しい市場を作り出していく”かです。残念ながら日本ではシェアを奪うことを主眼とする経済活動が長く営まれてきました。特に外食産業ではその傾向が顕著です。

今の時代は、競争よりもどこに身を置くかが重要になってきているように思えます。互いのリソースを補完し合って、どう共存していくかを模索するのが今後の成長戦略だろうという思いで、このブランドシェアリングビジネスに挑戦しています。ビジネスの境を越えて協業する。なかには地方の街づくりと密接にリンクしている事業もあり、可能性を感じているところです。

ランプ社は、「私をオモシロくする会社」というモットーを掲げていますが、ここでいう「私」はお客様であり、自分であり、またパートナー企業でもある、という共存の形を示しています。

今後の飲食業界を展望する

清宮:人手不足や資源の枯渇、食品添加物からの脱却など、飲食業界は様々な課題を抱えていますが、結局のところ、飲食の可能性は無限大だと私は思っています。

地方の創生や再生を飲食とともにプロデュースしていく事業は始まったばかりですし、飲食という業界からの越境を考えてみれば、まだまだ手つかずの分野は残っています。食欲という人間の基本的な欲求に立脚しているのだから、やり方次第でどんな可能性も残されています。問題意識を持って、でも明るい方向を見ながら、飲食の可能性を一緒に探っていきましょう。

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