FOODCROSS 2022プロローグ~カフェ・カンパニー楠本社長らが語るフード業界の未来と課題、価値の共創

セミナー・イベントレポート2022.09.15

FOODCROSS 2022プロローグ~カフェ・カンパニー楠本社長らが語るフード業界の未来と課題、価値の共創

2022.09.15
第一部 「外食業界を取り巻く環境・時代背景~未来予測~」 竹田 クニ氏
第二部 「日本の外食文化、食文化の価値と可能性 ~おいしい未来戦略~」 楠本 修二郎氏
第三部 高橋英樹氏×狩野高光氏 対談

第二部「日本の外食文化、食文化の価値と可能性 ~おいしい未来戦略~」カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長 楠本修二郎氏

コロナ禍で改めて考える「未来のために外食産業が今、すべきこと」

カフェ・カンパニー株式会社
代表取締役社長 楠本修二郎 氏

楠本氏が2001年に創業したカフェ・カンパニー株式会社は、「CAFE」=「Community Access for Everyone」という理念を掲げ、食を通じたコミュニティの創造をテーマにWIRED CAFEやWIRED KITCHENなど約80店舗を運営。地域活性化事業、商業施設プロデュースなどを手がけてきた。

楠本氏は第一部の竹田氏の議論を受けて、「これまで外食産業では人口動態の変化なども含め、多岐にわたるマーケティングについて議論する場があまりなかった」と振り返った。コロナ禍では改めて、「食に携わる人間たちが未来に何をなすべきか」を考え、企業として社会に貢献していく必要があるとの思いに至ったという。

楠本「昭和から平成は右肩上がりの時代で、人口が増えることを前提にした立派なサプライチェーンができました。農業から、物流、小売、外食にいたるまで、良い意味で縦割りの仕組みが普及したことによって、日本の外食産業は効率的で高品質な “おいしい社会”を作り上げてきました」

しかしこれからは、人口減少や高齢化の時代。過去に築き上げた“おいしい社会”のメリットを生かしながら、成熟社会に即した在り方を考えなければならない。今まで縦割りのサプライチェーンを横軸でつないでいくことが必要だ。それぞれの強みを持った事業者によるコラボレーションや、強みがあるのに担い手が不足している農業や一次産業の問題について、どう解決していくかが課題になる。

カフェ・カンパニーはそうした課題と向き合う活動として、NTTドコモとECサイト「GOOD EAT CLUB」を設立した。生産者や店舗が出品する食品を購入できるほか、利用者から出店者へチップを送ることができる「応援チップ」や、ファンコミュニティの機能も備えている。2021年11月には、日本のおいしい文化・技術・知恵を知的資産として未来につなぐ「おいしい未来研究所」も始動した。

楠本「すぐに答えを出すというよりも、今は問いを深めていく時代だと思います。深く問いかけながら、その答えをみんなで共創、共にクリエイトしながら作っていくべきでしょう」

日本はなぜ「おいしい国」なのか? 強みと課題

楠本氏によれば、日本は世界一「おいしい国」だという。その強みは「おいしくて、健康的で、サスティナブル」であること。

参考:楠本氏登壇資料より(以下同様)

日本は『ミシュランガイド』の星を最も多く保有する国で、東京の星付きレストラン212店(2021年)はミシュラン本家のパリ115店(2020年)を大きく上回っている。多くの日本人シェフが海外で腕を振い、星を獲得しているのも日本の特色だ。海外の日本食レストランも、2005年には2.5万軒だったのが2020年は15万軒にのぼっている。

健康面でも、日本の平均寿命は84.3歳と世界一で、和食のヘルシーさは多くの人が知るところだ。日本食に含まれる海藻や漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶などを摂取し続けることで、全死亡・循環器疾患死亡・心疾患死亡のリスクが低かったことが示された。

サスティナブルの面でも、日本の食は「環境負荷の低さ」という点に大きな特長がある。G20各国の食料消費パターンと地球の環境負荷を調査したレポートによると、国民一人当たりの食料消費を起因とする温室効果ガスの排出量で、日本はトルコに次いで2番目の低さだ。

コロナ禍以降、心身の健康や環境問題に改めて注目が集まりつつある今だからこそ、こうした日本の食の「おいしくて、健康的で、サスティナブル」な価値を紐解き、経済価値に変換していくことが必要なのだ。

楠本「これからの時代は、よりヘルシーでサスティナブルであること、これらも全部合わせて『おいしい』というふうに変わっていくと私は考えています。だからこそ、日本の食のサスティナブルな価値をさらにアピールし、伝承していくことが求められるのです」

日本の食を取り巻く課題

一方で、日本の「おいしい社会」にも課題はある。農業漁業の担い手不足は言うまでもなく、小規模な食品製造業が下請け、孫請けに甘んじてブランドを持てていないこと、さらには祖父母世代が継承してきた健康的な日本食のレシピが伝承されにくくなっていることなど、課題は山積みだ。これからは食育や世界各国へのアピール(経済価値への変換)も含めて、日本の「おいしい」食文化を伝えていく総合的なプログラムを作っていく必要があるという。

すでに、日本は魅力的な国として世界中から認知されている。「コロナ禍が収束した後に行きたい国」ランキングでは、日本が軒並みトップにランクイン。その目的は、7割が「食」と答えている。

世界を見れば、観光で不動の人気を誇るヨーロッパには人口よりも観光客の数が多い国がいくつもある。フランスやアメリカ、スペイン、ドイツなど、インバウンド観光の比率が高く、食糧自給率が高い国は豊かに暮らしやすい。コロナ後に観光産業が復活することを想定すると、今しっかり文化産業を強くしておけば、人口減少社会でも活気を失わずにすむはずだ。

さらに、食産業に関わる人たちがひとつに連帯すれば、それぞれの得意分野が生きるよう役割分担して利益を分け合うこともできる。

楠本「日本の食産業は117兆円もあります。62兆円の自動車産業は基幹産業と言われていますが、その倍もあるのです。しかし、大きな声は出せていません。小規模な事業者の集まりを、ビッグボイスにしていく施策が必要なのです」

食品産業の就業者数は 832 万人。これは日本の就業者数の12.4 %を占める割合だ。これからも貴重な人材を育てていかなければならないにもかかわらず、日本の戦後史が築いてきた縦割り型のサプライチェーンには限界がきている。

漁業で成功しているノルウェーでは、漁業者の平均所得が900万円。それに対して日本の漁業者の平均所得は177万円で、大きな差がついている。しかし日本は世界有数の海洋資源に恵まれており、非常に大きなアドバンテージを持っている。この現状をどうすべきか考える必要があるだろう。

楠本「カフェ・カンパニー1社では何もできませんから、プラットフォーム思想で皆さんと共創することをご提案したい。我々の取り組みは、大きく分けて4つです。DXおよびフードテックのジャンル、美味しくてサスティナブルで、健康的な食を提供するコンセプトでの新規出店。そして地方創生のプロデュース、最後に海外展開です」

その上で楠本氏は、「おいしい未来研究所」で進めている食品の鮮度保持テクノロジーに関する取り組みや、ロート製薬と提携して進めている商品開発、沿線そのものの価値を食から盛り上げていこうという「沿線価値向上プロジェクト」をはじめ、海外展開の計画などさまざまなケースを紹介した。

楠本「外食企業は、それぞれに得意分野や個性、強みをもっています。これからは閉じた業界の中で競合するのではなく、オープンプラットフォームで互いに学び合うことが大切です。一朝一夕でできることではないし、5年、10年かけてやるべきことだと思いますが、今から取り組まなければ絶対に間に合いません。日本の豊かな食文化が失われないうちに、私もプレイヤーの1人として、皆さんと一緒に共創していきたいと思います」


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