ホテル・旅館の利益が出る原価・人件費管理~時代を見据えた経営戦略

飲食・宿泊2023.03.22

ホテル・旅館の利益が出る原価・人件費管理~時代を見据えた経営戦略

2023.03.22

ホテル・旅館の利益が出る原価・人件費管理~時代を見据えた経営戦略

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ホテル・旅館業界はコロナ禍で継続的に打撃を受ける中、従来の枠組みに捉われず、時代に沿った経営戦略を立てて過去最高売上を更新した宿泊企業がある。6旅館を経営するほかコンサルティングも手掛ける株式会社リアルクオリティだ。

同社の代表取締役 小林豪氏に自社の旅館で手掛けた改革事例を交えながら、アフターコロナを見据えたホテル・旅館の収益改善のポイントを伺った。

目次

PL体質を改善しないとコロナ禍後も含めて生き残れない

株式会社リアルクオリティ
代表取締役 小林 豪 氏

当社では神奈川県湯河原温泉の白雲荘や、箱根芦ノ湖のホテルラクーンなど、客単価が1万円から3万5千円ほどの旅館を6カ所運営しています。

宿泊業界はコロナ禍で大きな打撃を受けました。インバウンドはやや戻りつつありますが、旅行代理店は店舗閉鎖や倒産するところもあり、消費者の団体旅行や宴会、婚礼ニーズは長く続いた自粛要請で変わってきています。これを受けて、ホテル・旅館業界がアフターコロナで生き残るためには4つのポイントがあるといえるでしょう。

● 新しい時代で勝てるコンセプトにチェンジ
● 少ない売上でも利益が出る経営モデルを設計
● 超効率型経営&データ経営
● 顧客満足度を落とさない

当社が運営する旅館を例にお話します。少ない売上でもキャッシュが残るモデル例として、ラクーンという宿泊施設があります。コロナの影響で売上は1億円から半減して5,900万円に、翌年は4,800万円になりました。一方で、売上に比べてキャッシュフローを示したEBITDA(※)をみると、ほとんどキャッシュアウトしていないのです。コロナ禍前に柔軟な経営モデルにしておいたので、コロナ禍になってもなんとか耐えられました。

※EBITDA:Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization(利払前税引前償却前営業利益)とは、営業を通じて得られるキャッシュフロー(実質的な利益水準)を表す指標。算出式は、≒ 経常損益+支払利息+減価償却費

上段左のグラフは客単価3.5万円の白雲荘の売上です。コロナ禍でも好調で過去最高を更新しました。右のグラフはインバウンド向けの旅館、花水晶です。コロナ禍で外国人客がほぼゼロになり売上は落ちましたが、V字回復して2022年は1億3千円の売上と2,900万円のキャッシュが出ました。

花水晶の稼働率は46%しかありません。所在地である山梨県笛吹市石和町は旅館の数が多く、稼働率が伸びにくいのです。似たような旅館2社と比較すると、客単価は花水晶よりも高いのですが、旅館の利益を示すGOP(Gross Operating Profit:営業総利益)は花水晶23%に対して、他の旅館はマイナスになっています。

この結果を分けているのが売上から原価と人件費を引いたOPという数字です。花水晶のOPは63.4%ですが、他の旅館は30.2%、22.1%です。売上規模が同じであっても、原価と人件費の設計をしっかりやらないと利益体質に差が出るというのがポイントです。


次は高級旅館の白雲荘と同じエリアにある高級旅館の比較です。白雲荘は湯河原温泉周辺でもトップの稼働率なので、他の旅館と比較する上で条件ややや異なりますが、売上規模は似ています。こちらで見ていただきたいのもOPの差です。

白雲荘はOPを50%で設計しているのですが、比較対象の旅館では38.7%。GOPに差が出ますが、この差は原価の違いです。原価率の対売上比を見ると白雲荘16%に対して、比較対象の旅館では25%なので、当然、利益率に差が出ます。事例に挙げた旅館は売上があるのに利益が出ないと苦しんでいらっしゃいます。

右側の表は、高級旅館の白雲荘と似た旅館の数字です。A旅館、B旅館ともに利益が出ていますが、共通にいえるのは、原価が20%を超えていないということです。

旅館の原価率は20%といわれていますが、そうではなく、きちんと料理の値段やお客様一人当たりにどれくらい掛けるのか、しっかりとマネジメントしていれば、利益率は後からついてくるのです。

口コミサイトでの評価では原価を安く設定した白雲荘でも4.3ほどで、平均的です。他社の旅館では、高評価を狙うために料理の原価率を高くしている旅館もあります。それはそれでひとつの経営の考え方ですが、利益が出なければ持続可能にはならないので、きちんと設計するべきです。

さらに大事なことは、率ではなく額で管理・設計することです。客単価を上げても原価率も上がっていくため、利益率はあまり変わりません。

ネットで集客するために低価格でリニューアルし、コロナ禍でも過去最高売上を達成

当社が実際に低価格旅館でどのように利益を出したか説明します。20室ほどの旅館・花水晶がある場所の山梨県石和温泉は、大人数の団体旅行に来ていただくような温泉地でした。コロナ禍以前は、インバウンドの観光客が宴会場で並んで食事されます。全体の46%がインバウンド、団体が26%で、合わせて7割ほどを占めていました。

ネットからの集客が少なく、3年かけてネットからのお客様を3倍増やすことを計画していた矢先、コロナ禍でインバウンドと団体客がいなくなってしまい、その分の売上が消失しました。さあ困ったというところです。

花水晶は、例えば密になる食事処、昭和なロビー、眺望なし、普通の部屋。ネットで集客できる特色がゼロで戦えないので、低価格でリニューアルすることになりました。

ホテル・旅館の利益が出る原価・人件費管理 花水晶リニューアル例 1 ホテル・旅館の利益が出る原価・人件費管理 ホテル・旅館の利益が出る原価・人件費管理 花水晶リニューアル例 3 ホテル・旅館の利益が出る原価・人件費管理 花水晶リニューアル例 4 ホテル・旅館の利益が出る原価・人件費管理 花水晶リニューアル例 5
各画像はクリックで拡大します。

ラウンジ・ロビー、売店スペース、レストラン、客室、ロゴのリブランドなど合計約2,800万円を投資して改装しました。ものが売れない売店はアメニティバーに、宴会場は個室風に、20室ある客室はベッドとソファーを入れて床も手直ししています。

その他にも、ネットで集客するためにはネット映えするものが必要だと考えて、露天風呂客室を作りました。一部屋520万円で投資額の中では一番高くなりました。温泉が出るわけではないのですが、こうした設備を整えることで集客効果が大きい露天風呂付き宿になることができます。

この旅館はレストランと厨房とラウンジの導線が良かったので、正社員は支配人一人だけにして、残りの従業員はパート・アルバイトにしました。フロントの説明はあらかじめ資料を作り込み、アルバイトでも説明できます。食事の場所も丸をつけて、なるべくお客様自身で移動していただきます。

また、セルフで飲み放題のクラフトビールサーバーを設置したり、お菓子バーで食べていただいたりと従業員を配置しなくてもサービスができる形を作りました。

食事はレストランと提携して一食ずつ仕入れていたのですが、利益が出にくかったので、現在は完全に自社化しています。当社の料理人一人が、1週間に一度、現地に行って、1週間分仕込み、それをすべて真空調理してコストダウンを図りました。

原価と人件費を徹底的に見直し、DX化を図ることが利益体質を作る

これからのホテル・旅館経営で一番重要なのが、原価と人件費の変動費を、データ経営とシステム経営で超効率化することです。この2点は当社が管理している施設やコンサルティング先でも役に立っています。

始めにやることはご自身の旅館やホテルがどういうOPに設計すべきかを決めることです。ビジネスホテルなら45~50%、シティーホテルなら30%と業態によって違いますが、当社の旅館ではGOP20%出ると大成功という感じです。そのためにOPを何%にすればいいのかを設計していきます。GOP20%必達というのを動かさず、OPを計算するとだいたい50~60%の間くらいが逆算で出てきます。GOPとOPの間の費用は水道光熱費や販売手数料など、そういったものを加味していくと、当社の高級業態・白雲荘だとOPが50%出ると必ずGOPが20%近くになることが分かっています。

低価格業態の花水晶ではOP50%の設計でやっていたのですが、利益が出なくOP60%の設計でないとやっていけないことに気付きました。GOPが20%も出ると多少のことが起きても利益は残ります。当社のコンサルティング先の旅館様には口酸っぱくGOP20%といっています。

原価・人件費の変動費はシステム管理して、理想値との乖離を防ぐ

コンサルティング先では、「うちは料理旅館なので、原価は25%かけたい」とおっしゃるところがあります。その場合、人件費を25%未満にしないといけません。また、「うちは高級旅館だから、満足度が下がらないように従業員は多くいた方がいい」という方もいます。従業員を配置してもいいのですが、そうすると利益が出ません。OPが20%、30%の旅館はそういうことが起こっていると思います。そうなると高級旅館として運営できるのかが疑問で、「そんなにかけてしまったら利益が出ません」ということを伝えています。

白雲荘を例に挙げると、お客様一人当たり夕食と朝食合わせて4,500円ほどでマネジメントしています。まず、調理場の担当者に献立を分解して原価を計算し、毎日発注して納品されたものを管理します。月末で締めてから原価を把握しても手遅れなので、毎日把握することが大事です。さらに経営者が毎日数字を見て、原価の基準を超えていないか見ていくのです。もし予算オーバーになっていたら、翌日、担当者に指摘します。こうした管理をしていると設定原価を上回ることが一度もありません。

次に人件費です。客室20室の花水晶と他社旅館を比べると、他社旅館では30名体制、花水晶は14名体制のシフトになります。この差は少ない人数で回す仕組みができていることよって出てくるのです。マルチジョブや、シフトの工夫、料理人レス、アルバイトの活用やIT化、システム化、そしてバックオフィス業務を徹底的に削減できているかが重要です。

他社の旅館は紙の管理で、フロントで書いたものを経理が別のシステムに入力して、そのシステムから印刷したものを本社のシステムに入力するなどと無駄な業務が多くありました。当社ではマネーフォワードさんのシステムを使って事務データを管理しています。クラウドの勤怠管理システムでタイムカードをオンライン上で行い、人件費として日々管理しています。年末調整と社会保険にも対応しているので、社会保険労務士さんと契約しなくてよくなります。ネットバンキングとも連携できます。

その他にも、大量に届く請求書の処理が大変だと思いますが、『BtoBプラットフォーム 受発注』を使えばオンラインで請求書を発行・受け取りでき、会計ソフトとの連携も簡単です。紙の請求書が来た場合は自動でデータ化される機能もあります。あとはネットバンキングの通帳データは全部連携できるので、クラウド会計上、オンライン解決できるので、自分たちで一から入力するということがなくなります。このセミナーを開催する前に「まず何からDX化すれば良いのか」という質問をいただいていましたが、まずはこうしたことから始めてみるとすべてが効率化されていくと思います。

今後の旅館業の経営は、PL体質を改善していかないとコロナ後も含めて生き残っていけないと感じています。ぜひ一緒に乗り越えられればと思います。

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株式会社リアルクオリティ 代表取締役 小林 豪 氏

1975年生まれ。大手不動産鑑定事務所で勤務しながら日本最年少で不動産鑑定士の資格を取得。その後大手監査法人系コンサルティング会社KPMG FASの旅館・ホテルチームの立ち上げ時に参画。2006年に(株)リアルクオリティを設立。ホテル・旅館に関する具体的なコンサルティングや、マーケットレポート等をしている中で、出会った複数の旅館を自ら経営するに至る。現在は6旅館を運営・経営。
株式会社リアルクオリティ

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