飲食店の変動費・固定費、それぞれの削減方法を解説

飲食・宿泊2021.03.12更新:2023.11.30

飲食店の変動費・固定費、それぞれの削減方法を解説

2021.03.12更新:2023.11.30

1.Fコスト(食材費)の見直し方

ここからはFLRコストのサービス品質を低下させずに削減する4つの見直し方や対策について詳しく解説していく。

Fコストでは、主に食材に関するコスト削減で見直しを図ることになる。しかし食材の質を落とすことはメニューの品質低下にもなりかねないため、あまり有効な手段とはいえない。そこで注目したいのが、廃棄する食材(食品ロス)を減らすことだ。

食品ロスの削減は、無駄な支出を減らし店舗の利益向上に直結する。Fコストを見直すためにも、まずは食品ロス対策に取り組むことが必要不可欠だろう。 

具体的には、
・食品の再利用
・仕入れ量の管理
などが挙げられる。

例えばビュッフェ形式の店舗では、取り分け過ぎなどで料理が残りやすい。食べ残し分がコストとなるため、残量の多いお客様には料金の割増をするなどの注意喚起は有効だ。

また通常の飲食店でも、調理過程において使用する食材を他の料理と共通化する、調理オペレーションを標準化するなどでロスを減らせる。

仕入れ量の管理は、消費期限内に利用しきれず廃棄となる食材を減らすことにつながる。例えば前年の消費量や食品ロスの量を参考に、季節や月毎に食材の仕入れのバランスを調整すれば、過剰仕入れなどを防げるだろう。

さらに各店舗が過剰発注してないか、棚卸を本部が把握しやすくするために、受発注システムを導入するのもおすすめだ。

▼食品ロス削減対策にフードシェアは有用?

農林水産省の発表では、平成29年度の食品ロスの量が約612万トン、食品関連事業者から発生する分では約328万トンにも達している。(※)

そこで政府は、2019年10月に「食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)」を施行した。さらに食品リサイクル法に基づいた「食品廃棄物などの発生抑制目標」が事業者毎に設けられるなど、国をあげて食品ロスの削減に力を入れている。

こうした影響により食品ロスへの関心が高まる中、近年では「フードシェア」に注目が集まっている。フードシェアとは、飲食店などで廃棄直前の商品とそれを必要としている消費者をマッチングするサービスだ。

例えば、消費期限が迫っている商品や規格外の野菜・肉などを、店舗やECサイトで安く販売する手段も挙げられる。また処分されてしまう食品を、食べ物に困っている施設や人へ届ける「フードバンク」へ寄贈するという方法もあるだろう。

飲食店にとっては、直接的なコスト改善にはつながらないかもしれないが、企業のイメージアップは期待できるため、CSR活動などでブランドイメージアップを考えている企業は、検討してみてはいかがだろうか。

参考:農林水産省「食品ロス量(平成29年度推計値)の公表について」

2.Lコスト(人件費)の見直し方

Lコストでは、主に人件費の削減について検討することになる。ただ従業員のモチベーションや作業効率にも影響してくるため、より慎重に考える必要がある。

例えばスタッフの給料や賞与を減らすことは、一時的なコスト削減にはつながる。だが同時に、スタッフの作業効率や接客サービスの品質が低下し、最悪スタッフが離職してしまう原因になりかねない。

また店舗の人員を減らすことは、従業員1人あたりの作業負荷が増にもつながりやすい。作業効率の低下によって、料理提供する速度の低下や、接客サービス品質の低下などを招くなど、マイナス面も大きい。

そのためLコストの見直しには、経営者目線だけでなく現場で働く従業員の目線に立って考えることも重要となる。

▼シフトの見直し

人件費を削減するポイントは、Fコストと同様に無駄な部分の見直しがカギとなる。例えば、お客様が少ない時間帯には多くの人員を入れる必要はない。反対に年末やゴールデンウィークなどの繁忙期には一時的にでもスタッフを増員することが必要だ。

適切なシフトの調整をするためにも、どの時間帯や時期にどれくらいの来店客数があるかといったデータ収集が必要となる。毎日の来店客数や売上などを集計すれば、わざわざお店の状況を目視で確認するといった手間も無くなるだろう。

▼自動化ツールの導入

飲食店では通常、調理以外にもオーダーやレジ業務などを担うスタッフが必要となる。しかし、そうした人員のリソースを自動化ツールの導入で代用するのもひとつの方法だ。

例えば各テーブルにセルフオーダーできるタブレットを設置すれば、わざわざスタッフが注文を受け取りにいく手間がなくなる。お客としても、注文の都度スタッフを呼び止める必要がないため、気兼ねなくなくメニューを注文できる。

特に焼肉屋などで注文制の食べ放題メニューを用意しているところだと、お客1人当たりの注文数が多いので、ホールスタッフに人員を割かねばならなくなる。コスト削減と合わせて、そうした人材不足の問題も自動化ツールの導入で解決できるだろう。

3.Rコスト(家賃)の見直し方

Rコストでは、店舗の家賃やテナント料などを減らすことでコストを削減できる。これらの費用は、すでに出店している飲食店だと移転などの大掛かりな手段しかないと思っている経営者も少なくない。

しかしそのほかにも、Rコストの見直し方は存在する。例えば、物件の賃料をオーナーと相談し引き下げてもらう方法だ。

もし近隣物件の家賃水準と比較して今借りているところが高額であるなら、オーナーへの相談で減額につながる可能性も十分にあるだろう。

とはいえ交渉を行うためには、家賃相場の調査や不動産知識などが必要になる。相談する中で、オーナーとの関係性が悪化するリスクなども考えるとなかなか難しいものだ。

そこで、家賃相場の調査や必要書類の準備、交渉まで幅広くサポートしてくれる「賃料適正化コンサルティング」を利用する方法もある。これらの作業を不動産の専門家が代行するので、自身で行うよりも成功率は高くなるはずだ。無料相談などを実施しているコンサル会社もあるため、検討してはどうだろうか。

また最近では、キッチンスペースをレンタルしオンラインのみで注文を受け付ける「シェアキッチン(クラウドキッチン)」サービスという新しい形態も出てきている。無店舗で飲食業に参入できるため、初期投資や移転の費用を抑えられるのがメリットだ。

こうしたサービスの普及により、飲食業では選択肢の幅が広がっている。

▼固定費の見直し

電気やガス、水道などの固定費についても、見直すことでRコストの削減につなげられる。

例えば電気代に関しては、2016年に電力小売完全自由化が行われ、一般家庭で自由に電力会社を選べるようになった。2017年には都市ガスの小売全面自由化、2018年の改正水道法の施行により、水道の民営化も進んでいる。

水道事業の民営化は自治体毎に異なるが、電気やガスについては契約する会社・プランの変更が可能だ。最近では、電気+ガスのセットプランなども提供されており、光熱費の見直しが検討しやすくなっている。

また、店舗内で実施できる節約にも必ず取り組むべきだ。「照明をLEDに切り替える」「節水率の高いノズルを蛇口に取り付ける」といったことでも、積み重ねれば費用の削減につながるだろう。

4.広告・宣伝費の見直し

FLRコスト以外の主な出費としては、広告宣伝費が挙げられる。

飲食店における広告宣伝費の相場としては売上の5~10%ほど、少なくても3%程度になるのが理想と言われている。

自店舗の広告宣伝費が相場より高い傾向なら、見直しや改善が必要だろう。例えば、SNSで企業アカウントを作り、オウンドメディアを立ち上げて店舗の宣伝などを行うと、かなりのコストを抑えたPRが可能な場合もある。

季節キャンペーンなどで集客へ力を入れる際には、チラシやポスティング広告などの紙媒体も活用すると幅広く宣伝できるはずだ。このように、通常期と繁忙期などでPRのメリハリをつけることで費用を抑えられるだろう。

“見える化”で適切なコストコントロール

飲食店のコスト削減では、無駄な部分を削ることが最も重要だと言える。特に変動費である食材費と人件費は、日頃から変動するので手をつけやすい。あまり変化のない固定費についても、定期的に見直す機会を設けるとよいだろう。

そしてどこに無駄が潜んでいるのかを見つけるためにも、売上管理や在庫管理などのデータを集計し、店舗にかかるコストの「見える化」が必要不可欠だ。

例えば、在庫データから食材ロスの多いものを把握し仕入れを抑える、毎日の客数や売上などから曜日毎のスタッフのシフトを調整するなどだ。

日々のデータ管理やFLRコスト比率などから削減できる部分を見つけ、適切なコストコントロールでお店の利益確保につなげよう。

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