飲食店に多い、業態やメニューの模倣
時代の変化で模倣(パクリ)に向けられる目は社会的に厳しくなってきているものの、飲食業はいまだに、繁盛店のコピー業態が多い。業態に限らず「均一料金」や「隠れ家風個室」といったアイデアを部分的に取り入れたり、看板やロゴの雰囲気を似せたり、似たような店名をつけたり、似たようなメニューを提供したりと、数え上げればきりがないほどだ。
その理由のひとつには、昔から業界として、“同じものをみんなで盛り上げてブームを起こせば、全体の活性化につながる”という考えがあるためだともいわれる。だが、中には“人気店との混同を狙っているのでは?”と思うほど、紛らわしい外観や看板を掲げる店舗もある。真似されたオリジナル側はブランドイメージや信用にも関わるため、時として使用中止や損害賠償を求める訴訟に発展することもある。
商標専門の弁理士で、飲食店の模倣をめぐる係争問題にも詳しい長谷川綱樹氏(プライムワークス国際特許事務所)は、飲食業で模倣が絶えない理由を、「現状の保護制度では、業態の一部しか守ることができないため」だという。
「たとえば料理の作り方については、これといった保護制度がありません。料理のレシピには著作権が認められず、特徴的な料理の盛りつけなど、料理自体を独占できる権利もありません。
もしその料理の方法が『秘伝の製法』(ノウハウ)であれば不正競争防止法により保護を受けられる“かも”しれませんが、そんなケースは稀でしょう。通常の場合、名物料理を他の店に真似されたとしても、その行為を罪に問うことは難しいです」
それに対し、店名やロゴ、イメージキャラクターや特徴のあるメニュー名などは、商標として特許庁へ出願・登録を受けることである程度守ることが可能だ。その場合、同一のものだけでなく、「類似」範囲についても商標権を行使できるが、ここにも問題がある。「類似」の判断が難しいということだ。