いつ、どこで発生するかわからない大雨。外食業界の対策レベルは…
気象庁の統計によると、1時間に50ミリ以上の「非常に激しい雨」が降る頻度は、30年前に比べ3割程度増えているという。降雨量が1時間に50ミリを超えると、雨は滝のように降って傘が役に立たず、水しぶきで視界も悪くなり車の運転は危険になる。また、一般的な下水道の雨水の対応能力を超えるため、マンホールから水があふれる可能性が出てくる。災害リスク評価研究所の代表、松島康生氏(災害リスクアドバイザー)は、浸水害や土砂災害のリスクの高まりを指摘する。
「近年増えているのが、局地的に短時間で一気に降る集中豪雨による被害です。“バックビルディング”と呼ばれる、積乱雲が繰り返し同じ場所で発生し、線のように連なって発達する現象で、その形状から線状降水帯ともいいます。いつどこで発生するか、事前に予測することは難しく、豪雨災害はどこでも発生しうる可能性があるのです」
だが、今回フーズチャネルが行ったアンケートでは回答した飲食店の7割以上が、豪雨や台風について、「ほとんど対策できていない」と答えている。松島氏も、飲食店は業界的にも自然災害そのものへの対策が進んでいない傾向にあるという。
「防災対策といえば、非常食や飲料水の備蓄をイメージされる企業が多いのが実情です。ところが、飲食店はどちらもお店に常備されているため、改めて用意する必要がありません。それが油断を生んでいるような気がします」
当然ながら、食料や飲料水の備蓄だけが防災対策ではない。では、具体的にどのような取り組みが必要だろうか。
本部?それとも現場?その時、誰が何を判断するか
台風に限らず、自然災害の恐れがあるとき、経営者やマネージャーが最優先にしなければならないのは、客と従業員の安全確保だ。営業するか(続けるか)、休業するかといった判断がもとめられる。
広島で居酒屋やカフェなど18店舗を運営するA社のマネージャーは、西日本豪雨当日の様子をこう振り返る。
「7月の豪雨の日は、夕方過ぎて雨がひどくなり、JRが全線運転をとりやめました。そのため本部の判断で、夜のアルバイトスタッフは出勤させず、社員のみでの営業としました。決定事項は居酒屋・カフェの各部門責任者経由で各店舗に電話で伝えましたが、こうした判断をいつ・誰が決定するかということはマニュアル化されていません。当日その場の判断で決めていきました」(A社)
営業するのか、休業するのか。誰が、何をもって判断するかは難しい。アンケートでも他社がどのような基準やルールを設けているのか知りたいという声があった。松島氏によると、判断のポイントは「立地条件」にあるという。