広島エリアのスーパー、量販店のカバー率はほぼ100%
【Q】取扱商品について教えてください。
業務用食品第1部 次長 岩橋 諒一 氏(以下同):当社は創立75年を迎える総合食品卸です。創業者が広島中央卸売市場で始めた海産乾物卸にルーツがあり、現在では大きく分けて家庭用と業務用の食品を扱っています。
家庭用ではスーパーや量販店さんで見かけるような商品で、鮮魚加工品、日配品、ドライ品、業務用食品を取り扱う部門があります。広島県下に出店されているほとんどの量販店と取引させていただいており、会社全体の売上高は量販店向けが7割、業務用が3割ほどです。
業務用食品部門では、レストランや食堂などの外食、病院や老健施設、お弁当屋さんなどに食品を供給しています。私は業務用を含め4つある営業部の事務員40人をまとめる責任者として、主に受注管理を担当しています。
アナログな受注業務でミス、ムダな残業も
【Q】社内DXの遅れが課題だったそうですね。
私が新卒入社してちょうど10年目になります。10年前は社内の仕組みもアナログで、ムダな残業も多くありました。そんなとき、たまたま事務の責任者が引退するのに合わせて私がリーダーとして引き継ぐことになり、まずは小規模なグループ内で業務効率化に取り組み始めました。
取り組みを進めていく中でできることがどんどん増えていきました。デジタル化というキーワードも世間でよく出てくるようになり、会社全体でDXに取り組み始めたのです。最初はシステム化を煙たがられることもありましたが、徐々に受け入れられていきました。
【Q】2019年に受発注システムを導入されています。
『BtoBプラットフォーム 受発注ライト』を導入する前は、多くの受注が電話・FAX、営業担当へのLINEでした。業務用の売上の半分を占めるスーパーや量販店さんからはEDIでデータ受注できていましたが、残り半分の外食、学校給食、病院さんからは電話・FAXによる手作業の受注処理で、顧客の数を増やすほど営業の受注負荷がどんどん増えてしまう状態でした。
業務用部門では12,000点の商品を取り扱っているので、取り違えによる受注ミスもありました。たとえばFAX発注書に「ケチャップ」とだけ書かれると、それが瓶なのかボトルのものなのか、はたまた小袋に入ったものなのか分かりません。事務員が少しでも判断を間違えると、即座にクレームになっていました。
さらには生産性の問題もあります。受注業務は10円のお菓子でも1万円の高級食材でも、同じ人件費がかかっています。業務用部門と家庭用部門の売上高はあまり変わりませんが、業務用部門の事務員は他部署の2倍います。つまり、単純に生産性が半分ということになります。
この現状を打破するため、まずは『受発注ライト』を導入しました。もともとインフォマートの『BtoBプラットフォーム 受発注』を使っていたため稼働はスムーズでした。
【Q】取引先への発注切り替えの案内はどうされましたか?
まずはFAXや電話発注からすぐに切り替えていただけそうなお取引先様から、ご案内をしていきました。ITに明るい方や、発注担当者に裁量権がある場合は切り替えがスムーズでした。個人経営の飲食店さんや、数店舗のグループを運営されているような飲食店さんもオーナーの鶴の一声で決まることが多かったです。
パソコンに加え、スマホでも発注可能に
【Q】2020年には『TANOMU』も導入されました。
当社はJFSA(日本外食流通サービス協会)に加盟しており、加盟する卸企業さんからスマホで受発注できるシステム『TANOMU』をご紹介いただきました。『BtoBプラットフォーム 受発注ライト』はパソコン型ですが、『TANOMU』はスマホでより簡単にできるのがいいです。現在はほとんどの方がスマホを所有していますから、これを使わない手はありません。双方向に情報の交換ができるのも魅力です。
【Q】お取引先への案内はどうされましたか?
『BtoBプラットフォーム 受発注ライト』への切り替えは営業担当にお願いしていましたが、『TANOMU』からは営業だけでなく事務員からもお取引先様へご案内しました。営業担当はどうしても商品の話が中心で、売上につながらないシステム切り替えの話題は難しい面があります。
一方で、事務員はいつも発注担当者と連絡をとっていますから、電話の終わりに「そういえば…」と切り出せば、意外とすんなり「おもしろそうだね」と導入が決まるケースが多くあります。受注業務のDXは、会社全体で真剣に考え、全員で取り組むべき課題です。営業任せにせず、事務員も推進すべきだと考えています。
「営業時間外でもカンタンに発注できる」と感謝の声
【Q】導入後のお取引先からの反応はいかがですか?
これまで電話で発注していたお取引先様は、当社の営業時間を過ぎても発注できる点に魅力を感じていただいています。FAXのお取引先様からも「紙の利用がなくなって助かる」「いつ何を発注したかを後から簡単に確認できる」「24時間いつでも発注できる」とのお声をいただきました。
そもそも今はFAXがない飲食店も多いので、夜間に事務所へ留守電を入れるのは手間だったと思います。スマホで発注できる『TANOMU』は導入メリットが大きいです。
そして、『BtoBプラットフォーム 受発注ライト』『TANOMU』はいずれも、CSV形式で自社の販売管理システムに取り入れています。『TANOMU』の機能で販売管理システムに取り込める形にしてもらっているのです。
また、別途マクロを作成して取り寄せ商品の発注などの補助的な処理を行っています。データになってしまえばいかようにも加工できますから、取引内容のデータ化は大きいです。お取引先様にも喜んでいただけましたし、社内外ともに大きな進歩だったと思います。
スマホによる受発注で毎日4時間分の工数を削減
【Q】どのくらいの業務が削減できましたか?
『TANOMU』での受注は月間約500件、明細数でいうと4,000件ほどです。ベテラン事務員でも1カ月で8,000件ほどしか受注入力できませんので、1日あたり4時間ほど入力時間が浮いたことになります。
配送の負担も減らせました。これまで月曜日などは、営業担当が早朝に出勤して受注を打ち込む対応をしていたのですが、今は事務員が出勤する8時半にデータをCSVで落とすだけで終わりますから、今までより早く物流業務に着手する事ができるようになり、早朝出勤もしなくてよくなりました。
【Q】システム化で社内の働き方が変わったのですね。
以前は残業して仕事することが偉いという風潮もありましたが、今では私が残業していると「珍しいね」とからかわれるほどです。事務員の残業時間は、人員補充やシステムの導入などによって二年前の1/2まで減り、有給も取りやすくなりました。
今は私自身がさまざまな業務に携わっているので、DXにまつわることを様々な人から聞かれます。その際は生産性がどんどん上がるというメリットをお伝えし、魅力を発信しています。
DXへのハードルは、世代や年齢より興味があるかだと思います。一人1台業務でパソコンを使う時代になってから随分経ちますし、皆それなりに使ってきているはずです。苦手意識がある方にもDXする価値を理解してもらい、協力していただけるようにしたいです。
グループ全体で、属人化した業務をなくしたい
【Q】今後の展望をお聞かせください。
当社には営業所とグループ会社で営業拠点が7か所あり、現状では小型の拠点ほど属人化の傾向が強くなっています。属人化をなくし、受注業務の安定提供ができるようになれば、グループ全体のシナジーをもっと発揮でき、地域の食文化に引き続き貢献していけると思います。
今までデジタル化で業務を平準化してきましたが、これからも各拠点を牽引して業務改善・DXを積極的に進めていきたいです。
中村角株式会社
設立:昭和23年11月1日
代表者:代表取締役社長 中村 一朗
本社所在地:広島市西区草津港1丁目3番3号
事業内容:総合食品卸売業
公式ホームページ:http://www.nakamurakaku.co.jp/