本来の業務ではない営業セクションにおける事務作業
【Q】関西営業推進部の業務内容について教えてください。
関西営業推進部 部長 西本 賀則 氏(以下、西本氏):もともと営業推進部は受注を受ける部署ではありません。その名の通り、新規開拓を通じて営業を推進していくセクションです。
関西営業推進部 第二課 グループリーダー 佐藤 裕 氏(以下、佐藤氏):関西営業推進部は関西2府4県における新規開拓を担当しています。新しいお客様との接点を作り、小売店のほか、量販店などのチェーン店に向けた自動販売機の設置や直接商品を納品するルートセールスを行っています。その際に、大口受注などの事務作業に関して営業事務スタッフがサポートしています。
西本氏:本来なら全国に180拠点ある支店で受注して処理しますが、量販店や商社のように、エリアがまたがっている取引先については、どこかでコントロールをしなければなりません。
しかし、そうした取引先が扱う店舗数は膨大で、さらに新規出店や退店、あるいは滞りが出たというケースが頻発します。毎回オンラインデジタル(EDI:Electronic Data Interchange 電子データ交換)で発注いただけるお取引先様ではない場合にはコントロールが効きにくく、結果的に本部担当の営業推進部で一括して取り扱っていた、という経緯があります。
【Q】2016年に『BtoBプラットフォーム 受発注』、2021年に『BtoBプラットフォーム 受発注ライト』をご導入されていますね。
佐藤氏:『BtoBプラットフォーム 受発注』は2016年に導入していますが、前任者からは飲食店に卸しているお取引先様から「受発注システムを使ってくれないか」というご提案を受けて始まったと聞いています。きっかけとしてはお取引先様からの提案でしたが、飲食店とそのお取引先様の受発注業務をデジタル化できたことが評価されて社内でも広げていきました。
そして2021年に『BtoBプラットフォーム 受発注ライト(※1)』を導入した一番の理由は、お取引先様が無料で利用できるからです。こちらもお取引先様からご相談いただき、「実はこういう便利なものがあるよ」というお話でした。当時は多くのお取引先様が受注のクラウドサービスを使っていて、インフォマートのサービスだったら皆さん受け入れやすいという点、さらに基幹システム連携ができるという点がもっともアドバンテージが高かったです。
※1『BtoBプラットフォーム 受発注ライト』は、卸やメーカーなど受注する側が取引先の飲食店などに無料IDを発行することで発注側が無料で利用できるシステムです。システム化できず電話やFAXで発注していた取引先ともデータ受注・管理が可能になります。
関西営業推進部 主務 粟飯原 氏(以下、粟飯原氏):FAXや電話の受注件数が多いのですが、その他にも営業担当が商談のなかで受注し、それをメールで「受注のリストを送るからお願い」というケースもあります。他にもルートセールスで納品する際に、ついでに次の注文を聞いてくるというパターンもあります。地場の小さな商店などは依然としてFAX発注のみというケースも少なくありません。
佐藤氏:当初は電話、FAXなど様々なパターンがあり、統一した管理は諦めていました。当然、漏れなどのミスもあり、よく対応していたなと思うほどです。今となっては受発注システムなしでの業務は考えられません。
【Q】発注書AI-OCRとREFAX機能を導入されたきっかけは何だったのでしょうか。
佐藤氏:導入のきっかけは、お付き合いのあるアミューズメント系商社でした。その企業様では元々販売管理システムはあったものの、発注内容をデータで出力する機能がなかったのです。一般的には、先方様のシステムと当社の基幹システムを繋げれば済む問題でしたが、先方様のシステムに出力する機能がないため、「残るはFAXしかない」という状況でした。
それからFAX発注書の内容をデータ化する様々なOCRのサービスを検討しましたが、いずれも定型のフォーマットを読み取る事はできても送られてくる注文書をそのまま読み取って基幹システムに繋げる事ができなかったのです。また精度の問題もあり、手書きの文字が斜めだともう読み取れない、というサービスも多い印象でした。
当然、届く発注書内容には取引先企業の商品名や商品コードが割り振られています。それらを読み取ってデータ化したところで単に文字をテキスト化できただけとなり、当社の基幹システムへ連携できないという点がネックとなっていました。
その点、『発注書AI-OCR(invox)(※2)』の場合は、当社側のデータベースに登録されている商品マスタと紐付けることができ、AIが自動的に学習して正しい商品を選んでくれます。多くのOCRサービスを検討しましたが、それができたのは『発注書AI-OCR(invox)』のみです。そこが導入の決め手になりました。
※2「発注書AI-OCR(invox)」とは、『BtoBプラットフォーム 受発注ライト』の有料オプション機能です。商品特定に特化したAIが搭載されており、取引先の商品名・商品コードに紐づけた「BtoBプラットフォーム 受発注ライト」のマスタを学習することで2回目以降の商品特定が自動で可能になります。
導入前の混乱と導入後の効果
【Q】導入前は事務作業をどのように行っていましたか。
粟飯原氏:導入前は、先方様から1日に10~15枚のFAXが流れてきて、その後のやり取りがすべてアナログでした。営業推進部で受け取ったFAXを、PDFに読み込んで各営業支店の担当者にメールで送るのですが、担当が見ていなかったり、処理のミスがあったりしました。場合によっては未納のご迷惑をかけてしまいます。そういうことが数回起きており、一番の課題でした。
佐藤氏:本来は各営業支店へ発注が入り「いつ納品可能です」と支店にてリファックスを入れる形で対応するのが通常の運用です。
しかし先方様が全国チェーンである事や、先方様の本部から全ての発注が入るというイレギュラーな対応が必要となっていました。ルートセールスの一存で納品日を決めてリファックスしてしまったために、混乱が起きることもあったと思います。そこで主幹となる営業支店が舵取りをしなければならなくなり、リファックスもこちらで担当していました。
西本氏:納品日は重要な連絡事項です。日にちがずれると先方の商社を通じて最終の店舗様との調整をしなくてはならない。その調整は先方様がするわけで、結果的に何社にも、何人にも迷惑を及ぼすことになります。
【Q】さらに、膨大な確認作業もあったと聞いています。
佐藤氏:先方様からのFAXを受けてからルートセールスに連絡しますが、電話に出てもらえないケースもあります。その場合はCメール(SMS)で連絡していました。それでも連絡が取れないときは、各支店にまで電話して確認していたこともありました。
確認できないと次に進めません。連絡が遅れると納品までのリードタイムがどんどん短くなり、結果的に先方様にまで影響が出ます。
粟飯原氏:本来はFAXで注文を受け、それを支店に流して納品を促すだけでいいところを、FAXで受けた注文をPDF化し、メールで担当者に連絡します。場合によっては在庫状況の確認や、ルート配送の時間調整を行い、納品期日を確認した上で一斉にリファックスする必要があり、拠点数も多いのでかなりの労力がかかっていました。
佐藤氏: FAX注文書が1日10枚送られてくるとして、支店への連絡で10枚、リファックスによるFAX送信と合わせると約20枚になります。電話も支店への営業前の確認が10件、受注元への返信連絡が10件なので、最低でも計20本の電話をいれていた計算です。
【Q】『発注書AI-OCR』とREFAX機能(※3)の導入後はどう変わりましたか?
佐藤氏:改善点は大きく3つあります。1つは量的な部分で、まずはFAXの量が激減したことですね。Web上で誰でもどこからでも見られるので、支店へ確認する手間も減りました。自動的にリファックスしてくれるため、1日に多くて20枚あったFAXがいまはゼロです。電話やメールもリマインドのみになったため半減しました。
先方様からのイレギュラーなリクエストもあるため連絡が必須なこともありますが、それも1日に10件あるかどうかです。いまではその電話対応だけをしています。
粟飯原氏:あくまで体感ですが、電話は3~4件程度で済んでいると思っています。結果的には業務は導入前と比べて4分の1から5分の1程度まで減りました。1回の電話に3~4分程度。これが20本あったとして1時間以上の時間が割かれていたのが、いまは1日に10分ほどで済みます。
それだけでなく電話は問題が解決するまでずっと気にかかります。その心理的負担が軽減して、ずいぶんと楽になりました。
佐藤氏:改善点の2つ目はスピードです。納期回答のスピードが圧倒的に早くなりました。これについては、先方様からも感謝のお声をいただいています。
3つ目は管理面での改善効果です。紙からデータに変わったので、履歴が管理できることが個人的には大きいと思っています。取引先が多岐にわたると、先方様にあわせた受注の癖があります。それを知るために度々履歴を検索するのですが、それを携帯ひとつで確認できるようになりました。手軽にお取引先様の要望に答えられるようになったため、私にとってはとてもストレスフリーになりました。
(※3)REFAX機能とは「発注書AI-OCR」の有料オプション機能です。サインや押印をして手作業で行っていたFAX返信作業が『REFAX機能』により自動化され、作業の省力化ができます。
営業の幅が広がり、今後は対外的な発信も
【Q】総合的に見て、営業部門の業務効率化は進みそうですか。
西本氏:営業部隊が連絡云々で停滞しているのは、本来おかしな話です。いまは導入したばかりで、特定企業との間でのDXですが、2~3カ月もすれば営業が本来のあるべき姿を取り戻せていると思います。すべて自動化して、先方様から連絡があって初めて電話でやりとりするくらいがちょうどいいと思います。それが第1ステージのゴールです。
今回は取引先様の事情をクリアするためのDXでしたが、今後は私たちから提案していく形を取っていく必要があると思います。DXしきれないようなお取引先様が存在する以上、FAXをはじめとする紙のやりとりはなくなりません。ですが、少しでも業務効率化で手助けできるのであれば、どんどん提案していこうと考えています。
そのためにもまずは社内でさらに浸透させ、今後はこのサービスを使うお取引先様を増やして行くことを主眼にしていくつもりです。
株式会社伊藤園
設立:1966年8月22日
代表者:代表取締役社長 本庄 大介
本社所在地:東京都渋谷区本町3-47-10
事業内容:飲料関連事業およびリーフ製品をはじめとする茶葉関連事業
公式ホームページ:https://www.itoen.co.jp/