2017年3月に発売を開始した『ピエトロドレッシング レモンとたまねぎ』も、レモンの風味の劣化をできるだけ抑える点に苦労した。ピエトロドレッシングのブランドイメージはそのままに、非醤油系の新商品として、特に力をいれた開発だったという。
「弊社の『和風しょうゆ』群のシェアは業界トップクラスですが、醤油系のみに頼るのでなく、次なる柱も育てたい、という思いがあります。瀬戸内レモンや塩レモンのブームでレモン関連商品の消費者ニーズは高まっていました。しかし、レモンを使ったドレッシングはノンオイル系などのあっさり風味がほとんどでした。『和風しょうゆ』でノウハウのある玉ねぎの旨みをいかした、しっかりしたフレーバー作りをすれば、差別化をはかれるだろうと考えたのです」(村田主任)
さらに大きな理由もあった。『レモンとたまねぎ』開発のきっかけとなった、前身にあたる商品の存在だ。創業35周年を記念し、2014年に一部の百貨店のみで限定販売したプレミアム商品だという。
プレミアム商品と同じ味で流通商品化する、というのが新商品に課されたミッションだった。
百貨店限定品のクオリティで開発された『レモンとたまねぎ』
福岡・能古島の自社グループ農場で採れるレモンと国産玉ねぎを使ったプレミアムドレッシングは、創業者自らが手づくりする商品だった。温暖な気候の中でたっぷりと日差しを浴びたレモンは、まろやかな酸味が特徴だ。収穫量に限りがあるため、大量生産はできない。
「流通商品化するにあたり、原材料の安定供給を考えると、能古島産レモンだけを使うというわけにはいきません。しかし他の産地のレモンではどうしても味が変わってしまうため、いかにプレミアム商品と同じ味にするかがポイントでした。レモンの種類を変えたり、レモン果汁だけでなく、レモンペーストや九州の特産品であるかぼす果汁も加えたり。その配合の割合も何度も変えました。シェフ経験の長い、開発担当の上司に相談しながら、当時存命だった創業者に毎週味を確認してもらって、試作を重ねました。
自分でも試食しすぎて、何が正解なのかわからなくなるほどでした。でも、その甲斐あって、開発チーム全員、納得のいく味に組み立てることができました」(村田主任)
2017年3月、全国発売された『レモンとたまねぎ』は、通常280ミリリットルサイズのピエトロドレッシングよりひとまわり小さな、180ミリリットルのボトルだった。前身の商品の容量を踏襲したことと、まずは市場の動向や消費者の反応を見るためだ。もっとも、消費者からは大容量化を望む声がすぐにあがったという。