60年超の銘菓が売上3.5倍!博多土産チロリアンが繰り出すファンキー戦略~千鳥屋・原田浩司社長

卸・メーカー2025.09.26

60年超の銘菓が売上3.5倍!博多土産チロリアンが繰り出すファンキー戦略~千鳥屋・原田浩司社長

2025.09.26

60年超の銘菓が売上3.5倍!博多土産チロリアンが繰り出すファンキー戦略~千鳥屋・原田浩司社長

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創業から400年近い歴史を持つ福岡の代表的な老舗菓子舗、千鳥屋。なかでも60年以上愛され続けている銘菓「チロリアン」は、今、老舗のイメージを刷新し若い世代からの支持を集めている。

13代目社長の原田浩司氏が、伝統の味はそのままに話題性を生むユニークなコラボレーション戦略を次々と展開。若者にも親しまれるお菓子へと変貌を遂げ、社長就任後に販売数2.5倍、売上3.5倍となった。原田社長に「チロリアン」ヒットの秘訣を伺った。

目次

創業は江戸時代。400年近い歴史を持つ老舗菓子舗

【Q】千鳥屋の歴史について教えてください。

株式会社千鳥饅頭総本舗 代表取締役社長 原田 浩司 氏
株式会社千鳥饅頭総本舗
代表取締役社長 原田 浩司 氏

寛永7年(1630年)に原田家が佐賀で開いた松月堂という菓子舗がそもそもの始まりです。当時は佐賀の銘菓、マルボーロを作っていました。

千鳥屋としての創業は1927年で、銘菓「千鳥饅頭」が誕生したのもその頃です。当時は炭鉱の町である福岡県飯塚町に店を構えていましたが、これからは福岡・博多が発展するという話を聞き、戦後間もない1949年に福岡へ拠点を移し、復興とともに事業を続けていきました。私は2011年に13代目として社長に就任いたしました。

【Q】「チロリアン」の商品開発経緯を教えてください。

60年ほど前、他社商品の台頭で「千鳥饅頭」の人気が少し落ち込んでいたため、何か手を打たねばということになりました。当時、関東や関西でロールクッキーが流行しているという情報を得たのです。ちょうど店に京都から巻きせんべいの職人がいたので、巻きせんべいの中にクリームを入れたら人気が出るのではと考えました。

商品例:チロリアンショート
チロリアンショート

お菓子の企画はそんな流れで決まりましたが、問題は商品名でした。そのころ、博多の人たちが千鳥屋のことを「ちろりあ」と呼んでいたことにヒントを得て「チロリアン」という名前を考案しました。あとで調べてみると、オーストリアにチロルという町があることがわかったのです。当時の関係者は、もちろん誰もチロルに行ったことはありません。さまざまな参考資料を集めてチロリアンってこんなところかなとイメージを膨らませていたそうです。
 

商品例:チロリアン小箱・丸缶
チロリアン小箱・丸缶

父は北海道・函館のトラピスト修道院でお菓子作りを学んでいた時期があり、当時、バターを作る担当だったそうです。その経験を生かし、チロリアンの誕生当時から材料に発酵バターを使っていました。まだ日本で発酵バターは知られていない頃です。焼くと良い風味が出る、焼き菓子にぴったりの素材を採用し、その方針は今も続けています。

父はお菓子の修行のため、ドイツに渡りました。2年間の修行のあと、実際にオーストリアのチロルを訪れています。そこで、チロルの景色をイメージした今のデザインが出来上がって、その後キャラクターも作られました。

シニアが買うお菓子のイメージに危機感

【Q】社長就任時に感じた課題はありましたか?

私が社長に就任した2011年当時、新入社員の面接をすると全員が「チロリアンはおばあちゃんの家で食べたことがあります」と答える。それでチロリアンがシニア層のお菓子というイメージが定着してしまっていることに気づきました。伝統銘菓の千鳥饅頭にそのイメージがつくならまだしも、チロリアンは違うだろうと。このままでは、売上は下がる一方だと危機感を覚えました。実際、売上も好調とはいえない状態でした。そこで、若い世代にチロリアンを買っていただくためにどうすべきかを考えていました。

その頃、JA福岡市と「あまおうチロリアン」の共同開発を行うことになりました。あまおうがゴールデンウイーク頃に暑さで傷みやすくなるので、チロリアンに使ってほしいというのがきっかけです。そこで、あまおうをフリーズドライにしてチロリアンに使いました。先方にとっても、いちごに価値を加えることができると喜んでいただきました。その後も、宮崎のマンゴーでご相談をいただいて、同じようにフリーズドライにしてチロリアンに使用しました。

商品例:牛乳石鹸とのコラボ第1弾 赤箱チロリアン (現在は販売終了)
牛乳石鹸とのコラボ第1弾
赤箱チロリアン
(現在は販売終了)

そして、2019年に初めて一般企業とのコラボレーションをしたのが牛乳石鹸共進社さんです。あちらからお声がけいただいたのがきっかけでした。牛乳石鹸の赤箱をリニューアルするタイミングで、PRの一環として企画されたものです。

その後、当社の営業メンバーのひとりが初音ミクとのコラボを提案しました。当時の私はまったく知らなかったのですが、初音ミクとのコラボによってバズり、多くの若い方に認知していただけるようになりました。コラボによってそれまでとは異なる層に認知していただけると実感したのです。

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