あみ印が守り続けることを選んだ昭和のレシピは、野菜パウダーと多彩なスパイスに、隠し味でかつおだしを加えた、日本人の舌になじむ味だ。また、粉末は主流となっている顆粒に比べ米や具材になじみやすい特徴もある。粒子が細かいため混ざりやすく、味がしみこみやすいのだという。
そのため、炒飯以外の、スープにしたり炒め物や唐揚げ、ゆでたまごの味つけに使ったりといったアレンジメニュー用途でも使い勝手がいい。
あみ印のシンプルな粉末であるがゆえの汎用性の高さは、具材入りや冷凍炒飯では実現できない強みとなっている。指名買いする消費者の中には数世代に渡る熱烈なリピーターも少なくない。
また、近年若者を中心に起きている昭和レトロブームや、町中華ブームといった世相にも発売当初から変わらない素朴な味とパッケージデザインが受け、新たな客層もとらえている。
「売り場の活性化のために、ほたて味やエスニック味などのバリエーションを出したこともありますが、それらは数量・期間限定品です。一時的に売上が伸ばせても、主張の強い味は一過性で飽きられてしまうのがわかっているからです。
やはり、王道である炒飯の素が弊社の顔なので、売れることよりもその味を維持しつづけることを目指しています」(神山氏)
一握りの大手メーカーが首位を独占し、各社がシーズンごとに新商品を売り出す中、あみ印は粉末のみの勝負で、市場で5位前後のメーカー順位を保っている。あえて変わらないことが今や何よりの武器となったのだ。
今後は”変わらぬ味”を全国へ届けたい
あみ印は今後、まだ炒飯の素の流通がない関西、九州といった西日本にも今後の販路を広げていきたいという。
「実は、かつてのラジオの宣伝を使った物流網の名残がいまだに影響を与えていて、関西や九州で炒飯の素はほぼ知られていません。現在、家庭用商品の西日本における販売の主力となっているのは、同じ粉末商品であるわかめスープ等なので、今後は炒飯の素も少しずつ広めていきたいと思っています。
炒飯の素は、発売当時の味が60年を超えた今なお味わえるタイムマシンみたいな商品です。最初からロングセラーを狙ってものづくりをすることはできませんが、幾多の判断を下し、岐路に立ってきました。
そんな時、やはり原点に戻るということの尊さを、私たちに伝えてくれている気がします。手にとる方が、それを感じてくださったら嬉しいですね」(小池氏)
あみ印食品工業株式会社
本社:〒114-0013 東京都北区東田端1-6-2田端ビル
電話:03-3894-4161 お話:常務取締役 小池昭一郎さん 販売促進室チーフプロデューサー 神山栄里子さん
事業内容:和食・洋食・中華スープ、たれ、びん缶詰めの製造及び販売など
公式HP:http://www.amibrand.co.jp/