翌年、シェフはお店のスタッフや常連客80人以上と一緒に畑を訪れた。そんな動きは口コミで大阪のレストラン関係者に伝わり、ボランティアでぶどう栽培をサポートするファンの輪が広がっていく。飲食関係者だけでなく、酒販店、美容室、放送会社、電鉄会社、大学など、業種の垣根を越えた大小不問の地元企業・団体に及んだ。今では400人を上回るボランティアがぶどう畑の作業を手伝っているという。
そんな強い味方の後押しを受け、高井さんの新しいワイン造りも進んだ。発酵温度、酵母菌、果汁の前処理などの研究を重ね、瓶内二次発酵の製法によるスパークリングワイン「たこシャン」を開発。2009年、「たこ焼きに合うシャンパン」をキャッチフレーズに、満を持して世に送り出す。
人から人へ、大阪のぶどう畑を伝えてもらうために
しかしたこシャンの販売当初は、一般的な750mlのフルボトルではなく、250mlのミニボトルを飲食店向けのみに絞っていった。
「まずは、少しずつでも良いので、想いを共感してくれる飲食店の人から消費者のお客様へと伝えてもらいたかったんです。デパートやスーパー、コンビニなどは、店員とお客様が一言も喋らんでも買物が成り立つでしょう。そのような場所に並べても、我々の想いは伝わりません。たこシャンには、人から人に伝えて欲しいという想いを込めていますから」
その後、狙い通り評判は口コミで広まり、小売店からもリクエストを獲得。小売用の750mlサイズも作るようにしたという。
「大阪のソウルフードであるたこ焼きと合わせて気軽に飲んでもらいたい。それはあくまで入口で、要は、飲んでもらうことが大阪のぶどう畑を残す、地域の財産である風景や文化を残すことを、分かってもらいたいんです」
高井さんの思いに共感した飲食店がファンとなり、そこから新たなファンを呼んで広まり続ける「たこシャン」の輪。ここ数年、年間3万本強の生産では追いつかない状況が続く。カタシモワインフードの規模と同程度の国産ワイナリーのスパークリングワインと比べると、数倍の売れ行きだ。この人気ぶりについて聞くと、高井さんは照れくさそうにこう言った。
「僕は自分の想いを込めて作っただけ。その想いに共感して、具体的な行動を起こしてくれたのは仲間たちです。『たこシャン』のヒット云々より、そんな仲間を持てたことが、僕にとっては大切な財産やと思ってます」
カタシモワインフード株式会社
住所:大阪府柏原市太平寺2-9-14
電話:072-971-6334
事業内容:ワイン・飲料の製造販売
公式HP:http://www.kashiwara-wine.com/
お話:代表取締役 高井利洋さん