「大阪のぶどう畑を守らなアカン」。口コミで売れる業務用ワイン~たこシャン(カタシモワインフード)

卸・メーカー2016.12.13

「大阪のぶどう畑を守らなアカン」。口コミで売れる業務用ワイン~たこシャン(カタシモワインフード)

2016.12.13

当時、ワインといえば外国産の輸入品が当たり前だった。高井さんは国産ワインの知名度の無さを痛感し、柏原市を含む地域の名を冠した「河内ワイン」の販売を開始。国産ワインのブランドづくりを試みた。

「大阪市内のデパート、ホテル、フレンチやイタリアンのレストランへ売り込みをかけました。でも、『こんな甘い日本のワインなんか誰も注文しませんよ』と、鼻で笑われて門前払いです。東京にも行きましたが、100ケース売れても半分以上を返品されて大赤字(笑)。改めて、大阪に根を張っていこうと覚悟を決めました」

工場見学の実施で学んだ、ワインと地域の関係

大正時代のワイン醸造機器(柏原市文化財)

そんな中、ペットボトル入り飲料の普及によって、同社の売上を支えていた冷やしあめやぶどうジュースなども不振に陥っていった。ますます窮地に追い込まれた高井さんは、生き残りをかけて消費者と直接向き合う方向に舵を切る。

「創業当時の搾り器などの道具と工場の見学をセットにして、一般のお客さんを呼ぼうと考えました。もう、問屋や流通に頼っててもアカン、消費者の方と繋がってファンになってもらうしかない、と」

しかし、当時は休日でも参加者が1~2人と閑古鳥が鳴く状態。それでも付きっきりで畑や工場を案内し、ワイン造りについて熱意を伝え続けた。そうするうちに高井さんは、ワイン造りとは何かを改めて見つめ直したという。

「お客さんと接している中で、ウチがワインを造る意味を、さらに打ち出す必要があると感じました。ワインの中身もブランドも、もっと地域にこだわらなアカン、と」

そこで高井さんは、国内やヨーロッパ各地のワイナリーにも足を運び、ワインは地域に根ざした産物だと改めて痛感。自分が創る大阪のワインとは何かを追求する中で、地元産デラウェアに白羽の矢を立てる。

ファンが後押ししたデラウェアのワイン造り

大阪府柏原市のぶどう畑

大阪の特産品、デラウェア。その栽培面積は、府内のぶどう畑420ヘクタールのうち、85%を占める。高井さんは栽培放棄が進むぶどう畑を守るため、跡継ぎのない多くのデラウェアのぶどう畑を引き取って管理していた。

「デラウェアは『フォクシー・フレーバー(キツネ臭)』が強くワイン造りには不向きで、我々ワイナリーにとっては“クズぶどう”という存在なんです。それでも、これを使いこなして何とかしようと考えました」

ワインに不向きなデラウェアを使った商品開発。「たこシャン」のルーツは、ワイン造りの常識を覆してでも、大阪のぶどう畑を輝かせようとしたこの取り組みにある。高井さんは10年の開発期間を経て、2001年、国産初となるデラウェアを使用したグラッパの商品化に成功した。

「グラッパを作った時、実は売れるかどうか心配でした。それで当時のソムリエ協会会長を訪ねて相談したら『デラウェアでグラッパできるんか!?』と驚かれ、北新地で創作料理をされている名店「カハラ」の森オーナーシェフを紹介してくれたんです。シェフも気に入ってくれて、畑と工場の見学に来られ、デラウェアのワインでぶどう畑を甦らせたいという想いに賛同してくれました。ボランティアで手伝うことを条件に、お店専用の畑を持ってオリジナルのワインを作りたい、と」

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