「まずは缶詰の売り場から外へ出なければいけないというのが一番でした。『缶つま』の価格帯は、ひと缶500円前後が多く、この秋に発売するオマールエビのオリーブオイル漬けは2,000円という価格設定です。100円や200円の価格帯が主体の缶詰売り場に並べてもいても売れません。むしろ、お酒を飲む人が行く売り場に置かなければ」
そこで食品スーパーでは、営業の際に徹底しておつまみコーナーや酒売り場の近くに置いてもらうことをお願いした。実際に「缶つま」は、他の缶詰商品と違って、酒売り場の近くに缶詰の棚があるコンビニや酒屋での売上げが大きいという。
さらに現在、力を入れているのが、駅や観光地での販売だ。
「出張をする人が新幹線などの車内でお酒を飲まれるケースに合わせて、駅の売店やエキナカにも置いていただいています。また、『缶つま』は国内のこだわりの食材を使った商品が多いため、観光地での販売にも適しています。“人が集まるところで、お酒がある場所であれば売れるはずだ”と、駅だけでなく、ワイナリーや酒蔵にも置いていただいています」
こうした販路の拡大はもちろんのこと、「つまみ」としての肝となる味や食材についてのこだわりも強い。
「全国に10ヵ所ほど協力工場があり、商品開発者は頻繁に工場を訪れていますし、そのたびに各地の面白い食材を探しています。いい原料を求めて漁協さんや生産者さんにも会いに行っていますよ。それに我々は卸ですから色々な方から情報が集まります。いまでは、『缶つま』が有名になったこともあり、生産者さんの方から『これ、缶つまにならないかな?』というような提案もいただくようになりました」
予想を超えて広がる「缶つま」ファン
「缶つま」の認知度の広がりは、森さんが当初考えていたよりもさらに大きな市場を生み出している。その1つが飲食店での活用だ。その本格的な味やロスが出ないというメリットから、お酒をメインにしているバーで「缶つま」を使うケースも増えている。さらにこんな企画も舞い込んできた。
「名古屋キャッスルプラザというホテルで、今年の9月5日に缶つまを使ったフレンチのフルコースを出す『晩餐缶』というイベントをやっていただくことに なっています。この企画は先方から出てきた企画なんです。みなさんがそれぞれに『缶つま』を面白がっていただくことで、我々が考えもつかないような案が出 てくるんですね」
缶詰に新しい価値を生み出した「缶つま」。その存在は、消費者にも広く歓迎され、ファンは現在も増え続けている。それは冒頭で述べた売上げ推移を見ても明らかだ。
これまで動きのなかった市場にも、ターゲットを絞り込み、売り場を開拓することで新鮮な風が吹き込まれる。消費者は、そうした新しい風に即座に反応する潜在的な欲求を持っているのだろう。
「これからもお酒を飲む方にとって、より魅力的な商品を作ること。そして『缶つま』を基軸とした売り方を考え、もっと『缶つま』が生きる売り場を作りたいと思っています」
今後、商品ラインナップを100種類まで増やす計画があるという「缶つま」。そのさらなる広がりに、期待をせずにはいられない。
国分株式会社
住所:〒103-8241 東京都中央区日本橋1-1-1 電話:03-3276-4000
事業内容:酒類・食品・関連消費財にわたる卸売業及び、それらに関する資材の販売業、貿易業、パン粉の製造業、貸室業
公式HP:http://www.kokubu.co.jp/ お話:食品統括部オリジナル商品第一担当 森公一様