第15回居酒屋甲子園 優勝「魚屋ちから」。愛されるお店のつくり方

飲食・宿泊2022.12.21

第15回居酒屋甲子園 優勝「魚屋ちから」。愛されるお店のつくり方

2022.12.21

第15回居酒屋甲子園 優勝「魚屋ちから」。愛されるお店のつくり方

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目次

日本一の居酒屋を決める「第15回居酒屋甲子園」が行われ、全国2,644店舗の中から「魚屋ちから」(株式会社Interesting Innovation)が優勝に輝いた。

株式会社Interesting Innovation代表取締役社長の塩澤大輔氏は2018年、東京から山梨県甲府市にUターンして「魚屋ちから」を独立開業。駅前の好立地をあえて避け、空き家の多い裏通りから月商1000万円の繁盛店を育て上げた。「食を通じて街を豊かにする」をモットーに、現在も毎年1店舗のペースで新規出店を進めている。地元に愛されるお店の作り方を塩澤大輔氏と、「魚屋ちから」店長の赤座亮氏に伺った。

接客の原点は「自然体かつ全力でお客様に向き合うこと」

―コロナ禍を経て、3年ぶりの開催となる「居酒屋甲子園」。優勝の秘訣は何だったと思われますか

株式会社Interesting Innovation
代表取締役社長 塩澤大輔氏

塩澤:手応えはありました。多くの店舗が「コロナ禍で苦しかったことをどう乗り越えたか」をプレゼンに盛り込む中、うちはあえてその点を強調することはやめようと。それよりも「日々これほど楽しくやって、お客様が来てくれています」という思いを伝えたかったのです。

原点は、自然体かつ全力でお客様に向き合うこと。居酒屋甲子園では接客も含めた項目ごとに点数がつけられますが、あまり気にしませんでした。すべての項目を100点にしようとすると、表現は難しいのですが “ぎこちない” お店になってしまうからです。それよりも大事なのはバランス。ずば抜けた何かがなくても、全部の項目で80点を取ればいい。接客に関しても、「こうしなさい」というルールで縛るより「親や大事な友人が来たらどう接するか」という原点から考えてもらうようにしています。

魚屋ちから
店長 赤座 亮氏

赤座:まずはお客様たちのバックボーンを想像することが大事だと考えています。どんな理由で来ていただいたのか、どんな人と来ているのか、最初におしぼりを持っていった際の表情など、細かなヒントを見逃さないようにしています。そこから料理を提供するタイミングや、どんなお声かけをしたら心を開いてくれるかなどを1人1人考えるのです。心を開いてくれたタイミングで、ちょっとしたおつまみをプレゼントしたり、お飲み物の追加を伺ったりすれば「もう1杯飲んでいこうかな」と思ってくださることも。全てにおいて、最高のタイミングで最高のものを提供したいのです。

地元にUターンで開業し、予約ゼロから月商1000万の大繁盛店へ

―「魚屋ちから」を創業した経緯を教えてください

塩澤:飲食業に憧れたきっかけは、高校生のときに見た1本のドキュメンタリーです。NPO法人居酒屋甲子園を作った大嶋啓介氏が運営する「てっぺん」の取り組みを紹介したもので、「こんなにキラキラした大人がいるんだ」と感動しました。憧れの大嶋氏のもとで働きたかったので、高校卒業後は「てっぺん」に入社。4年間で店長も務めました。その後は海外の飲食店を見て回り、渋谷の居酒屋「魚屋豪椀」で店長を2年経験した後、地元の山梨・甲府で2018年に「魚屋ちから」を創業しました。

―なぜ甲府市、それも駅から徒歩10分という立地を選んだのですか

塩澤:地元でお店をやりたかったのが最大の理由です。都心の繁盛店で2年間売上を落とさなかったノウハウを活かし、地方で開業すれば確実に成功できる自信もありました。家賃の低さも魅力的です。甲府駅前は当時の坪単価で2万円ほどでしたが、徒歩10分の裏通りなら坪単価6,800円です。もともと「駅前のお店で飲もう」というより「魚屋ちからに行きたい」と思ってもらえるお店を作りたかったので、迷わずここに決めました。

当初からお客様には全力で向き合ってきましたが、最初は鳴かず飛ばずでした。土曜日に予約がゼロで、近くの繁盛店に入り切らなかったお客様がサービスで配られた缶ビールを持ってうちに来店された際は、悔しくて泣きそうになったこともありました。でも、その人たちに今度はうちを予約してもらうためにはどうすべきか、考え抜いて1組1組に向き合い、細かな改善を続けていきました。

実は、開業当初の記憶はあまりないんです。とにかく必死で、うちにしかできないことをやろうと考えて取り組んでいるうち「噂に聞いたよ」とか「すごいお店ができたね」などと言われることが増え、月商も800万、1,000万と右肩上がりになっていきました。2号店の「酒場らっぱ」や3号店の「オサカナバルPANDA」なども出店し、今はプレッシャーとワクワク感を同時に感じています。

売上目標は決めない。当たり前のことをやっていれば、当たり前の結果が出る

―売上の目標はどのように設定されていますか

塩澤:特に細かくは決めていません。実は「てっぺん」の店長時代に毎月、過去最高の売上を目指していた時期があるのですが、率直に言うと疲れてしまう。次の店長のプレッシャーにもなりますし、頑張って売上を作ろうとするとひずみが出ると思うのです。それよりも「当たり前のことをやっていれば当たり前の売上が出る」をモットーに、毎日の変化を見るようにしています。

赤座:1日の営業を通して「あのお客様、どうだったかな」などを考えることは多々ありますし、それが数字につながるという緊張感はあります。でもありがたいことに日々多くのお客様が来てくださって、毎日本当に楽しくやらせていただいている。そうやって自分も全力で楽しんでいるうちに自然と結果は出るので、数字を追うこと自体への執着はありません。

―FLコスト比率は60%以下が適正値といわれる中、55%以下を実現できている秘訣は何でしょうか

赤座:食材に関しては、細かなところまで全員で把握し「今日は2日目のものがこれくらいあるから、なるべくおすすめして売っていこう」と共有するようにしています。曜日や過去の傾向からある程度の予測はできるので、大きなロスはありません。そもそもうちには業務用冷蔵庫がないので、大量に仕入れることもないのです。足りなくなることも当然ありますが、お客様はさまざまな魚料理を楽しみたいと思って、うちに来てくれているはず。新たなおすすめを上手に伝えれば、1品足りないものがあっても満足度は上がると考えています。

塩澤:食材の 1つ1つを見直すなど、コスト意識は大事にしています。地方だからこそ、家賃と人件費は都心よりも安く抑えられますし、あとは業者さんとのつながりを大切に「困っているものは買う」。野菜や魚など、売れなかった場合はスーパーに安く卸さなくてはいけない食材は、できる限り言い値で引き取ります。お互い様の精神を大切にしていて、それがコロナ禍での子ども食堂の運営など、社会的な取り組みにもつながっている気がします。

コロナ禍で「子ども食堂」を運営、困窮するひとり親家庭に惣菜を無償提供

―子ども食堂の運営は、何がきっかけだったのですか

塩澤:もともと飲食業には、「人を喜ばせたい」という気持ちがモチベーションになっている人間が多いんです。コロナ禍で休業を余儀なくされ、日頃からお世話になっている卸売業者さんも食材が余って困っている中、自分たちができることはシンプルでした。余った食材を買い取って、子ども食堂で無償提供する。数字だけで見ればマイナスかもしれませんが、人のために動いているとエネルギーが湧いてくるんです。新店のオペレーションや、魚のさばき方など調理の練習にもなりましたし、「困ったときはお互い様」で従業員のやりがいも得られ、地域貢献ができました。

―社会貢献に加え、福利厚生も充実されています

塩澤:同級生たちと創業したこともあり、自分が皆の給料を決めることに抵抗がありました。いろいろ考えた結果、給与は外部コンサルに任せて「相場より高くしたい」と。3年かけて少しずつ福利厚生を充実させ、今では山梨県のサービス業界で給与水準が2位になっています。ちなみに1位は富士急ハイランドさん(笑)。光熱費や食材費などが値上がりする中、利益とのバランスに悩むこともありますが、うちは居酒屋の中で1位の福利厚生企業になりたいと思っています。

「居酒屋ってカッコいい」と感じてもらえるような背中を見せたい

―今後、「魚やちから」をどんなお店にしていきたいですか?

塩澤:以前は店長たちに現場を任せることに不安もありましたが、今はそれぞれが責任を持ち、私が言わなくても主体的に接客の改善やコスト管理などに取り組んでくれています。若手時代に「次の店長を育てるのが店長の仕事だよ」と教わったことを、ようやく実現できるようになってきました。

「魚やちから」は高級店ではなく、客単価4,500円で勝負しているお店ですが、私自身は6,000円や7,000円のサービスを提供してお客様に感動してもらいたい。おのずと目指すレベルは高くなりますが、店長たちはそれをしっかり叶えてくれています。これからも自分たちにしかできないことを大切に、どれだけパワーのあるお店にしていけるのかワクワクしています。

赤座:もともとは自分も、お客さんとして「魚やちから」に飲みに来ていた1人でした。代表の働き方を見て「なんだかいいな、楽しそうだな」と感じて社員になったのです。だからこそ自分のように将来を迷っている人や、若い人たちに「楽しそうだな、カッコいいな」と感じてもらい、「居酒屋で働きたい」と思ってくれる人を1人でも増やしたいですね。そのためにもまずは自分たちが楽しむこと、お客様が心から「楽しかった、また来たい」と感じるお店づくりを意識していきたいと思います。


お店に取材に行ったのは平日それも月曜日であったが、開店時間になると同時に予約のお客様がつぎつぎと来店し、18時台であっという間に満席だ。お店で働く従業員とお客様の会話から笑いがあふれ、その活気につられてまた次のお客様が「入れる?」と顔をのぞかせる。愛されるお店「魚屋ちから」。「また来るね!」の声が今日も絶えない。

株式会社Interesting Innovation
開業:2018年4月
業態:居酒屋
アクセス:甲府駅南口から徒歩10分
住所:山梨県甲府市中央1-6-8 完幸ビル 1F
営業時間:17:00~24:00
定休日:不定休
坪数・席数:20坪55席
客単価:4,500円
公式ホームページ:https://interesting-innovation.com/

 

魚屋ちから
開業:2018年4月
業態:居酒屋
アクセス:甲府駅南口から徒歩10分
住所:山梨県甲府市中央1-6-8 完幸ビル 1F
営業時間:17:00~24:00
定休日:不定休
坪数・席数:20坪55席
客単価:4,500円
公式ホームページ:https://interesting-innovation.com/sakanaya-chikara/
魚屋ちから

 

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