近江牛をムダなく使い切る画期的なビジネスモデル
Q.総合近江牛商社の事業について教えてください。
当社では滋賀県のブランド牛である近江牛を一頭買いし、自社の飲食店や直売所で提供するほか、ソーセージなどへの加工、道の駅などでの商品販売、加工品への活用など、ムダなく使い切ってビジネス展開しています。
メインは飲食事業で、郊外・駅前の路面店『近江焼肉ホルモンすだく』と郊外・ロードサイドの『レストランすだく』を、直営6店舗、FC6店舗展開しています(2020年12月現在)。
牛肉はもともと端材が多く、廃棄率50%といわれています。もったいないといいながら、タンの先や細切れ、食べられるのにホルモンの使い切れない部分などを捨ててしまっている業者さんが多くいました。
ホルモンで使い切れない部分はホルモン煮込みへと加工し、牛脂も近江牛のアイスクリームとして商品化しています。OEM商品として、滋賀県の道の駅で販売しています。
近江牛をさまざまな商品として売り出せば、より多くの利益が生まれ、主力の飲食事業にも還元しています。さらに、地域の魅力発信にもつながります。SDGsに象徴される、持続可能なビジネスモデルを作っていきたいのです。
飲食未経験だからこそできる、固定観念に縛られない経営
【Q】主力の飲食事業は、わずか1年で12店舗を達成されていますね。
FC加盟店の出店が加速していて、加盟オファーが予想以上に入ってきています。新型コロナウイルスの影響で、これまで居酒屋業態をしていた企業が焼肉業態へと転換するケースが増えています。
当社はもともと路面店のほか、郊外のロードサイドでも展開していて、宴会需要というよりはファミリー層が対象で、アルコール比率も低いです。
一般的には、アルコール比率を上げて利益につなげるやり方が主流かもしれませんが、当社はむしろその逆。アルコール比率をなるべく下げて、客単価4000円でファミリー層の外食需要を喚起する方針でやってきました。 テイクアウトやネット通販も早くから展開していましたし、結果的にコロナ禍で追い風になったと思います。
【Q】焼肉業態としての強みのほかに、急成長の背景にはどんな要因があると思われますか?
当社の社員の多くは、飲食業界以外の出身です。勢いのまま食肉・飲食業界に飛び込んできたのが、かえって良かったのかもしれません。従来の考え方にとらわれず、「ビジネスとしての近江牛」を多角的に考えられるからです。
そのほかにも焼肉協会の繋がりでFC加盟店をご紹介いただいたり、他社の焼肉業態の企業からタレを提供いただいたりなどのバックアップをいただけたのも大きいですね。多くの支援のおかげでやってこられたと思います。
利益率20%のFC店は「職人レス」で効率化
【Q】急成長を支えるFC店は、どのようなオペレーションですか?
当社の主力である路面店『近江焼肉ホルモンすだく』のオペレーションは「職人レス」で、社員1名とアルバイト複数名で回します。店長は日替わりで運営できるので、結果として人件費を15%と安く抑えられ、投資回収が非常に早いですね。
FCでは低投資で高利益率のビジネスモデルを開発しました。初期投資が2000~2500万円で、店舗は20坪、利益率は20%。肉はカット済みで、FC店での調理には包丁もまな板も使いません。20坪なので料理提供は1人で行えます。これも、飲食業界以外の出身者だからこその発想で実現できたことかもしれません。食材はセントラルキッチンですべて仕込んで納品します。
ナムルや、冷麺についているきゅうり、ポテトサラダについているカットした茹で卵などもすべて、工場で仕込まれたものを真空パックして店に届けています。フードコストは少し高いですが、「職人レス」で仕込み時間もゼロなので、非常に効率的で味のばらつきもありません。
店舗ごとの差をなくし、利益を残すFCパッケージへ
【Q】効率化を支えるために、工夫している点はありますか。
多くの飲食店がそうだと思いますが、店長のマンパワーで対応してしまっては、店舗ごとに売り上げやコスト管理で大きなブレが生じてしまいます。利益を出すにはまず、店舗ごとのロス率や在庫管理の数といった差をなくすべきです。
ITツールで仕入れコストを管理し、業務は徹底的に効率化する。そうすればその分、売上を上げるための行動に割く時間が増えます。当社ではこれまで、店長が1時間ほどかけていた発注などの業務も、インフォマートの『BtoB プラットフォーム受発注』でどんどん効率化しています。
仕入れツールの導入前は正直、飲食業として当たり前にすべき数字管理ができていませんでした。発注はLINEやメールで、漏れがあると急遽スーパーで材料を調達することもありました。100円や150円でも、現金の小口精算あれば原価は変わってしまいます。仕入れ業者の選定もできておらず、非効率だったと思います。仕入れ方法をシステム化してからは、決まった商品を業者ごとに指定できるようになりましたし、発注業務の効率化も実現できました。
発注数量の管理も以前はExcelで行っていましたが、手間がかかるので店舗分析ツールの『TOUCH POINT BI(エビラボ)』を導入しています。POSの店舗管理システムも活用し、P/Lやスタッフの勤怠、モチベーション管理も今ではすべてシステムで行っています。将来的には、発注業務自体をなくしたいですね。徹底して省力化し、空いた時間はお客様のためになることに使いたいです。
地域のブランド牛を、FCビジネスで世界に発信したい
【Q】今後の展望を教えて下さい。
FC店の展開はどんどん進めていきます。飲食業を長く続けていくには、何よりも利益を残すことが大事です。当社のFCモデルは利益率が良く、展開スピードが速くできます。今後もこうしたFCパッケージを進化させ、多くの企業や個人事業主の皆さんに提供していきたいです。
これまで、食肉の流通は閉鎖的だといわれてきました。僕たちには近江牛の多角的なビジネス展開を通して、そうした点を打破したいという思いもあります。近江牛だけでなく、松坂へ行けば松阪牛、神戸には神戸牛など、日本には多くのブランド牛がある。そうした地域の銘柄牛をビジネスとしてパッケージ化し、世界に発信して、その地域に貢献していきたいのです。
株式会社総合近江牛商社
本店所在地:〒520-3031 滋賀県栗東市綣5丁目2-25
代表者:代表取締役 為村匠
事業内容:外食・中食事業、観光事業、食肉卸・食肉加工事業、ペットフード事業、美容事業
公式ウェブサイト:https://omigyucorp.co.jp/