客から「大丈夫?もうけ出てるの?」と心配される店
定楽屋を運営するのは本社を京都に置く、株式会社Style(スタイル)。2015年の創業から4年あまりで、居酒屋やおでん専門店など様々な業態で合計50店舗を展開している。定楽屋ブランド統括マネージャーの前田真実氏によると、定楽屋は代表取締役社長の金山洋明氏が温めていたアイデアだという。
「自身が食べ放題の店を利用していて、ふと“食べ放題って結局、料金にするといくら分食べたかわからない。これがわかったら面白い”と閃いたそうです」
食べ放題の利用客が気にするのは『元が取れているかどうか』だ。損したくない、なるべくお得に楽しみたい心理が働く。
そこで、メニューに価格を表示し、2時間制でひとり3000円までは通常の居酒屋と同じ加算式に、それ以上はいくら飲んでも食べても料金をとらない仕組みを考案。お通しやチャージはなし。ただし、過度に食べ残し飲み残しがある場合、残したぶんの代金は別途請求する。
提供する料理に手抜きはなく、ほとんどが店舗での手作りだ。たとえば人気メニューの「王様つくね(680円)」はひき肉を捏ねて1つひとつ成形し、かけるソースも長ネギを刻んで店舗ごとに作っている。
ビールなどのアルコール類も、一般的な飲食店で出すものと変わらない(料金はすべて税抜き表示)。ビュッフェスタイルではなく、ホールスタッフがオーダーを受け、提供する。
「飲み放題、食べ放題で利益を出すためには、FLコストをいかに抑えるかが通常の考え方だと思います。我々も、もちろん抑えることは考えますが、それ以上に質を重視しています。適当な料理をお出ししたら、お客様は二度とご来店されません。
お越しになる時は『3000円で、ちゃんとしたものが出てくるの?』と懐疑的だと思います。でも、多くのお客様がお帰りになる時は『本当に3000円で大丈夫なの?』『お店は利益でてるの?』と心配のお声をくださいます。実際、ほとんど出てなくて、正直めちゃくちゃ厳しいです(笑)」
実は、定楽屋のスタイルを真似た、上限2800円で営業する店舗が現れたこともあったが、ほどなく3000円に値上げ。赤字ギリギリでなんとか営業できる価格設定が3000円のようだ。男性客ならおよそ8割が8000円超え、女性客も5000円近く注文するという。原価管理は、あってないような状態だ。
「形だけ模倣しても続けるのは難しいと思います。我々は利益を出すためには何よりお客様にお越しいただく事だと考えているので、料理も接客も絶対手を抜きません。お客様は敏感です。他と違う努力をしていれば、次はお友達を連れて、または会社の飲み会でと、何度も利用してくださいます。お客様がお客様を呼び、どんどん広がっていくことが大事なんです」