実はそのポイントは、味や品質と関係ない部分の無駄を、徹底的に削ることにあった。
余計なことは徹底的に削る。すべては「安い」のために
「たとえばお刺身は、盛り合わせをなくし、厳選〆さば(290円)やまぐろたたき(320円)といった人気の高いものだけをご用意しました。また、刺身には大葉や菊の花が付くところもありますが、食べないお客様も多く装飾的な意味合いが強いので外しました。1円単位でコストを削る努力をしています」
200種類を超えるような豊富なメニューが売りの居酒屋もあるが、一軒め酒場は売れ筋に絞り込んでいるため、レギュラーメニューは約60種類程度だ。そこには、居酒屋では定番メニューとなっている焼き鳥もない。
「もし焼き鳥を提供するなら、炭代や電気代といったコストが発生し、串打ちの作業や焼き場にひとりが付きっきりになるので、人件費も必要になります。残念ですが、焼き鳥はお出しできません」
メニューの面だけでなく、店舗の経費も削減にこだわっている。居抜きの物件をそのまま利用することも多い、また使う食器もあえて統一せず、用途ごとに様々なところから探してくるなど、こつこつとコストを削って安さに還元しているのだ。
働き盛りが憩える、気軽な酒場をめざして
養老乃瀧グループはチェーン系居酒屋の老舗「養老乃瀧」を主力に、海鮮料理の「だんまや水産」やアニメファン向けの「映像居酒屋 ロボ基地」など、いくつもの業態を展開させてきた。なぜ、あえて競合も激しい、安さを売りにした「一軒め酒場」を打ち出したのだろうか。
事業立ち上げに携わった谷酒氏が徹底してこだわったのは、「37歳のサラリーマンが週に何度も通える、気軽な酒場」という視点だった。