飲食店経営をめざす中で知った、「固定種」の野菜
【Q】固定種や無農薬栽培へのこだわりは、いつからお持ちでしたか?
10年くらい前、19、20歳の頃のことです。野菜の生産と直結した飲食店での起業をめざして、修行の日々を送っていました。いろんな農家をまわり、時には住み込みで働いたり、和食店で調理や運営を学んだりする中で、野菜に『固定種』があると知りました。実は昭和半ばまでは多くの農家で作られていた、いわゆる『普通の野菜』ですが、現在では0.01%を切るほどまで生産が減っているというのです。
現在、流通している野菜の多くは『F1種』という、効率よく大量生産、安定供給ができるよう規格に沿って改良された一代限りの品種です。一概にはいえませんが、改良ポイントは味が美味しいかどうかよりも、同じスピードで成長し、同じくらいの大きさと味に育ち、規定のダンボール箱にぴったり収まって出荷できるように育つかが優先されます。
農薬や化学肥料が当たり前のように使われているのも、やはり効率を優先させているからです。農薬で人件費は削減できるし、化学肥料を使えばはやく収穫できます。でもそれは、体にも良くないし、野菜本来の味とは変わってきてしまうんです。
『固定種』とは、育った野菜の中から出来の良いものの種を選び、翌年その育てた中からまた良いものの種を採ることを何世代も繰り返してきた品種です。
そのため野菜の持つ本来の味や個性が強く出るうえ、味そのものが濃くて本当に美味しい。一方で、どんなプロが作っても株ごとに成長速度もサイズもばらばら、形や味も違ってしまうため、安定供給には向きません。