“小さな喜び”を積み上げてもらう
一般的にやきとん屋といえば「煙が店内に充満している店」をイメージしがちだが、木々家は、やきとんの大衆的な親しみやすさを保ちながら、清潔感へのこだわりを徹底している。それは自分自身が神経質だからだ、と林田氏は語る。
「やきとん木々家は飲食業未経験で開業しました。これまでの生きてきた中で、わからないことは積極的に誰かに教えてもらっていましたが、商売がうまくいくコツなんて誰も教えてくれませんでした。そこで初めて、どういう店がいい店なのかを徹底的に考えました。思考の軸にしたのは自分自身です。
自分が居酒屋に行ったとき、何を考えているか、何が気になるかというと、“グラスがべたついてる”とか“トイレが汚い”といった小さなイライラを感じることが多いことに気づきました。だったらそういうイライラを徹底的に排除した店を自分でつくればいいのではと思いついたのです」
木々家では、油のついた皿と混ざらないようにグラス専用の洗い場を設けている。グラスそのものも汚れがつきにくい、ストレートでシンプルなデザインのものを採用している。布巾ひとつとってもの除菌や湿気がこもらない食器棚などを特注して、汚れやにおいの発生を徹底的に防いでいる。
「例えば、テーブルが汚れるたびに掃除するというのは、実は応急処置の域を出ていません。本当に必要なのは汚れの原因を根本から取り除くことです。