自分の店を出して痛感した、「のれん」の重み
【Q】ご実家がモツ焼き屋をされていたんですね?
私が生まれる4年前に父と母が、東京・中野でモツ焼き屋「い志井」を始めました。といっても、最初は人の家の軒先を借りて、その家の壁に取り付けた折りたたみ式の屋根とテーブルを引き出し、4人がやっと立って飲めるような店でした。
その後、私が生まれる年に中野駅からほど近い新仲見世商店街というところに移って、やっと7坪ほどの店になりました。
【Q】石井社長は店を継ぐつもりはあったのでしょうか?
料理も好きでしたし、飲食店をやること自体に抵抗はありませんでした。その頃は中野から調布へ店を移転していて20代前半は父の店で働いていたのです。でもその時は継ぐ気はまったくありませんでした。
理由は単純で、20代前半の若者にとっては、お客さんの層もおじさんばかりで、たまに「ここのモツ焼きは最高だ」と言われてもそれほどうれしくなかったからです。もっと女性にモテるようなかっこいい店をやりたいと思っていました。
そうした事もあって店の方針については父と仲違いばかりで。見かねた母から「お父さんとお店のことで喧嘩ばかりしているんだったら、自分の実力がどの程度か自分でやってみなさい」と言われ、母が自宅を担保に銀行からお金を借りてくれたんです。