北こぶしリゾート、従業員の生産性向上、利益率改善に仕入れ業務をIT化

飲食・宿泊2025.02.06

北こぶしリゾート、従業員の生産性向上、利益率改善に仕入れ業務をIT化

2025.02.06

北こぶしリゾート、従業員の生産性向上、利益率改善に仕入れ業務をIT化

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北海道知床で宿泊施設4館を運営する北こぶしリゾートは、地方のホテルに共通する課題である慢性的な人手不足に対し、業務のIT化を進めている。

特に、調理現場と管理部門における仕入れの経理処理にかかる事務負担を軽減するため、受発注システムを導入。従業員の待遇と生産性を向上させ、平均年収500万円の実現を目指すという。

目次

知床の自然を活かしたネイチャーリゾート

【Q】知床エリアで宿泊施設4館を運営されていますね。

北こぶしリゾート 代表取締役社長 桑島大介氏
北こぶしリゾート
代表取締役社長 桑島大介氏

北こぶしリゾート 代表取締役社長 桑島大介氏(以下 桑島社長):当社は1960年に知床で創業した温泉旅館がはじまりです。これまでは和風の大型温泉旅館やホテルを運営していましたが、2017年に私が3代目として代替わりしたのをきっかけに、自然が主役のネイチャーリゾートへとリブランディングを行いました。

世界自然遺産にも登録された知床には、トレッキングや野生動物観察ツアーなど、知床の自然体験を楽しみにお越しになる方が数多くいらっしゃいます。その中で、当グループは雄大な自然を活かしたネイチャーリゾートを目指しています。知床の自然への畏敬の念を忘れず、旅館のホスピタリティをさらに発展させる新たなチャレンジを進めているところです。

IT化で利益率を上げ、従業員に還元したい

【Q】リゾート地では人手不足が深刻です。

桑島社長:当ホテルは知床に拠点があるため、地元のみから従業員を採用するのは難しいのが現状です。地元のスタッフもいますが、それ以外の地域から入社していただく方が多いのです。また、知床は観光シーズンの繁閑差が大きく、年間のうち5か月間は赤字となります。そのため従業員を過剰に雇用することはできず、最低限の従業員数で効率的に運営する必要があります。

一方、オフシーズンには従業員の休みを増やせるという福利厚生のメリットもあります。当社の年間休日は130日で、前年の115日から大きく増やしました。さらに給与も上げたので、そうした点が従業員の定着率改善やリクルートの強みになっています。

ホテル業界は休みが少なく長時間労働、さらに給料も低いといわれています。この問題を改善していきたい。そのためには従業員の業務効率化による生産性の向上が必要不可欠です。様々なITツールをどんどん試して、従業員の負担を軽くして、利益率を高めて従業員に還元していく。私が社長になった際、ホテルのリブランディングの他にもデジタル化の推進と、従業員の平均年収を500万円にすることを掲げました。多くの取り組みを進めた結果、現在は目標額に近づいています。従業員には当社で働くことで得るものがあると感じていただきたい。その思いが私の原動力です。

仕入れのIT化で、労働環境の改善と利益管理を両立

【Q】IT化はどのように進めてきましたか?

桑島社長:従業員にお客様へのサービスに注力していただく分、バックヤード業務を減らす必要があります。その一環で、2017年にインフォマートの『BtoBプラットフォーム受発注 』を導入しました。北海道の他社のホテルの方から紹介していただいたのがきっかけです。FAX、電話でなくインターネットのシステムを使って発注できるのが魅力的で、当社だけでなく取引先さんも楽になる仕組みだと感じています。シンプルで使いやすく、従業員が誰でも発注できるようになったのは大きなポイントです。

経営戦略室 仕入マネージャー 佐藤大氏
経営戦略室 仕入マネージャー
佐藤大氏

経営戦略室 仕入マネージャー 佐藤大氏(以下、佐藤マネージャー):業務フローとしては、あらかじめ在庫管理システムで在庫数を把握しておき、足りなくなったら『BtoBプラットフォーム受発注 』で発注します。仕入れ伝票から補充された内容を在庫システムに入力し、日々の在庫消費を管理して原価計算を行い、月次データを会議で報告しています。

桑島社長:食材の仕入れ額は変動するため、利幅をしっかり把握するためにも受発注をデジタル化してすぐ確認できる環境を作ることは、今後さらに求められます。以前は紙の伝票を集めて計算するだけでもたいへんでした。

佐藤マネージャー:他にも、Googleスプレッドシートやドキュメントなどのクラウド型業務ソフトを積極的に活用しています。当初は高齢の従業員にとってハードルもありましたが、シフト表のデジタル化から徐々に進めていった結果、今では従業員自らGoogleスプレッドシートでこういう仕組みを作りたいと提案し、自主的に改善していることもあります。チャットツールのLINE Worksも活用し、何かあれば情報共有しています。LINEを使った仕組みなので年齢問わず使いやすいし、従業員もストレスなく活用できています。

また、WI-FIの整備や売店のPOSレジ化のほか、PMSとレストラン人数カウント表を連携して、調理スタッフが食事の用意を効率化したり、全従業員がインカムで連携を取り合ったりするなどの取り組みも進めています。

勤怠システムも導入し、給与計算をある程度は自動化できるようにしました。お客様への請求書についてはPMS(ホテル管理システム)と会計ソフトを連動させ、一斉発行できる仕組みも使っています。総務の仕事はだいぶ減りましたが、まだまだ試行錯誤中です。デジタル化は、習うより慣れろ。最初は大変でしたが、今ではスタッフが自分たちで考えて少しずつ改善していく素地ができてきました。

従業員が働きやすい環境を整え、地域を盛り上げたい

【Q】今後の展望についてお聞かせください。

佐藤マネージャー:デジタル化による業務改善はまだまだ道半ばです。バックヤード業務を自動化して、いかに本当のDXを実現するかが今後の要ですから、少しずつ改善していきたいですね。直近ではホテルの施設ごとに労働時間を自動でデータ取得できるような仕組みを始めたばかりです。このデータを蓄積していけば売上に対しての各施設、各部署の労働時間の配分が適正かどうかを分析できるようになります。業務をデジタル化するだけでなく、もう一歩進んだデータの活用までできればいいですね。

桑島社長:DXの成果はトップの力だけでなく、現場の従業員が頑張られているからこそ。私も経営を通して従業員の待遇を上げられるよう努力していますが、皆が頑張っていただくことで会社の利益が生まれます。それを従業員に還元できるような好循環につなげていきたいです。そして従業員に、この会社で働いてよかったと思っていただければ理想的です。

また、地方では人手不足や少子高齢化が深刻です。だからこそ当社では、若い人たちに働いていただき、この地域を盛り上げていきたい。知床エリアでは当社が一番の老舗ホテルなので、これからも地域の中核となって貢献していきます。

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