飲食店経営で大切なのは、数字=原価率を管理すること
父親が航空会社に勤務していた関係で、幼い頃から海外に行く機会が多かった大林氏。「常に世界を身近に感じながら育った」という経験が、「AGALICO」を代表するアジアのリアルな空気感が漂う店舗づくりにいかされている。
そしてもう1つ。数々の繁盛店を手掛けてきた同氏の経営手腕をたどっていくと、グローバルダイニングの料理長時代に培った“現場感覚”も、色濃く反映されていることがわかる。
「飲食店は“食”を提供する場所ですから、食材の数字、つまり原価の管理がとても重要です。お酒の発注はまだわかりやすいですが、料理に使う食材の発注というのは実はすごく難しい。利益にも大きな影響を与えます」
実際に料理長時代は大林氏も食材の発注を担当し、当時から原価率(※)を強く意識していたという。
「いまは原価率50%のメニューなども聞きますが、うちだったらありえません。現場にもこの方針を徹底させることが、利益の出る店舗づくりには欠かせないのです」
(※)原価率・・・売上げに対して原価が占める割合のこと。飲食店の場合、提供するメニューの原価額(材料費など)÷販売価格×100で算出する。
毎日の原価管理で、ささいなズレも見落とさない
とはいえ、現場での原価率オーバーのリスクは、意外と多いものだ。まず発注に関して言えば、「発注する量を間違えた」「必要のない食材を注文してしまった」「二重に発注してしまった」といったミスも珍しくない。
「私も間違えてパクチーを100箱発注したことありますよ(笑)。そのときはさすがに業者が気づいて、電話をくれましたけどね。現場では、本当にそういうことが起きるんです」
また、正しく仕入れていても、いつの間にか歩留まりが悪くなり、原価率に跳ね返っていることもある。さらに、従業員による不正、つまり盗みの課題を抱えている店もあるだろう。
問題は、そうしたミスや不正が、気づかれないまま放っておかれることにある、と大林氏は指摘する。